結婚式から異世界転生~運命に抗う

ゆきちゃん

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5 大魔法師の弟子の闇落ち

30 第3の魔女

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聖剣の刃やいばが作った黄金の光りが消えて後、底には誰もいなかった。



「失敗してしまった―― 」



 騎士カイロスが絶望的な声で言った。



「いや違います。」

「大丈夫ですよ。」

 ソーニャ王女と大魔法師マーリンが同時に言った。



 すると、不思議な事が起きた。



 第4の魔女マリがいた空間の1点が白銀に輝いた。



 次の瞬間、白銀の粒子はみるみるうちに拡大し人間の姿になった。



 白魔女として生まれ変わったマリがそこにいた。



 ザラはにこにこして微笑んでいた。



「ありがとうございました。生まれ変わることができました」



 大魔法師マーリンが言った。



「なんという高い魔力量だ。私はこれですぐに引退できるな。人々を守るサイドに、こんなに強い白魔女が誕生したからな」



「お師匠様。それはだめですよ。この世界にはまだまだ暗闇の力の方が強いのです。お師匠様に人々を守るサイトの総指揮をしていただかなくてはなりません。」



「そうか。うれしいことをいうもんだな。師匠冥利ししょうみょうりに尽きるもんだ」



 そのときだった。



 4人がいた上空に数個の暗闇の空間が開き、そこから魔弾が撃たれた。



 目標は大魔法師マーリンだった。



 マーリンはすぐに、魔法の杖を振り魔弾を途中で爆発させた。



「マーリン様。自己満足は早い。満足は私が絶対させない!! 」



 厳しい声が響いた。



 大魔法師マーリンにはわかった。



「ランダか。どこにいるのだ? 」



「すぐそばにいます」



 すると、4人がいる上空の1人の魔女が現われた。



 その魔女は赤を基調の原色の派手な魔女装束、勇ましいキリッとしたメイクをしていた。



「マリ。なんで、そこで白魔女になってしまうの。これまで、いつも一緒に行動したじゃない。でも、今度は特別ね。あなたの全くの単独行動だわ。」



 マリが言った。



「ランダ。これまでいつも私の味方をして応援してくれたことには感謝しているわ。でも、私はほんとう気が付いたの。魔法の構築は人々の幸せのためにしなくては。だから白魔女になるべきだったわ。」



「そう。御立派な考えね。私にはその道を進むことができない事情があるから、残念だけど、これでさよならね。お願いだからロメル王国にかけた私の呪いの発動を止めようとすることだけは止めて。」



「なんなの、その事情って? 」



「そこに、その当事者がいるわ。その当事者に聞いて。」



「えっ! まさか! 」



「そうよ。長いあご髭がとても似合う方よ。年をとればとるほど枯れた魅力が増したのね。今日のところはこれで消えるわ。なお、私の呪いは絶対に防ぐことができませんから。」







「大魔法師マーリン様。教えてください。今の魔女が第3の魔女ランダなのですね。教えてください、『事情』とはどんなことなんでしょうか? 」



 ソーニャ王女が聞いた。



「彼女の魔法は速射、瞬発力があります。それに誰も予期しない独特の魔法を造り上げます。」



「マーリン様。大変貴重な情報ですが、その前に教えてください。『事情』とはなんですか。マリさんは何か御存知ですか。」



「確か以前、『私はお師匠様が大好き』と言っていたことがありました。」



「えっえっ 」



 ソーニャ王女は絶句した。



 騎士カイロスが続けて言った。



「まさかですが、大魔法師様、何か彼女との間で‥‥ 」



「師匠と弟子との間でできるだけ親近感をもてるように、冗談を言い合いました。」



「それだけですか。どんな冗談を? 」



「ランダが『お嫁さんにしてください』と言ってくるので、いつもすぐ『それは無理』と応えました。」



「え――――っ それは何回くらいですか? 」



「そうですね。10回、あるかないかくらいです」



 その後、大魔法師マーリンを除く他の人々は押し黙ってしまった。



 ‥‥‥‥



 沈黙が続いた後、騎士カイロスが話し始めた。



「今の事を深く掘り下げるのは、また後にしませんか。それよりも、第3の魔女ランダによってかけられた11番目の呪いについて考えませんか」



「そうですね。そうするのが良さそうですね。」



 ソーニャ王女も同意した。



「呪いを構築するのは、やはり心属性の魔法なんでしょうか」



「親族性系の魔法は厄介です。火山の噴火のような事象系の魔法ならば、なんとかなるのですが」



「皆目見当がつきません。やはり、第3の魔女の出方待ちですね」







 第3の魔女ランダの呪いはやがて、静かに発動した。



 ロメル王国のある村に、深く愛し合っている恋人がいた。



 それは、アイリスとウォーレン。



 さまざまな障害を乗り越え、2人は結婚しようとする手前まで愛を高めていた。



 今日も村のはずれで木を切り働いたウォーンは、森の中でアイリスと待ち合わせていた。



 ウォーレンには楽しみがあった。



 あまりうれしすぎて、ついひとり言が出た。



「やっとここまで、もう完成する。これを見てもらって、その後で僕の人生最大の告白をする。彼女に結婚を申し込むんだ」



 丸太を組み合わせて造るウッドハウスは、もう完成間際だった。



「これだったら広く頑丈。子供が何人できても部屋があるし、アイリスが大好きな料理の腕を存分にふるうことができるよう台所も広くとり動きやすくしたんだ」



 アイリスに見せるまで誰かに見られては困った。



 それで、村長に頼み込み嘘うその立ち入り禁止区域としてもらっていた。







 ウォーレンはウッドデッキから少し離れた場所で待っていた。



 しばらく待っていると、道の向こうにアイリスの姿が見えた。



 それぞれの道の途中に目印の黄色いリボンを結び、アイリスを誘導したのだ。



 ウォーレンの姿を見つけると、アイリスの顔は輝き、こちらに向かって走り始めた。



 最後にアイリスはウォーレンに抱きついた。



「アイリス、アイリス、今日はきみに見せたいものがあるんだ。」



「何?? 」



「後について来て。」



 ウォーレンはアイリスを案内して少し歩いた。



 やがて、ウッドデッキの前に出た。



「何、何‥‥‥‥ これは、誰のもの?? 」



 応えはだいたい決まっていたが、幸せに満ちあふれた質問だった。



「建物はそれを造った人のものになります。それと、その家族、奥さんとか妻のもになります。この作者はもちろん僕、そして―― 」



「さわっていいですか? 」



「はい。もちろんです」



 その後、アイリスはワクワクしながらウッドハウスの扉をつかんだ。







 その瞬間、第3の魔女ランダの呪いが発動した。



 愛と喜びに満ちあふれていた彼女の心は暗闇に反転した。



 それとともに、明るく輝いていた彼女の眼差まなざしは、深く沈んだ。





 アイリスは扉から手を離し、回れ右をした。



 そして――



「何、この魔女の家のような無気味な家、帰るわ。」



 アイリスはウォーレンの方を少しも見ず、去って行った。


 
 反転の呪いだった。

 
 

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