私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

文字の大きさ
11 / 71

11 学生生活

しおりを挟む
 ランスロは選抜試験として行われた剣術大会に優勝して、貧困な平民層出身として初めて、士官学校への入学を国から許可された。



 問題となったのは、士官学校は2人部屋の寄宿制であったため、寄宿舎でランスロと相部屋にするのは誰かということだった。

 ところが、その問題は簡単に解決していた。



 新入生は入学式の1週間前までには寄宿舎に入る必要があり、ランスロは指示された部屋に自分のわずかな荷物とともに初めて入ろうとした。

 すると、先に誰かが中にいた。



「新入生のランスロです。入ります。」

 ランスロはノックした。

「どうぞ。」



 ドアを開けて入ると、部屋の中で椅子に座っていたのはグロスター公爵家の息子フィリップだった。

「あなたは確か。」

「そうだよ、1回戦で君に負けたフィリップさ。これからよろしくお願いします。」



「あなたのような最上級の貴族が、僕なんかと一緒でいいのですか。」

「全く問題ないよ。僕はむしろ君と一緒の部屋になりたくて、強く希望したんだ。」

「どうしてですか。僕は貧困層の平民だし、ましてや剣術大会で君に勝ってしまった……」



「君の身分や僕に勝ったことは問題ではない。むしろ僕は君を尊敬しているんだ。その年であれほどの剣の技を身につけるなんて、常人では絶対にできない。たぶん、もともとの素質もあったのだろうけど、血のにじむような努力をしてきたんじゃないか? 」



「毎日できる限り、がんばってきたんだけど、そんなにつらくなるような努力ではなかったです。」

「我が師、名高き剣士ザガンが言っていたよ――君は必ずそう答えるって。やはり、君は人並み外れた人物だ。だから是非是非、一生の友達になってほしい。」



「もちろんです。よろしくお願いします。」

 その後、フリップはランスロが持っていたわずかな荷物をじっと見始めた。



「これですか! 公爵家の物と違ってとてもみずぼらしいから、あまり見ないでください。」

「いやいや、そういう意味じゃなくて。君の荷物はもう運び込まれているよ。しかも、ものすごく豪華な物ばかりだ。」



 そういわれて、ランスロが部屋の片隅を見ると、確かに豪華そうな荷物が摘まれていた。

 中には最上級の甲冑もあった。



「これらは僕の物ではありません。誰か別の方の荷物が間違って運び込まれたのではないでしょうか。今、寄宿舎の管理人さんに確かめてきます。」

 ランスロは急いで部屋を出て、管理人室に行きたずねた。



「新入生のランスロですが。僕が寄宿する部屋に既に荷物が運び込まれています。あんなに豪華な荷物は僕の物ではありませんが。」

 彼のその言葉を聞くと、管理人は満面の笑顔で事情を話した。



「ランスロさん。あの荷物はあなたの物ですよ。昨日、大金持ちのロスチャイルド家から届きました。手紙も預かっています。そうそう、あのお嬢さんの美しい顔を傷つけないようにしたあなたは、国中の女性の尊敬を集めているのですから。」



 管理人は彼に手紙を渡した。

 それは、ゴード王国の誰もが知っているロスチャイルド家の封印がされていた。

 彼は大変なことになったと思い、窓のそばに近づき誰にも見られないように手紙を開けた。



「ランスロさん。あなたが私にした尊い行為に対して父親が大変感激して、士官学校に入ってから必要な物全てをあなたに送ることになりました。甲冑や剣もあります。どうぞお使いください。士官学校に入ってから、あなたと学校生活を送るのを大変楽しみにしています――ザラ」



 彼が自分の部屋に戻るとフリップが聞いた。



「ランスロ。何かわかったかい? 」

「はい。ある大金持ちが僕に贈ってくれたものでした。」

「ロスチャイルド家じゃない。」

「えっ。どうしてわかったのですか。」

「なんで! ほとんどの人がわかるんじゃない。」







 ランスロが無事に士官学校に入学できたことで、グネビア王女の大きな心配が一つ消えた。

(これで、ランスロは我が国を守ることになるみんなと一緒に成長するから、魔族や魔王と戦う時にひとりだけで戦うということはなくなったわ。)



 しかし、反対に別の大きな心配ができた。

(あのザラという女の子はいったい何者なの? 魔王ザラが人間になって小さくなったみたい。それにあんなにランスロと親しくなってしまって――キスなんかして! )



 国王と王女が出席して、士官学校の入学式が開催された。

 その中で特に出席者の注目を集めたのは、王女の祝辞しゅくじだった。



「みなさん歴史と伝統ある我がゴード王国の士官学校へのご入学おめでとうございます。みなさんは今後努力に努力を重ね、我が国、国民を守る強い騎士、優れた将軍になってください。今この国は何も驚異にさらされていませんが、やがて最大の脅威は必ずやってきます。――



――その脅威は、たぶん皆さんの創造をはるかに超えた巨大最強のものでしょう。驚異に対抗するための希望の光は必ずあります。しかし、みなさん全てがその光を消さないよう精一杯努力しなければ、どんなに強い希望の光であっても消えてしまうでしょう。みなさんに心からお願いします。」



 王女は少し涙ぐんでいたが、そのほんとうの意味を知る者は誰もいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...