私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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68 テイク・ラスト・ワンチャンス3

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「王女様、どうして司令官室にいらっしゃるのですか。」
「ホーク司令官から、話したいことがあると……」
「僕も同じことを言われたのですが……」
「まあ、司令官が来るまで待ちましょう。調子はどうですか。」
「問題ありません。」

「魔族の大侵攻まで、どのくらいの期間があるのでしょう。
「後、2~3週間くらいでしょうか。国家魔法師達がここ人間界と魔界との空間の状況を監視しています。さすがに大きな連結空間を魔界側から作るためには時間がかかるそうです。」

「ザラさんは、ほんとうに1000年魔王になってしまったのですね。」
「『魔王の剣』業火が覚醒して、その影響を受けるのは仕方がありません。」
「あなたは、彼女と戦い、業火を折らなければならないのですね。」

「はい。ぎりぎりの戦いの中で、彼女が振るう剣を折ることを目的にするのは、大変困難だと思います。でも僕は必ずやり遂げてみせます。王女様――良いこともあったのですよ。ゾイゼン一族のコンラート君が打ってくれた剣が業火の熱を受けて冷やされた時、覚醒して『勇者の剣』希望になりました。」

「まあ。ほんとうによかったですね。あなたの進む道にはこれまでも今からも、とても少ないチャンスしかありません。過酷な運命しか待っていなくて、ほんとうにほんとうにごめんなさい。気休めにしかならないかもしれませんが、必ず道は開けるはずです。『幸運は勇者に味方する』のです。」

「僕の運命ですので、グネビア王女様の責任では決してありません。でも、ワンチャンあれば大丈夫です。全く問題ありません。」

「ほほほほほほほほ――」
 王女が突然笑い出したので、ランスロはとても驚いた。
「王女様、僕は不自然に楽観的すぎるでしょうか。」

「いえいえ、そういうことでおかしかったのではありません。正直言いますと、あなたの言ったことが私がいつも自分に言い聞かせているフレーズと全く同じだったのです。ほんとうは今とても厳しい情勢なのに、2人とも空元気を出すのがうまいですね。」

 ドアの前にはホーク司令官が部屋に帰ってきて、自分の不注意で、グネビア王女との約束とランスロとの約束をバッティングさせてしまったことに気づき、大変あせっていた。
 しかし、その後司令官は思い直し、そおっとドアから遠ざかった。

(わざとやったわけではないけれど、とても過酷な事態の中で、婚約者の2人が話すことができてほんとうによかった。もう少し2人が話す時間を作ってあげよう…………)



 トランスファー城の軍議、グネビア王女と歌劇団の慰問が終わってから3週間が過ぎた。
 魔界と人間界との境がとても薄くなり、ほとんどつながりかけている場所を、ゴード王国の魔法師達が既に特定していた。

 その場所は城の近く、王都イスタンにつながる街道が始まる平原の中にあった。
 その日の正午、最後の壁は崩れ、魔界と人間界との大きな連結空間が開いた。

 そこから、魔族の大侵攻の先方を任せられている上級魔族序列第5位の獣人レオとその眷属けんぞく達10万が現れた。

 獣人達は自分達の勝利を確信したこのように、一斉に咆哮ほうこうした。
 たくさんの鳴き声はハーモニーのようになって、離れた場所にある王都イスタンの住民達にも聞こえて恐怖を増長させた。

 彼らが連結空間から出て人間界に踏み出すと、その抑撃のためそこにいたのは、竜人ドランと騎士長ボーンだけだった。

 それを見た獣人レオは大変腹を立てた。
「俺と俺の軍団を待っていたのは、たった2人の戦士か! ドランの実力は知っているが、それにしても獣人10万にもう一人の人間だけか。」

 剣術を極め、今や人類史上最強といわれているゴード王国騎士長ボーンは中肉中背だったが、体中に鍛え込んだ筋肉をまとっていた。
 そして、レオと対照的に極めて穏やかで冷静な表情をしていた。

 ボーンは一言だけ口を開いた。
「獣人の頭目様、冷静に考えて自分の一族を減らさないでください。」
 しかし、その言葉はレオを冷静にさせるどころか、さらに激怒させた。

「生意気な人間ごときめ、俺が直々手をくだすまでもない。やれ! 」
 獣人レオは自分の眷属けんぞく達に命令した。
 すると、獣人達が一斉にボーンに襲いかかった。

 しかし、ボーンの動体視力は獣人達が自分に向かって動いてくる軌跡を全て把握し、その少し未来までも見えるくらいだった。
 ボーンは、できる限り体力を消耗しないように動き剣を振った。

 あっという間に、そこに獣人達の死体の高い山ができ、獣人達に恐怖が広がりおびえていた。
 獣人達はその場で立ち止まり、動けなくなっていた。
「獣人の頭目様、もう1万くらいの命を奪ってしまった。これ以上無益な戦いは止めてくれませんか。」

「人間ごときが私に指図するな。俺の眷属達よ、自分の命を捨てても戦え! 」
 レオのその言葉を聞いて、穏やかなボーンの顔が怒りの顔に変わった。
 そして、その場で立ち止まっている獣人達に向かって大きな声で叫んだ。

「争いをこのまず、人間と平和に暮らせるものは、命を捨てても私と戦えという命令を無視しなさい! そして、人間の味方になりなさい! 」

 獣人達は即座に動き出し、ボーンの前に整然と並んでひざまづいた。
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