私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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60 勇者の剣と魔王の剣

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 ランスロはほとんど休暇をとらなかったが、ホーク司令官の命令で1日休んでいた。

 訓練場で剣技の鍛錬をした後、やることがなく手持ち無沙汰になって、城の高層にある自分の部屋の窓からボーッと遠くまで続く緑の森林を眺めていた。



 すると、急に遠くの空に黒い穴が開き、そこからすごい速さで飛んでくるものがあった。

「あれは魔界との連結空間、そこからかなり強い力を持つ魔族がこの城に向かって飛んで来る。」



 彼は急いで剣をとろうとしたが、ゾイゼンの剣の刃先がボロボロになっていることに気がつき、仕方がなく普通の剣を腰に差した。

 その魔族はものすごい速さでトランスファー城に近づき、ランスロ部屋の窓の前の空中で止った。



「竜人ドラン様! 」

 王都イスタン近郊の草原で戦ったのは約3か月ほど前だった。



「勇者の候補ランスロ殿、元気にしていましたか。」

「元気にしていました。」

「それなら、よかった。今日は魔王ゲール様からの重要な手紙を持ってきました。」

「空中を飛んでいたままでは申し訳ありません。どうぞ中にお入りください。」



 ドランは窓からランスロの部屋に入った。

「騎士ランスロ、大丈夫ですか。」

 ドンドンドンドン



 城の監視塔で警戒に当たっていた兵士が、彼の部屋に何者かが空中から侵入したことに気がつき、急いで確認にやってきた。



「大丈夫です。知っている方が来ただけです。」

「えっ。騎士ランスロの知り合いは空から来るのですか。」

「はい。問題ありません。」



「勇者の候補ランスロ。すいません、緊急なことなので。これが魔王ゲール様の手紙です。読んでください。私も魔王様から説明を受けて内容を知っています。」

 ドランは彼に、「ゲール」のGで封がされた手紙を渡した。



 そこには、大変な内容が書かれていた。

 

 魔界で最高位の魔女サバトの秘術が成功して「魔王の剣」業火が覚醒したこと。

 業火は自己生成を始め、1000年魔王になるザラが意識を失ったこと。

 約3か月後にザラが覚醒した時には、人間界への侵攻を行う魔王になること。



「……ランスロ君、これは魔族の王家に引き継がれる宿命で仕方がないんだ。1000年ごとに王家に生まれ魔王になる者は、どんなに抵抗しても『魔王の剣』業火に心を支配され、人間界へ侵攻する。私もできる限りのことをして、大侵攻に加わる上級魔族を2人だけに減らした……」



 さらに、こう書き加えられていた。

「……ザラの覚醒と同時に私の命は絶える。幼い頃から君のことはよく知っているが、頼りになる立派な勇者になると確信している。だから幸せを願って、ザラの婚約者にしたんだ。勝手にやってしまったことだが許してください……



……『勇者の剣』希望で業火を打ち砕いてほしい。そうすればザラは解放され優しい女の子に戻る。最後に、グネビア王女と結婚するならザラは側室でもかまわない。――人間と魔族の未来に栄光を――」



 読んだ後、ランスロはとても険しい顔でだった。

 涙を必死にこらえていた。

 そしてドランに告げた。

「魔王ゲール様にお伝えください。『お任せください。絶対にやり遂げます。』と! 」

 ドランは何もいわず、だまって一礼して窓から去った。







 ゴード王国最高の鍛冶師の集団、ゾイゼンの一族本家のコンラートは、もう2か月ほとんど眠らないで工房の中に滞在して



 勇者の候補であるランスロに自分が打って贈った剣が、上級魔族との戦いで刃先がボロボロになってしまったことをグネビア王女から聞いたからだった。

 コンラートはとても後悔していた。



(もう少ししっかりした剣を贈るべきだった。今度の戦いもぎりぎりで剣が保ったが、それ以上の戦いが起きた時、剣が使い物にならなくなってしまうのでは、勇者としての責任が果たせなくなってしまう。)



 コンラートは最高に神経を研ぎ澄まして何回も剣を打った。

 しかし、材料となる鉄がそれに耐えられなかった。

 最高級の堅さと純度、勇者の神聖の力をしっかりと帯びることができる組織にはならなかった。



 今度も失敗で、バラバラのかたまりに分解してしまった鉄の残骸を見ていた。

 失望と疲労で頭の中がふらふらしていた。

 すると、彼を補佐している職人の声で我に返った。



「ぼっちゃん。お客さんです。背がとても高い騎士様ですが。」

「騎士ランスロですか。」

「いや違います。私はランスロさんを見たことがありますが、違う騎士です。」

「お会いします。ここは熱すぎるから僕が外に出ます。」



「いや無用です。もうここに入ってしまいました。」

 長身で、細い目だが眼光が鋭く長い髪を後ろに縛っていた人間の騎士だった。

 コンラートはひと目でかなり強い騎士だとわかった。



「ほんとうに申し訳ありません。僕は今、一番尊敬する騎士のためにこの世に二つとない剣を打つことに取りかかっているのです。それは大変難しく、後どのくらいの期間がかかるのか全く見当もつきません。ですから、他の騎士様のために剣を打つ時間がありません。」



「ほう――――あなたは一番尊敬する騎士のために剣を打っているのですか。それでは、私が一番尊敬する騎士のために採ってきたこの鉄を使っていただけませんか。詳しくはいえませんが、これはこの星の地中にできる限り深く潜り採取してきた鉄です。」



 既に最高の鍛冶師になっているコンラートはその鉄を見て、すぐに極めて純度が高く良い物だと直感した。



「あなたが一番尊敬される騎士と、私が一番尊敬する騎士は違うのです。見ず知らずの騎士が使う剣に使って良いのですか。」



「問題ありません。この世界で、人から一番の尊敬を勝ち取れる人間は滅多にいません。たぶん、同一の騎士ですから。」

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