53 / 71
53 ナイトメア(悪夢)2
しおりを挟む
グネビア王女が、ゴード王国の公式行事に出席しなくなった。
いつの間にか、それは国中の話題となりたくさんの国民が心配していた。
その中で最も心配していたのは、トランスファー城の騎士ランスロだった。
地域の巡視から城に帰り、馬から降りて歩いていた彼の顔色はとても悪かった。
「あぶない! ランスロ!! 」
考え事をして前をよく見ていなかったので、他の騎士が駆けていた馬にぶつかりそうになった。
城の中に入って巡視終了の報告をすると、係官から知らせがあった。
「ホーク司令官がお呼びです。城にお戻り次第、司令官室に来るようにとのことです。」
「わかりました。」
彼は司令官室の扉をノックした。
「騎士ランスロ入ります。」
中に入ると、司令官は机に座ったままでにっこりとしながら彼を見た。
「来たな。少し聞きたいことがあるんだ。」
「はい。なんでしょうか。」
「体の調子はどうなんだ。何か特別に悪い所があるのか。」
「いえ。別に。」
「そうかな、私は子供の頃からランスロを見ているからよくわかる。――ここが悪いだろう。」
司令官は自分の心臓の場所を手でさわって聞いた。
「マスターでもある司令官には、正直に言わなければいけませんね。特に心臓が悪いとは思いませんが、正直言って、この頃、急に締め付けられるようになることがあります。考え事をしている時間が多くて、その悩みが大きいのです。」
「なるほど。弟子が悩んでいる時には、マスターは手助けをしなければならないな。それでは騎士ランスロ、司令官命令だ。私の報告書を王宮の軍務大臣に届けてくれ。加えて、トランスファー地域総司令官ホークの代理として、グネビア王女様のお見舞いに行ってくれ。」
その命令を聞いた途端、とても悪かったランスロの顔色が良くなり明るくなった。
「マスター。ありがとうございます。それではすぐに出発の準備をします。」
彼は急いで部屋をでて行った。
その姿を見た司令官の口から、ひとり言が出た。
「少しかっこつけてしまったな。ほんとは、陛下から王女様の元へすぐにランスロをよこすよう、手紙が届いていたのだけど。」
ランスロは出発の準備をすぐに終わらせた。
そして次の日の朝早く出発しようとして、早めに休もうとした。
彼はこの頃よく眠れなかった。
寝る前のいつものルーティーンで窓を開けて、城の高層の部屋から月や星を映し、美しくきらめく川の流れを見下ろした。
(グネビア王女様、ほんとうに御病気なんだろうか。お見舞いに行って元気づけて差し上げなければ。きっと、ゴード王国や国民のことをほんとうに心配なさって、心や体を痛めてしまわれたに違いない。勇者の候補として、僕がもっとがんばらなけれいけない。)
――その時、騎士ランスロは全く気がつかなかったが、寝室の窓のそば、空中に小さな黒い穴が開いていた。
ほんのわずか、砂粒よりもさらに小さい深い暗闇がそこにあった。
「今はとても良い気持ち。今日はよく眠れそうだ。よかった。」
彼は窓を締め就寝した。
翌日、朝早くからランスロは馬を走らせ王都イスタンに向かった。
順調に行程は進み、午後には王都に通じる大街道に出ることができた。
「後はこの街道をひたすら前に進むだけ、休まず行こう。」
彼はしばらく馬を進めて王都まであとわずかな距離まで進んだ時、反対側からかなりの速さで走ってくる早馬があった。
(人にぶつかるとあぶないなあ。なぜ、そんなに急ぐのだろう。)
その早馬はだんだん彼との距離が近づくと、なぜか馬の速さをゆるめ始めた。
馬の乗り手がランスロを見て、とても驚いて大きな声をあげた。
「ランスロ!!! 」
彼も同じだった。
「フリップ!!! 」
士官学校の同級生で、ずっと寄宿舎の同室で暮らした貴族序列第1位のコンラート公爵家の次期当主フィリップだった。
フィリップは今、王宮直属の近衛騎士団の騎士になっていた。
とても懐かしい再会だったが、なぜかフィリップはとても険しい表情だった。
大街道の途中でランスロに出会ったことに、非常に驚いているようだった。
「どうしてそんなに急いでいるんですか。」
「トランスファー城に行こうとしていたんだ。大切なことを知らせるために、馬を走らせてきたんだ。ずっと君のことを考えながら――――」
「僕のことを………………まさか! 」
「グネビア王女様が今朝亡くなられた。不治の病にかかってしまわれたんだ! 」
「えっ!!! 」
ランスロの目の前が突然暗くなった。
彼は落馬して意識を失った。
ランスロは馬を走らせ王都イスタンに向かっていた。
順調に行程は進み、午後には王都に通じる大街道に出ることができた。
「後はこの街道をひたすら前に進むだけ、休まず行こう。」
彼はしばらく馬を進めて王都まであとわずかな距離まで進んだ時、反対側からかなりの速さで走ってくる早馬があった。
(人にぶつかるとあぶないなあ。なぜ、そんなに急ぐのだろう。)
その早馬はだんだん彼との距離が近づくと、なぜか馬の速さをゆるめ始めた。
馬の乗り手がランスロを見て、とても驚いて大きな声をあげた。
「ランスロ!!! 」
彼は違和感に気がついた。
「フィリップ!!! また………………」
いつの間にか、それは国中の話題となりたくさんの国民が心配していた。
その中で最も心配していたのは、トランスファー城の騎士ランスロだった。
地域の巡視から城に帰り、馬から降りて歩いていた彼の顔色はとても悪かった。
「あぶない! ランスロ!! 」
考え事をして前をよく見ていなかったので、他の騎士が駆けていた馬にぶつかりそうになった。
城の中に入って巡視終了の報告をすると、係官から知らせがあった。
「ホーク司令官がお呼びです。城にお戻り次第、司令官室に来るようにとのことです。」
「わかりました。」
彼は司令官室の扉をノックした。
「騎士ランスロ入ります。」
中に入ると、司令官は机に座ったままでにっこりとしながら彼を見た。
「来たな。少し聞きたいことがあるんだ。」
「はい。なんでしょうか。」
「体の調子はどうなんだ。何か特別に悪い所があるのか。」
「いえ。別に。」
「そうかな、私は子供の頃からランスロを見ているからよくわかる。――ここが悪いだろう。」
司令官は自分の心臓の場所を手でさわって聞いた。
「マスターでもある司令官には、正直に言わなければいけませんね。特に心臓が悪いとは思いませんが、正直言って、この頃、急に締め付けられるようになることがあります。考え事をしている時間が多くて、その悩みが大きいのです。」
「なるほど。弟子が悩んでいる時には、マスターは手助けをしなければならないな。それでは騎士ランスロ、司令官命令だ。私の報告書を王宮の軍務大臣に届けてくれ。加えて、トランスファー地域総司令官ホークの代理として、グネビア王女様のお見舞いに行ってくれ。」
その命令を聞いた途端、とても悪かったランスロの顔色が良くなり明るくなった。
「マスター。ありがとうございます。それではすぐに出発の準備をします。」
彼は急いで部屋をでて行った。
その姿を見た司令官の口から、ひとり言が出た。
「少しかっこつけてしまったな。ほんとは、陛下から王女様の元へすぐにランスロをよこすよう、手紙が届いていたのだけど。」
ランスロは出発の準備をすぐに終わらせた。
そして次の日の朝早く出発しようとして、早めに休もうとした。
彼はこの頃よく眠れなかった。
寝る前のいつものルーティーンで窓を開けて、城の高層の部屋から月や星を映し、美しくきらめく川の流れを見下ろした。
(グネビア王女様、ほんとうに御病気なんだろうか。お見舞いに行って元気づけて差し上げなければ。きっと、ゴード王国や国民のことをほんとうに心配なさって、心や体を痛めてしまわれたに違いない。勇者の候補として、僕がもっとがんばらなけれいけない。)
――その時、騎士ランスロは全く気がつかなかったが、寝室の窓のそば、空中に小さな黒い穴が開いていた。
ほんのわずか、砂粒よりもさらに小さい深い暗闇がそこにあった。
「今はとても良い気持ち。今日はよく眠れそうだ。よかった。」
彼は窓を締め就寝した。
翌日、朝早くからランスロは馬を走らせ王都イスタンに向かった。
順調に行程は進み、午後には王都に通じる大街道に出ることができた。
「後はこの街道をひたすら前に進むだけ、休まず行こう。」
彼はしばらく馬を進めて王都まであとわずかな距離まで進んだ時、反対側からかなりの速さで走ってくる早馬があった。
(人にぶつかるとあぶないなあ。なぜ、そんなに急ぐのだろう。)
その早馬はだんだん彼との距離が近づくと、なぜか馬の速さをゆるめ始めた。
馬の乗り手がランスロを見て、とても驚いて大きな声をあげた。
「ランスロ!!! 」
彼も同じだった。
「フリップ!!! 」
士官学校の同級生で、ずっと寄宿舎の同室で暮らした貴族序列第1位のコンラート公爵家の次期当主フィリップだった。
フィリップは今、王宮直属の近衛騎士団の騎士になっていた。
とても懐かしい再会だったが、なぜかフィリップはとても険しい表情だった。
大街道の途中でランスロに出会ったことに、非常に驚いているようだった。
「どうしてそんなに急いでいるんですか。」
「トランスファー城に行こうとしていたんだ。大切なことを知らせるために、馬を走らせてきたんだ。ずっと君のことを考えながら――――」
「僕のことを………………まさか! 」
「グネビア王女様が今朝亡くなられた。不治の病にかかってしまわれたんだ! 」
「えっ!!! 」
ランスロの目の前が突然暗くなった。
彼は落馬して意識を失った。
ランスロは馬を走らせ王都イスタンに向かっていた。
順調に行程は進み、午後には王都に通じる大街道に出ることができた。
「後はこの街道をひたすら前に進むだけ、休まず行こう。」
彼はしばらく馬を進めて王都まであとわずかな距離まで進んだ時、反対側からかなりの速さで走ってくる早馬があった。
(人にぶつかるとあぶないなあ。なぜ、そんなに急ぐのだろう。)
その早馬はだんだん彼との距離が近づくと、なぜか馬の速さをゆるめ始めた。
馬の乗り手がランスロを見て、とても驚いて大きな声をあげた。
「ランスロ!!! 」
彼は違和感に気がついた。
「フィリップ!!! また………………」
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる