私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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29 奉仕活動2

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「ランスロは、あのパン屋で奉仕活動をするのか。」
「そうです。ザラさんはどこで奉仕活動をするのですか。」
 ザラは、パン屋と道をはさんで反対側の店を指さした。

「あの花屋だ。店主の花を選ぶ感覚がとてもすばらしいのだ。だから、それぞれの季節で一番美しい花々が売られている。私は何回もたくさん花を買って家に飾った。」

「偶然ですね。大通りをはさんで向かい合ったお店で、働くなんて。これから1か月間、可愛い服を着てきれいな花を売るザラさんを見られるのですね。」

「ランスロなら、毎日じろじろ見られてもいいぞ。それから、おいしいパンを一緒に食べよう。実はここで働くと決めた時、毎日のお昼をあの店のパンにしようと決めたんだ。飲み物だけは、ポットに入れて持ってくるから心配ないぞ。」

「お昼のことはあまり考えていませんでした。でも、僕が働くお店のパンはとてもおいしいですから、毎日いろいろな種類を買いたいと思います。それでは。」

 ランスロとザラは、それぞれ奉仕活動をする店に入って行った。



 ランスロがパン屋に入っていくと、すでにおばあさんが焼き上げたパンを陳列しているところだった。
「おはようございます。」

「おはようございます。ランスロさん、早く来てくれたのね。もう今日のパンは焼き上げちゃったから、明日のパン作りの準備をします。小麦に塩、砂糖、酵母菌をまぜてこねるという重労働があるけど、ランスロさんにお願いしていいかしら。」

「もちろんです。がんばります。」

「それでは、この作業着を着てください。私の息子がランスロさんより少し年上の時に着てたものだから、大きいかもしれないけれど。ごめんなさいね。」

 それから彼は、小麦を一所懸命にこね続けた。
 剣技の訓練で手足を毎日鍛えている彼にとっては、少しも苦になる仕事ではなかった。



 あっという間に時間が過ぎてお昼になった。

「ランスロさん。もう休憩してください。」

 おばあさんにそう言われ、彼は手を止めた。
「おばあさん。お昼にお店のパンを食べたいのですが、売っていただけませんか。」

「お金なんていりません。好きなものを食べてください。」
「ご厚意に感謝します。でも、ただでパンをいただいては奉仕活動にならなくなってしまいます。」

「それならばしようがないですね。それではお金をいただきます。」
「友達の分もあるので、2人分を買います。」
「2シリンです。」

 おいしそうなパンを2人分選んで、彼が店の外に出るとザラが既に花屋から出て待っていた。
「ザラさん。待ちましたか。」
「いや。私もさっき午前中の仕事を切り上げてばかりだから、あまり待っていないぞ。」

「この近くの公園にベンチがあります。とても景色が良い場所ですよ。そこで食べましょう。」
 2人はその公園まで歩いて行き、開いているベンチに並んで座った。
 ランスロがパンを、ザラが飲み物を出した。

「パン屋の仕事はどうだ。疲れなかったか。」
「剣技の訓練で足腰を鍛えていたから、全く問題ありませんでした。パン作りは小麦粉をこねることから始まるますが、普通の人には大変な仕事です。」

「そうか。ところで、店主はどういう人なのだ。」
「年配のおばあさんです。優しい方です。キラーマンティスの襲撃事件や僕のあだなのことも知っていました。例のあだなです。あっ、お願いですから言わないでくださいよ。」

「ふふ、最強の騎士、不敗の将軍になるランスロ! 」
「まあ、しようがないです。ところで、パンの味はどうですか。」

「うん。とてもおいしいぞ。この世のものとは思えないくらいだ。飲み物を汲むからな。」
 ザラは2つ持ってきたカップにポットから飲み物を注いだ。

「その飲み物は何でしょうか。」
「それは秘密だぞ。まず飲んでから当ててみるがいい。」

 彼は、差し出されたカップに入った飲み物を一口飲んだ。
「苦い味ですが。パンにもよく合います。それに深い味がして、心を落ち着かせてくれますね。」
「それはコーヒーという飲み物だ。私は人間の世界の飲み物の中では一番好きだぞ。」

「『人間の世界の飲み物の中ではなんて』ザラさんはおもしろい言い方をしますね。」
「別におもしろくないと思うがな。」



 午後の仕事を始めるために、2人はそれぞれの店に帰った。
「おばあさん。帰りました。」

「まあまあランスロさん。もう少しお昼の休憩をとればよかったのに。それでは、午後は1次2次発酵と最終の焼き上げまでやってしまいましょう。今日は私がやっているのをよく見てやり方を覚えてくださいさい。」

 その後、おばあさんはおいしいパンを焼き上げるための技術を、実際にやりながら彼に教えたくれた。
 午後もあっという間に過ぎ、夕方になった。

「明日の準備はこれでできたから、今日の仕事はこれで終わりにしましょう。ランスロさん、お疲れ様でした。」

「今日は、僕にパンを焼く技術を教えていただいたので、あまりお仕事がはかどらなくてすいません。明日から、少しずつ慣れていくようにがんばります。」

「気にしなくていいのよ。ランスロさんが来てくれて私も元気になったから、むしろ今日は仕事のスピードが上がったくらいです。」

「そう言っていただけるとありがたいです。それでは、お先に失礼します。」
 ランスロは店を出た。

 すると、お昼と同じようにザラが既に花屋から出て待っていた。
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