6 / 71
6 士官学校に入学する2
しおりを挟む
ランスロの母親マーゴの作った昼食はとてもおいしかった。
グネビア王女がいつも宮殿で食べている料理とは異なり、味付けはとてもシンプルであったが素材のよさを最大限に生かしていた。
王女の食事のスピードが遅くて、母親が心配した。
「王女様、申し訳ありません。あまりおいしくないですか。」
母親のその言葉を聞くと、王女は大変びっくりして否定した。
「反対です! とてもおいし過ぎて、飲み込めないのです。ずっとかみしめて、味わっていたいのです。」
「そうですか。よかったです。夫と息子がものすごい早さで食事をするのを毎日見ているから、慣れてしまったのですね。」
食事をしながら、王女が言った。
「ランスロさんは今何歳ですか。」
「今6歳で来年には7歳になります。」
「ランスロさんは、剣術がうまくなりそうですね。あんなに幹が太い大木を、木の棒を振り続けて倒してしまうのですから。それなりの剣士に教えてもらえば、相当な剣の使い手になれます。来年7歳になった時、どこかの学校に入学するのですか。」
王女の問いに父親のトーマスが答えた。
「いいえ。王女様、私達のような平民の子供は学校には入学できません。仮に、才能があってそれを高めるため、学校に入りたいと思う子供がいても不可能でしょう。」
「なぜでしょうか。」
「王女様にはとても言いづらいのですが、身分の差とはそういうものです。身分の低い平民に生まれた子供は、身分の低い平民の大人になるしかないのです。逆に身分の高い貴族に家に生まれた子供は、必ず身分の高い貴族の大人になることができます。」
「ほんとうに申し訳ありません。私は王女として十分に恵まれているから、そのようなことを全然知りませんでした。学校に行けなければ、剣術やさまざまなことを学ぶことができません。ランスロさんのこれからの未来は、完全にノーチャンスだということですか。」
「完全にノーチャンスではありません。実はいくらかのお金さえあれば、ゴード王国の士官学校に入学することができるのです。士官学校に入学するのは貴族の子供がほとんでですが、今年から大金を国に寄付することができれば、平民の子供でも入学できるようになったのです。」
「大金って、どれくらいでしょう。」
「公にされていません。たぶん公にしないことで、大金持ちの平民の親から大量の寄付を集めようとしてしているといううわさです――すいません。王女様の前で国の悪口を言ってしまいました。」
ランスロの家から宮殿に帰った後、グネビア王女は国王ヘンリーの執務室に向かった。
「父様、入ります。」
「グネビアか。今日は森の方に行ったとか、危ないことはくれぐれも止めてくれ。」
「お聞きしたいことがあります。」
「なんだ。」
「士官学校のことです。来年から平民の子供でも親が寄付すれば入学できるようになったのですね。」
「そうだが。」
「どれくらいの寄付が必要なのでしょうか。」
「なんでそんなことを聞くのだ。」
「教えてください。」
「秘密にしておいてほしい。……実は、必要な寄付の額は決まっていないのだ。」
国王の答えを聞いて、ランスロの父親が言ったうわさどおりだと王女はあきれてしまった。
「平民から入学できるのは何人ぐらいになるのでしょう。」
「そうだな、親の寄付金が多い方から5人くらいにしようと思っているが。」
「父様。ゴード王国全ての国民の上に立つ国王として、それで良いとお考えですか!!! 」
グネビア王女はとても大きな声で怒りをあらわにした。
「グネビアよ。これはやむを得ないことだ。ゴード王国が発展していくためには、莫大な国家予算が必要なのだ。大金持ちの平民、大商人が国に貢献してもらうには良い方法ではないか。」
「父様。潤沢じゅんたくな国家も必要ですが、それよりももっともっと大切なことがあります。」
国王はわずか6歳の自分の娘である王女が訴える姿に、大変驚いた。
(いつの間に、こんなことを言うようになったのか。大人としゃべっているみたいだ。)
国王はとても優しい顔をして行った。
「グネビアよ。私に教えてくれないか。」
「人です。最後の1人になっても、ゴード王国を守ろうとする真に価値のある宝物のような人はどこから現れるのでしょうか。もちろん、王族の中から現れるかもしれません。貴族の中から、お金持ちの平民から現れるかもしれません。……そして、貧困の平民から現れる可能性もあるのです。」
「グネビアはどうすれば良いと思うのだ。貧困の平民の子供を入学させるとすると、それなりの理由が必要になる。今、グネビアが言ってくれたことは大変すばらしいことだが、理想論でもある。多くの人を納得させることのできる現実的な理由が必要になる。」
「それではこうすればどうでしょうか。士官学校は、将来、ゴード王国を守る騎士を育成するためにあります。騎士は、どんな最強の敵とも戦うことができる剣技を取得する必要があります。そこで、入学選抜のための剣術大会を開くのです。」
「全ての入学希望者が参加するのか。」
「もちろんです。王族、貴族、大金持ちの平民、そして貧困の平民の子供、全ての入学希望者が参加するのです。――そして、貧困の平民の子供は、優勝した場合のみ入学を認めるのです。」
「貧困の平民の子供には、ワンチャンス与えるだけなのか。」
「はい。そうです。」
グネビア王女は心の中で密かに思った。
(私の勇者ならワンチャンスあれば大丈夫です。全く問題ありません。)
グネビア王女がいつも宮殿で食べている料理とは異なり、味付けはとてもシンプルであったが素材のよさを最大限に生かしていた。
王女の食事のスピードが遅くて、母親が心配した。
「王女様、申し訳ありません。あまりおいしくないですか。」
母親のその言葉を聞くと、王女は大変びっくりして否定した。
「反対です! とてもおいし過ぎて、飲み込めないのです。ずっとかみしめて、味わっていたいのです。」
「そうですか。よかったです。夫と息子がものすごい早さで食事をするのを毎日見ているから、慣れてしまったのですね。」
食事をしながら、王女が言った。
「ランスロさんは今何歳ですか。」
「今6歳で来年には7歳になります。」
「ランスロさんは、剣術がうまくなりそうですね。あんなに幹が太い大木を、木の棒を振り続けて倒してしまうのですから。それなりの剣士に教えてもらえば、相当な剣の使い手になれます。来年7歳になった時、どこかの学校に入学するのですか。」
王女の問いに父親のトーマスが答えた。
「いいえ。王女様、私達のような平民の子供は学校には入学できません。仮に、才能があってそれを高めるため、学校に入りたいと思う子供がいても不可能でしょう。」
「なぜでしょうか。」
「王女様にはとても言いづらいのですが、身分の差とはそういうものです。身分の低い平民に生まれた子供は、身分の低い平民の大人になるしかないのです。逆に身分の高い貴族に家に生まれた子供は、必ず身分の高い貴族の大人になることができます。」
「ほんとうに申し訳ありません。私は王女として十分に恵まれているから、そのようなことを全然知りませんでした。学校に行けなければ、剣術やさまざまなことを学ぶことができません。ランスロさんのこれからの未来は、完全にノーチャンスだということですか。」
「完全にノーチャンスではありません。実はいくらかのお金さえあれば、ゴード王国の士官学校に入学することができるのです。士官学校に入学するのは貴族の子供がほとんでですが、今年から大金を国に寄付することができれば、平民の子供でも入学できるようになったのです。」
「大金って、どれくらいでしょう。」
「公にされていません。たぶん公にしないことで、大金持ちの平民の親から大量の寄付を集めようとしてしているといううわさです――すいません。王女様の前で国の悪口を言ってしまいました。」
ランスロの家から宮殿に帰った後、グネビア王女は国王ヘンリーの執務室に向かった。
「父様、入ります。」
「グネビアか。今日は森の方に行ったとか、危ないことはくれぐれも止めてくれ。」
「お聞きしたいことがあります。」
「なんだ。」
「士官学校のことです。来年から平民の子供でも親が寄付すれば入学できるようになったのですね。」
「そうだが。」
「どれくらいの寄付が必要なのでしょうか。」
「なんでそんなことを聞くのだ。」
「教えてください。」
「秘密にしておいてほしい。……実は、必要な寄付の額は決まっていないのだ。」
国王の答えを聞いて、ランスロの父親が言ったうわさどおりだと王女はあきれてしまった。
「平民から入学できるのは何人ぐらいになるのでしょう。」
「そうだな、親の寄付金が多い方から5人くらいにしようと思っているが。」
「父様。ゴード王国全ての国民の上に立つ国王として、それで良いとお考えですか!!! 」
グネビア王女はとても大きな声で怒りをあらわにした。
「グネビアよ。これはやむを得ないことだ。ゴード王国が発展していくためには、莫大な国家予算が必要なのだ。大金持ちの平民、大商人が国に貢献してもらうには良い方法ではないか。」
「父様。潤沢じゅんたくな国家も必要ですが、それよりももっともっと大切なことがあります。」
国王はわずか6歳の自分の娘である王女が訴える姿に、大変驚いた。
(いつの間に、こんなことを言うようになったのか。大人としゃべっているみたいだ。)
国王はとても優しい顔をして行った。
「グネビアよ。私に教えてくれないか。」
「人です。最後の1人になっても、ゴード王国を守ろうとする真に価値のある宝物のような人はどこから現れるのでしょうか。もちろん、王族の中から現れるかもしれません。貴族の中から、お金持ちの平民から現れるかもしれません。……そして、貧困の平民から現れる可能性もあるのです。」
「グネビアはどうすれば良いと思うのだ。貧困の平民の子供を入学させるとすると、それなりの理由が必要になる。今、グネビアが言ってくれたことは大変すばらしいことだが、理想論でもある。多くの人を納得させることのできる現実的な理由が必要になる。」
「それではこうすればどうでしょうか。士官学校は、将来、ゴード王国を守る騎士を育成するためにあります。騎士は、どんな最強の敵とも戦うことができる剣技を取得する必要があります。そこで、入学選抜のための剣術大会を開くのです。」
「全ての入学希望者が参加するのか。」
「もちろんです。王族、貴族、大金持ちの平民、そして貧困の平民の子供、全ての入学希望者が参加するのです。――そして、貧困の平民の子供は、優勝した場合のみ入学を認めるのです。」
「貧困の平民の子供には、ワンチャンス与えるだけなのか。」
「はい。そうです。」
グネビア王女は心の中で密かに思った。
(私の勇者ならワンチャンスあれば大丈夫です。全く問題ありません。)
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる