私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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57 竜人

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 王宮の謁見の場で、騎士ランスロはヘンリー国王とグネビア王女に対面していた。

「陛下。王女様。こうしてお目にかかるのが遅くなり、申し訳ありませんでした。」



「よいよい。ランスロも大変だっただろう。」

「聞いたのですが、私と同じように悪夢を操る魔族と戦っていたのですね。」



「はい。最後はとても危ないところでしたが、フィリップが助けてくれました。」

 彼は王座の横に起立している近衛騎士のフィリップの方を見た。



「ところで、トランスファー地方の状況はどうか教えてくれないか。」

「はい。時々魔界との連結空間が開き、単発的に上級魔族の侵攻がありますが今のところは問題ありません。人間界への大侵攻の兆候はありません。」



 グネビア王女が聞いた。



「魔界からの大侵攻があるとすると、それを指揮するのは魔王ゲールでしょうか。ロスチャイルド王家の当主。人間界にいた時にはわずかな期間で、世界一の大金持ちになったほどの知恵者です。何をしてくるか十分に注意しなければなりませんね。」



「そうですね。そう考えるのが普通かと思います。」

(ほんとうはザラさんが魔王となり大侵攻を指揮する宿命になっている。なぜか僕と婚約してことになっていて、僕が同意しなければ大侵攻が開始されないはず。)







 トランスファー城の城門の前で、1人の騎士が馬上にたたずんでいた。

 その騎士は黄色をベースにして、さまざな色を使った多色の甲冑を着ていた。

 騎士は人間の声とは思えないくらい、大きな声で城に向かって叫んだ。



「大変失礼する。私はま―違った―ブラック王国の近衛騎士ドランと申します。この城にいる騎士ランスロ殿、私の国にもその名が鳴り響いている勇者の候補とお会いしたいのですが、お取り次ぎ願いたい。」



 城門の監視塔の上にいた兵士は、耳を押さえながら上司の騎士にたずねた。

「どうしましょうか。ブラック王国という国の名前は聞いたことがありませんが、おそらくゴード王国から遠い国なのでしょう。」



「なんて大きな声なんだ。伝説の竜が吠えているような感じだ。今、騎士ランスロは王宮にいて国王陛下と王女様に謁見しているはずだ。それだけ教えてあげよう。他国の近衛騎士に無礼があってはいけない。私が門の外に出て応答しよう。」



 騎士は城門の外に出てドランに告げた。

「ブラック王国の近衛騎士ドラン殿。遠路お越し頂きありがとうございます。あいにく、騎士ランスロは王都イステンに出かけ、国王陛下と王女様と謁見しております。」



「教えていただきありがとうございます。ところで、ここから王都イスタンは、どちらの方角でしょうか。」



「北の方角でございます。」

 騎士は北の方向を指さした。



「感謝致します。騎士殿、あぶないですから城門の中のお戻りください。さあさあ。」

 意味がわからなかったが、ドランにせかされるままに騎士は城門の中に戻った。



 突然、ものすごい突風が吹いた。

 トランスファー城全体がガタガタと揺れ、しばらくするとおさまった。

 騎士がもう一度門の外に出て確かめた。



「ドラン殿。なにが――――」

 ドランは馬ごといなくなっていた。



 竜人ドランは人間の姿のまま、背中から翼をはやし空を飛んでいた。

 城からあっという間に離れていった。







 王宮では謁見が終わり、グネビア王女がランスロの見送りに貴賓用出入口にいた。

 彼はもう一泊して、明日は王宮のそばにある劇場で歌劇を見ることになっていた。



「ではランスロ。明日はマリさん達の歌劇を一緒に見ましょう。連日超満員で席が取りづらかったのですよ。王女の私といっても、少しも優遇してくれませんでした。」



「王女様。まさか明日の席はどうなっているのでしょうか。場合によっては、遠く離れた席ということもあり得ますか。」

 ランスロの問いかけに、王女の後ろに控えていた侍女が答えた。



「ランスロさん。少しも心配ありません。調度見やすい真ん中に隣り合った2つの席がとれました。」

 植物系魔族のマリだった。

 今日は王女の警護役をしていたのだった。



「マリさん。いじわるですね。調度見やすい真ん中に隣り合った2つの席がとれたことを、私は今知りました。」

「王女様。申し訳ありません。ちょっとしたサプライズです。」



 その時だった。

 貴賓用出入口に強い風が吹いてきた。

 ランスロとマリは王女を守るように身構えた。



 マリが言った。

「来ます。かなり高位の上級魔族です。」



 上級魔族が高い空からものすごいスピードで一直線に降り立った。

 ランスロはその軌道をしっかり見ていた。

「背中には竜の翼が生えていた。それで落下をコントロールし、着地する瞬間にしまった。」



 ランスロと同じくらいの長身で、細い目だが眼光が鋭く長い髪を後ろに縛っていた人間の男だった。

「あなたが、その名高き勇者の候補ランスロ殿か。私は――」

 マリが言った。

「魔界序列第3位竜人ドラン。」

「マリさんですか。植物系魔族が魔界を抜けて人間界に移住したことを聞き、心の底から心配していました。美しさは変わらず元気そうですね。安心しましたので帰ります――――あっ違った! 」



 ドランはランスロを直視した後、続けた。



「ランスロ殿は、次期魔王、全ての世界に並ぶ者なき完璧に美しいザラ様の婚約者ですね。しかし、魔界にまで伝わってきた話だと、人間界の王女の婚約者でもあるということですね。未来に王族になれるということに目がくらんだのですか! 」



「私がその人間界の王女です。」

 グネビア王女が前に出て、竜人ドランにおじぎした。



「……………………」

 今まで見たことのない王女の美しさに、ドランはその場で固まっていた。
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