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10 剣術大会4
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ザラは続けた。
「私が親しいのは闇の精霊だ。人間の私に闇の力を教えてくれる。もっとも彼らが言うには、人間こそが闇にもっとも近い存在だそうだ。」
「そうですか。僕が親しいのは光の精霊です。ザラさんとは少し違いますね。彼らはいつも人間を照らしたいのだけど、光の精霊の存在に気がつくことのできる人間はほとんどいないそうです。」
「でも、私達はよく似ている。闇と光の違いはあるが、精霊に好かれているのは同じだな。」
ザラの従者のアスタロトが言った。
「お嬢様。そろそろ決勝戦の準備をしなければ、ランスロ様も同様でございます。」
「そうか。ランスロ、戦う前にあなたと話すことができてよかった。ところで、私の父上が国に多大な寄付をするから、私はもう士官学校に入学できる。反対にあなたは、決勝戦で私に勝たなければ士官学校に入学できない。負けてあげようか。」
「いえいえ、そのようなことは絶対にしないようにお願いします。運命は自分で切り開くしかないと考えています。」
「ほほほほほ、予想したとおりの男だな。私が全力で戦う相手として申し分ない。それでは―― 」
ザラと従者は去って行った。
決勝戦が始まろうとしていた。
試合会場に現れた2人の姿を見て、会場は大いに盛り上がっていた。
ザラは準決勝までは大変豪華な甲冑を着ていたが、決勝戦では甲冑を着ていなかった。
「あの女の子。相当な美人だな。それに相手と同じ条件で戦おうとしているのか。立派なものだ。」
「大金持ちと貧困の差はあるが、2人とも平民か。」
「生まれた時の身分で子供の将来が決まるのはおかしいから、平民も士官学校に行くべきだ。」
貴賓席以外の一般席の観客はほとんど平民だった。
試合が始まった。
今までの戦いとは全く異なり、その直後から剣戟けんげきの打ち合いが始まった。
それは、とても早い速度で行われ、観客は残像しか見ることができなかった。
いくつもの線のような2人の残像はいつまでも続き、終わろうとしなかった。
その打ち合いの中で、スピードとパワーではほんの少しランスロの方が上回っていた。
動きながらザラは思った。
(少しずつ私の対応が遅くなっている。それに私の剣がわずかに押されて動いている。)
同じ瞬間にランスロも感じていた。
(このまま少しずつ押し切ろう。やがて剣を当てることができる。)
ザラは判断した。
(止って防御しなければ、戦いの情勢を変えることができない。)
そう考えて打ち合いを止め、できる限り後ろに飛び跳ねて距離をとった。
その瞬間ザラに隙ができたが、ランスロはその隙を狙おうとしなかった。
試合開始当初と同じように、2人は距離をとって相対していた。
「ランスロ。なぜ今私にできた隙を狙わなかったのか。」
「隙があったのですか。僕には全然わかりませんでしたが。」
ザラは思った。
(あなたは実力だけではなく、やがては多くの人の心をつかむリーダーになるかもしれないな。私も同じようになれるよう努力しよう。)
試合の流れから、必然的に最後の一撃の勝負になった。
2人ともそのことを認識した。
ランスロは光の精霊に呼びかけ自分の気を集中させた。
ザラは闇の精霊に呼びかけ自分の気を集中させた。
最大の速度で剣が振れるよう全ての気が使われ、2つの剣が衝突した。
その瞬間、最大限の力が剣先に集中され衝撃は最大限となって観客はおもわず耳をふさいだ。
やはり、速さでも圧力でも少しランスロが上回り、ザラの剣は手から離れ、はね飛ばされた。
ランスロの剣の軌道は、そのままザラの顔をかすめる軌道にあった。
ところがザラの顔をかすめるまでのほんの短い軌道の間、ランスロは剣の軌道をわずかに変えた。
そしてそうするためには、剣を離さざるを得なかった。
ランスロの剣は、顔とすれすれの所で、はるか遠くまで飛んでいった。
同時にザラの剣も飛んでいた。
ザラの従者のアスタロトがおもわず叫んだ。
「お嬢様の剣の方が近くに落ちました、早くお取りになれば、お嬢様の勝ちです! 」
ところがザラは叫んだ。
「私の負けだ!! 」
………………
その声が試合会場に轟とどろいた後、我に返った審判が言った。
「ザラが敗北を認めた。ランスロがこの試合に勝利した。」
会場が大歓声に包まれた。
試合が終わった後、ランスロはザラに近づいた。
「大丈夫ですか。剣はかすらなかったですか。」
「……」
ザラは顔を真っ赤にしてランスロを見つめ、何も言わなかった。
「どこかケガをしたのですか、僕は失敗したのかな。」
ランスロはそう言うと、ザラの顔を自分の顔に引き寄せてじっと見始めた。
そうされたザラが口を開いた。
「あなたはどうして剣の軌道を変えたのか。」
「今日の試合で使ったのは木剣でしたが、木剣とはいえザラさんのお顔をかすめてしまうと、ずっと消えない傷あとが残ってしまうと思ったからです。」
「私の顔のことを心配して瞬間的に判断したのか。」
「とても美しい顔ですね。それよりも、顔の傷がこれからずっとあなたの心の傷になってしまい、かなしい一生になってしまいます。僕もあなたに一生うらまれるのはいやです。」
ザラが言った。
「目を閉じろ」
ザラはその唇に軽くキスした。
……誰も気がつかなかったが、試合会場のかたわらに四葉のクローバーが生えていた。
「私が親しいのは闇の精霊だ。人間の私に闇の力を教えてくれる。もっとも彼らが言うには、人間こそが闇にもっとも近い存在だそうだ。」
「そうですか。僕が親しいのは光の精霊です。ザラさんとは少し違いますね。彼らはいつも人間を照らしたいのだけど、光の精霊の存在に気がつくことのできる人間はほとんどいないそうです。」
「でも、私達はよく似ている。闇と光の違いはあるが、精霊に好かれているのは同じだな。」
ザラの従者のアスタロトが言った。
「お嬢様。そろそろ決勝戦の準備をしなければ、ランスロ様も同様でございます。」
「そうか。ランスロ、戦う前にあなたと話すことができてよかった。ところで、私の父上が国に多大な寄付をするから、私はもう士官学校に入学できる。反対にあなたは、決勝戦で私に勝たなければ士官学校に入学できない。負けてあげようか。」
「いえいえ、そのようなことは絶対にしないようにお願いします。運命は自分で切り開くしかないと考えています。」
「ほほほほほ、予想したとおりの男だな。私が全力で戦う相手として申し分ない。それでは―― 」
ザラと従者は去って行った。
決勝戦が始まろうとしていた。
試合会場に現れた2人の姿を見て、会場は大いに盛り上がっていた。
ザラは準決勝までは大変豪華な甲冑を着ていたが、決勝戦では甲冑を着ていなかった。
「あの女の子。相当な美人だな。それに相手と同じ条件で戦おうとしているのか。立派なものだ。」
「大金持ちと貧困の差はあるが、2人とも平民か。」
「生まれた時の身分で子供の将来が決まるのはおかしいから、平民も士官学校に行くべきだ。」
貴賓席以外の一般席の観客はほとんど平民だった。
試合が始まった。
今までの戦いとは全く異なり、その直後から剣戟けんげきの打ち合いが始まった。
それは、とても早い速度で行われ、観客は残像しか見ることができなかった。
いくつもの線のような2人の残像はいつまでも続き、終わろうとしなかった。
その打ち合いの中で、スピードとパワーではほんの少しランスロの方が上回っていた。
動きながらザラは思った。
(少しずつ私の対応が遅くなっている。それに私の剣がわずかに押されて動いている。)
同じ瞬間にランスロも感じていた。
(このまま少しずつ押し切ろう。やがて剣を当てることができる。)
ザラは判断した。
(止って防御しなければ、戦いの情勢を変えることができない。)
そう考えて打ち合いを止め、できる限り後ろに飛び跳ねて距離をとった。
その瞬間ザラに隙ができたが、ランスロはその隙を狙おうとしなかった。
試合開始当初と同じように、2人は距離をとって相対していた。
「ランスロ。なぜ今私にできた隙を狙わなかったのか。」
「隙があったのですか。僕には全然わかりませんでしたが。」
ザラは思った。
(あなたは実力だけではなく、やがては多くの人の心をつかむリーダーになるかもしれないな。私も同じようになれるよう努力しよう。)
試合の流れから、必然的に最後の一撃の勝負になった。
2人ともそのことを認識した。
ランスロは光の精霊に呼びかけ自分の気を集中させた。
ザラは闇の精霊に呼びかけ自分の気を集中させた。
最大の速度で剣が振れるよう全ての気が使われ、2つの剣が衝突した。
その瞬間、最大限の力が剣先に集中され衝撃は最大限となって観客はおもわず耳をふさいだ。
やはり、速さでも圧力でも少しランスロが上回り、ザラの剣は手から離れ、はね飛ばされた。
ランスロの剣の軌道は、そのままザラの顔をかすめる軌道にあった。
ところがザラの顔をかすめるまでのほんの短い軌道の間、ランスロは剣の軌道をわずかに変えた。
そしてそうするためには、剣を離さざるを得なかった。
ランスロの剣は、顔とすれすれの所で、はるか遠くまで飛んでいった。
同時にザラの剣も飛んでいた。
ザラの従者のアスタロトがおもわず叫んだ。
「お嬢様の剣の方が近くに落ちました、早くお取りになれば、お嬢様の勝ちです! 」
ところがザラは叫んだ。
「私の負けだ!! 」
………………
その声が試合会場に轟とどろいた後、我に返った審判が言った。
「ザラが敗北を認めた。ランスロがこの試合に勝利した。」
会場が大歓声に包まれた。
試合が終わった後、ランスロはザラに近づいた。
「大丈夫ですか。剣はかすらなかったですか。」
「……」
ザラは顔を真っ赤にしてランスロを見つめ、何も言わなかった。
「どこかケガをしたのですか、僕は失敗したのかな。」
ランスロはそう言うと、ザラの顔を自分の顔に引き寄せてじっと見始めた。
そうされたザラが口を開いた。
「あなたはどうして剣の軌道を変えたのか。」
「今日の試合で使ったのは木剣でしたが、木剣とはいえザラさんのお顔をかすめてしまうと、ずっと消えない傷あとが残ってしまうと思ったからです。」
「私の顔のことを心配して瞬間的に判断したのか。」
「とても美しい顔ですね。それよりも、顔の傷がこれからずっとあなたの心の傷になってしまい、かなしい一生になってしまいます。僕もあなたに一生うらまれるのはいやです。」
ザラが言った。
「目を閉じろ」
ザラはその唇に軽くキスした。
……誰も気がつかなかったが、試合会場のかたわらに四葉のクローバーが生えていた。
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