私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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12 学生生活2

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 士官学校での授業が始まった。

 最初は、基本的な戦術の講義だった。

 ところがまだ7歳と幼い新入生達には、難しそうであまりおもしろくなかった。

 そのため、大講堂の席は後ろから埋まっていき、前の方はほとんど空いていた。



 ただ、講義の始まるかなり前から、最前列に座った学生がいた。

 ランスロだった。



 彼は、大人数での戦いの知識が全くなかったので、最も興味をもっていた。

 しばらくすると、彼は声をかけられた。



「さすがに熱心だな。最前列に座って全ての知識を吸収しようとするのか。世界最強の騎士になるとともに、不敗将軍にもなれるな。」

 ザラだった。

 彼女はランスロのすぐ横に座った。



「学生生活に必要な物をいろいろいただきました。ありがとうございました。」



「父様が、あなたのことをひどく気にいってしまったのだ――私と全く同じだ。親子は似てしまうものだ。」



「お手紙もいただきました。手紙というものがあることは知っていましたが、初めて僕あてに書かれた手紙で、とてもうれしかったです。」



「初めて受け取った手紙だったのか! おかしくなかったか? 」

「はい。丁寧な文書でした。ザラさんは、普段話す感じと、手紙に書いた感じが違うのですね。」



「そうか。どんな文書だったのだ? 」

「えっ……」



 しばらくすると、講義を担当する教授が入ってきた。

 教授の名前はカンシンといい、既に定年を過ぎている退役将軍だった。

 かって、ゴード王国に数多く襲来した魔族軍を、粘り強く撃退した往年の名将軍だった。



 開口一番、教授は言った。

「はるか昔から議論となっているのは、最強の騎士が不敗将軍になれるかということだ……」



 ザラが、さきほどの会話を想い出し、微笑んでランスロを見た。



「私の考えはイエスだ。なぜなら最強の騎士になれる者は自分におごることなく、自分に足りないことを最も良く知っている者だからだ。そして、その考えを軍全部に当てはめることができれば、不敗の将軍にもなれるのだ。今日、この講堂にきてその考えに合点がいったよ。」



 教授はそう言って、最善列に座っているランスロとザラをちらりと見た。



 相変わらず後ろに座っていた王族や貴族の学生は、とても眠そうにしていた。

 中には半分寝ている者もいた。

 その状況にかまわず、教授は講義を開始した。



「戦術で一番大切なことは、前進することと、後退することだ。そして、この2つの内、どちらを選ぶか大変問題になる状況が必ずやってくる。君達によく覚えておいてもらいたいのは、前進する時には臆病さが、そして後退する時には勇気が必要だということだ。」



「先生。質問です。」

 ザラが手を上げて教授に聞いた。

「どうぞ、聞きたまえ。」



「ありがとうございます。先生は前進する時と後退する時に、捕らわれやすい気持ちとは反対の気持ちを忘れないようにとおっしゃっているのでしょうか。」



「そのとおりだ。すぐに理解した。有望だな。」

 教授のその言葉を聞いて、講堂の中がざわついた。



「ところで、この前進と後退について、1週間後に試験を行うこととする。この士官学校には、魔法師が思念魔法を張り巡らせた仮想戦場がある。そこで、将軍になって軍の前進と後退を指揮してもらう。」



 え――――――っ

 入学してすぐの試験に、新入生達は落胆の声を出した。

 ただ、一番前に座っていた2人だけは違った。



「ランスロ。入学して初めての試験だな。負けないぞ。」

「仮想の軍といえども、自分1人だけではなく大勢を動かすのですからドキドキします。」







 士官学校の講義や実技が終わった。

 ランスロとザラは並んで歩いていた。

「1日目からこんなにたくさんのことを勉強できてうれしいです。」

「そうだな。だけど、騎士や将軍になるのは大変だと思ったぞ。」

「正直いうと僕もです。」

「気が合うな。」

「ところで、僕は寄宿舎に帰ります。ザラさんの寄宿舎ってあるのですか。」

「寄宿舎なんてないぞ。」



 しばらく歩くと、大きな馬車がザラを待っていた。

「私は女性だからだ。男性ばかりの寄宿舎で暮らすわけにはいかないのだ。」

 馬車の前に立っていた者がいた。



「お嬢様。士官学校での1日目、お疲れ様でした。」

「アスタロト、出迎え、ありがとう。」



「ランスロ様、お久しぶりです。」

「執事さんがお迎えに来るのですね。」



「今日は、お嬢様が士官学校に通う第1日目ですので……」



 執事がそう言うと、馬車から1人の男が降りてきた。

 背の高い、眼鏡をかけた理知的な雰囲気だった。

「父様、来ていただいたのですね。」



「自分の命よりも大切な娘が士官学校の入学して、とても心配だったのだ。」

「大丈夫です。私には最強の友人がいますから。」



「ランスロ君。娘のことで君には大変お世話になっている。試合会場では遠くて見ていただけだったから、こうして直接話したかったのだ。」



「僕の方こそ。ザラさんによい友人になっていただいています。それと、士官学校に入学するために必要な物をいろいろ贈っていただき、ありがとうございました。」



「大した物ではないから気にする必要はない。――やはり君は特別だな。私と直接話してもこうして立っていられる。それでは失礼する。」



 ザラと父親を乗せて、執事のアスタロトが操り馬車は去っていった。



 周辺を歩いていた学生達が意識を失って倒れていたが、すぐに気が付き立ち上がった。
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