私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

文字の大きさ
25 / 71

25 鍛冶師の一族

しおりを挟む
「ランスロさん、2~3か月後には真剣をお届けします。お待ちください。ちょうど休講が続いているので、自分の家の工房に戻って打ち続けます。」

「失礼なことを聞いてしまいます――コンラート君はまだ僕と一緒の子供ですが、そんなに短い時間で真剣が打てるのですか。」

「我が家では、当然のことです。ゾイゼンの一族はまだほんとうに幼い子供のうちから、真剣を打つ技術を完全に身につけます。そうでなければ、自分の生涯でさらに技術を高め、次の世代に伝承することができません。技術が停滞することを最も嫌う一族なのです。」

「さすがにゴード王国最高の鍛冶屋、ゾイゼンの一族ですね。」
「勇者になれるかもしれない方に使っていただける剣を作れるなんて、鍛冶屋の最高の喜びです。僕は一族中の鍛冶職人みんなから、うらやましがられるでしょう。」



 数日後、真剣を打ってもらうことについて、ランスロはマスターのホークに報告した。

「ランスロ君。それはほんとうに良いことだ。君の実力はもう相当な高さまで到達しているから、いつまでも木剣だけで訓練してはいけないと思っていたんだ。僕が真剣をプレゼントしようと考えていたんだが、ゾイゼンの一族が打ってくれるなんてすごいな。」

「ところで、ゾイゼンの一族の誰がランスロ君の真剣を打ってくれるんだい? 」
「1年生のコンラート君です。」

「えっ! ほんとうかい! 彼はゾイゼンの一族の本家、コンラート・ゾイゼンだ。」
「ゾイゼンの一族の本家って、そんなにすごいのですか。」

「ランスロ君と同じように神のギフトを受けている人々さ。この一族の中で、人間が使うことができる最高の武器を作ることができる才能が代々遺伝される。特に大切なことが、『勇者の剣』だ。名前を『希望』という聖剣を打つことができるのは、この一族の中からでしか現れない。」

「勇者と魔王、人間と魔族との戦いは歴史上何回も繰り返されています。『勇者の剣』はこの世界のどこかにあるに違いませんから、わざわざ打つ必要はないのでは――」

「『勇者の剣』と相対する『魔王の剣』は『業火』という。勇者と魔王が戦い、その決着がつくと『希望』と『業火』はこの世界から消滅してしまうんだ。だから、次の戦いの前まで、勇者と魔王はそれぞれの剣を新たに手に入れなければならない。」

「そのような事情があったのですか。マスター、大切なことをお聞きします。勇者がこの世界に現れたとして、もし、もしもです、その勇者が『希望』を手に入れることができなかったとすると、『業火』を手に入れた魔王に勝てるのでしょうか。」

「絶対に不可能だよ。それぞれの剣は使い手の実力を百倍にするんだ。」
「………………『希望』を手に入れることができなかった勇者は、可哀想ですね。」

「確かに! 魔王に絶対負けて、人間が魔族に支配されることを覚悟しなければならないだろう。幸いに、今までの歴史上、そのような可哀想な勇者は生まれてこなかったといえる。人間が魔族に支配された歴史はないからね。」

「可哀想な勇者は、自分のことをどのように思うのでしょう。」
「空想の話で、全く知るよしもないけれど、一つのことだけは確実に言えるかな。」
「教えてください。マスター」

「聖剣『希望』を持っていなくても、その勇者は最後まで人間を守るため勇敢に戦って死ぬだろう! 」



 ランスロは、真剣を打つことにとても興味をもった。
 そして、コンラートにお願いしてゾイゼン家の工房を訪ねていた。

 工房の入口の前で待っていると、革製の作業着を着たコンラートが出て来た。
「コンラート君。今日はごめんなさい。ほんとうに短い時間でいいです。真剣を打つのを見せてください。」

「喜んで。勇者になれるかもしれないランスロさんが見てくれるだけで、鍛冶職人は自分達の仕事のやりがいを強く感じることができます。さあさあ、中に入ってください。ただし、人間にとって決して居心地が良い場所ではありませんから、御覚悟を――」

 それから彼はコンラートに案内されて、工房の中に入った。
 ものすごい高温と湿気で、慣れない彼は思わず意識を失いそうになった。
 多くの鍛冶職人が一心不乱に剣を打っていて、金属を叩く連続した音が聞こえていた。

 いきなりコンラートが大きな声で話した。
 普段のしゃべり方とは全く異なり、良く通る大きな声が工房中に響いた。
「みなさん。今日はランスロさんが来られました。勇者になり得る方です。」

 鍛冶職人達は一斉に立ち上がり、ランスロの方を見た。
 彼らの目には尊敬と期待がこもっていた。
 年配の鍛冶職人が一礼して言った。

「ぼっちゃんから聞いています。あなたが1人でキラーマンティスの前に立ちふさがり、アベロン市の多くの住民を救ったのですね。真の勇気をやどし、神のギフトを受けて神聖のオーラをまとう強い力をもつ。勇者になれることができる方だと聞いています。」

 働き盛りと思われる青年の鍛冶職人も一礼して言った。
「あなたの真剣をぼっちゃんが打たれるのですね。今回はそれでいいのですが、あなたが勇者になった時に聖剣『希望』を打つのは、私に是非お任せください。」

「抜け駆けはだめですよ――」
 工房の中は鍛冶職人達の明るい笑い声に包まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...