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52 ナイトメア(悪夢)
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魔界の中の僻地にある秘密の洞窟で、再び4人の上級魔族が集まっていた。
そこには、魔界の内務大臣のアスタルトも同席していた。
アスタルトは邪悪妖精ノイがランスロと戦い、失敗して消滅させられたことを説明した。
「勇者の候補がもつ最大の弱点の1つ、婚約者のザラ様の姿になって生じる隙を狙うようアドバイスしました。しかし大失敗に終わり、ノイは勇者の候補が振るうゾイゼンの剣の光りによって消されました。どうも、ザラ様とは深いきずながあるようで、すぐに偽物だとばれたようです。」
「そうか。邪悪妖精が消滅させられても、なんの哀れみの心も起きないな。きっと、勇者の候補の思い出に刻まれた大切に思うザラ様の姿で、彼を殺せることに大きな快楽を感じたのだろう。げすめ! これまでノイのやってきたことはどす黒くて嫌いだった。」
そう言った上級魔族に、アスタルトが提案した。
「ナイトメアゼロ様、どうでございますか。邪悪妖精ノイが大失敗した勇者の候補への攻撃を、次にあなた様が行ったらきっとうまくいくます。」
「私ならば邪悪妖精のように汚い戦い方はしない。」
「勇者の候補にはもう一つ。ザラ様に勝るとも劣らない大きな弱点があります。そこをあなた様の幻想的な夢で攻めたら必ずうまくいきます。」
「内務大臣アスタルト、勇者の候補のもう一つの大きな弱点を教えてくれないか。」
「もちろんです。こちらの方を攻めれば勇者の心を折ることも可能だと思います。」
グネビア王女の心の片隅には、消えることのない1回目の一生の記憶があった。
それは、自分と回りの全ての人々が魔族の大侵攻で命を落し、ノーチャンスなのに勇者ランスロが精一杯悲劇の運命に抗あらがった悲惨な記憶だった。
(とても辛い記憶を忘れることができないけれど、今度こそランスロは幸運に恵まれ、魔族の大侵攻を見事に防ぐことが必ずできるわ。違う違う――幸運に恵まれているのではない。彼は糸のように細いワンチャンスをつかみ続けているのだわ。)
王女は寝る前のいつものルーティーンで窓を開けて、王宮から見える美しくきらめく王都イスタンの夜景を眺めた。
(まだ、こんなにたくさんの光りが灯されている。多くの人々が生きている。きっとそれぞれ大変な毎日に違いないだろうけど、きっとみんながんばっているのね。)
――その時、グネビア王女は全く気がつかなかったが、王宮の塔の上にある寝室の窓のそば、空中に小さな黒い穴が開いていた。
ほんのわずか、砂粒よりもさらに小さい深い暗闇がそこにあった。
「なぜかとても良い気分です。今日はよく眠れそうだわ。」
王女は窓を締め就寝した。
翌朝、グネビア王女はあわてた侍女の声で起された。
「王女様。大変でございます。たった今、トランスファー城から国王様の元へ早馬の知らせがありました。魔族の大侵攻が開始されたそうです。」
「えっ、なぜでしょう。早すぎませんか。勇者の候補はまだ勇者になっていませんから、魔王の候補も魔王になっていないと思います。」
「それが、魔族の大侵攻の先頭に立っているのは魔王ザラ、背がすらっと高く完璧に美しい顔をしている魔族です。そして魔王は冷たく微笑みながら、多くの人間を殺戮し続けている。トランスファー城から国軍が翌撃に出ていますが、全く意味をなさず押しまくられているそうです。」
「トランスファー城の中には勇者の候補、騎士ランスロがいます。必ず彼がなんとかしてくれるはずです。彼の情報は何かありませんか。」
「…いえ王女様。今のところは何も入っていないそうです。」
王女が幼い頃から仕えている信頼のおける侍女が、不自然に口ごもった。
少し気になったが、王女は続けて別のことを聞いた。
「父様はどうなされていますか。」
「大広間に関係する家臣を全て集めて、対策会議を開いていらっしゃいます。」
「私も今参ります。」
グネビア王女が大広間に行くと、多くの家臣達があわただしく動き回り、魔族との戦況が大変厳しいことがよくわかった。
王女が王座に近づくと、そのことに気がついたヘンリー国王が極めて深刻な顔で彼女を見た。
「グネビア! ここはもう戦場と直接つながっている場所だ。奥に控えていればよいぞ。」
「いいえ、父様。今こそがゴード王国最大の危機。私も王女としてこの場に加わり、少しでも皆様の助けになりたいのです。」
王女がそう言ったとほぼ同時に、大広場の扉が乱暴に開かれ、体中傷だらけの騎士が王座に駆けよってきて、悔しそうに報告した。
「報告致します。トランスファー城は魔族の大群の前に落城してしまいました。」
国王も含めてその場にいた全員が、非常に驚いた顔になった。
「トランスファー城は魔族の侵攻を防ぐために、難攻不落になるようさまざまなことを考えて築城されたのだ。しかも司令官はあの最強の騎士と言われたホークだぞ。」
国王に説明しようとした傷だらけの騎士が、そばにグネビア王女がいることに気がつき説明を止めようとした。
それを見たヘンリー国王が心を鬼にして騎士に指示した。
「よい。説明するのだ。」
「魔王ザラに勇者の候補、騎士ランスロが寝返ったのです。そして、魔王ザラは魔王の地位をランスロに譲りました。今は魔王ランスロ、魔皇后ザラと名乗っています。」
「なに――――――、何が起こっているの!!! 」
心臓をえぐるような信じられない展開に、グネビア王女はその場で意識を失い倒れてしまった。
翌朝、グネビア王女はあわてた侍女の声で起された。
「王女様。大変でございます。たった今、トランスファー城から国王様の元へ早馬の知らせがありました。今日の早朝から魔族の大侵攻が開始されたそうです。」
「また………………」
そこには、魔界の内務大臣のアスタルトも同席していた。
アスタルトは邪悪妖精ノイがランスロと戦い、失敗して消滅させられたことを説明した。
「勇者の候補がもつ最大の弱点の1つ、婚約者のザラ様の姿になって生じる隙を狙うようアドバイスしました。しかし大失敗に終わり、ノイは勇者の候補が振るうゾイゼンの剣の光りによって消されました。どうも、ザラ様とは深いきずながあるようで、すぐに偽物だとばれたようです。」
「そうか。邪悪妖精が消滅させられても、なんの哀れみの心も起きないな。きっと、勇者の候補の思い出に刻まれた大切に思うザラ様の姿で、彼を殺せることに大きな快楽を感じたのだろう。げすめ! これまでノイのやってきたことはどす黒くて嫌いだった。」
そう言った上級魔族に、アスタルトが提案した。
「ナイトメアゼロ様、どうでございますか。邪悪妖精ノイが大失敗した勇者の候補への攻撃を、次にあなた様が行ったらきっとうまくいくます。」
「私ならば邪悪妖精のように汚い戦い方はしない。」
「勇者の候補にはもう一つ。ザラ様に勝るとも劣らない大きな弱点があります。そこをあなた様の幻想的な夢で攻めたら必ずうまくいきます。」
「内務大臣アスタルト、勇者の候補のもう一つの大きな弱点を教えてくれないか。」
「もちろんです。こちらの方を攻めれば勇者の心を折ることも可能だと思います。」
グネビア王女の心の片隅には、消えることのない1回目の一生の記憶があった。
それは、自分と回りの全ての人々が魔族の大侵攻で命を落し、ノーチャンスなのに勇者ランスロが精一杯悲劇の運命に抗あらがった悲惨な記憶だった。
(とても辛い記憶を忘れることができないけれど、今度こそランスロは幸運に恵まれ、魔族の大侵攻を見事に防ぐことが必ずできるわ。違う違う――幸運に恵まれているのではない。彼は糸のように細いワンチャンスをつかみ続けているのだわ。)
王女は寝る前のいつものルーティーンで窓を開けて、王宮から見える美しくきらめく王都イスタンの夜景を眺めた。
(まだ、こんなにたくさんの光りが灯されている。多くの人々が生きている。きっとそれぞれ大変な毎日に違いないだろうけど、きっとみんながんばっているのね。)
――その時、グネビア王女は全く気がつかなかったが、王宮の塔の上にある寝室の窓のそば、空中に小さな黒い穴が開いていた。
ほんのわずか、砂粒よりもさらに小さい深い暗闇がそこにあった。
「なぜかとても良い気分です。今日はよく眠れそうだわ。」
王女は窓を締め就寝した。
翌朝、グネビア王女はあわてた侍女の声で起された。
「王女様。大変でございます。たった今、トランスファー城から国王様の元へ早馬の知らせがありました。魔族の大侵攻が開始されたそうです。」
「えっ、なぜでしょう。早すぎませんか。勇者の候補はまだ勇者になっていませんから、魔王の候補も魔王になっていないと思います。」
「それが、魔族の大侵攻の先頭に立っているのは魔王ザラ、背がすらっと高く完璧に美しい顔をしている魔族です。そして魔王は冷たく微笑みながら、多くの人間を殺戮し続けている。トランスファー城から国軍が翌撃に出ていますが、全く意味をなさず押しまくられているそうです。」
「トランスファー城の中には勇者の候補、騎士ランスロがいます。必ず彼がなんとかしてくれるはずです。彼の情報は何かありませんか。」
「…いえ王女様。今のところは何も入っていないそうです。」
王女が幼い頃から仕えている信頼のおける侍女が、不自然に口ごもった。
少し気になったが、王女は続けて別のことを聞いた。
「父様はどうなされていますか。」
「大広間に関係する家臣を全て集めて、対策会議を開いていらっしゃいます。」
「私も今参ります。」
グネビア王女が大広間に行くと、多くの家臣達があわただしく動き回り、魔族との戦況が大変厳しいことがよくわかった。
王女が王座に近づくと、そのことに気がついたヘンリー国王が極めて深刻な顔で彼女を見た。
「グネビア! ここはもう戦場と直接つながっている場所だ。奥に控えていればよいぞ。」
「いいえ、父様。今こそがゴード王国最大の危機。私も王女としてこの場に加わり、少しでも皆様の助けになりたいのです。」
王女がそう言ったとほぼ同時に、大広場の扉が乱暴に開かれ、体中傷だらけの騎士が王座に駆けよってきて、悔しそうに報告した。
「報告致します。トランスファー城は魔族の大群の前に落城してしまいました。」
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それを見たヘンリー国王が心を鬼にして騎士に指示した。
「よい。説明するのだ。」
「魔王ザラに勇者の候補、騎士ランスロが寝返ったのです。そして、魔王ザラは魔王の地位をランスロに譲りました。今は魔王ランスロ、魔皇后ザラと名乗っています。」
「なに――――――、何が起こっているの!!! 」
心臓をえぐるような信じられない展開に、グネビア王女はその場で意識を失い倒れてしまった。
翌朝、グネビア王女はあわてた侍女の声で起された。
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