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濡れるレッスン⑨

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「衣湖さん、いかがですか?」
「ああっ、違う。前と違うっ」

 息絶え絶えになりながら、答えてくれた。

 オサムさんの腰使いは変化を見せる。浅めに小刻みなピストン。これも、僕のコピーだ。一度見ただけなのに、オサムさんは飲み込みが早い。

「あああっ」

 衣湖さんは彼にしがみついて、バナナを受け入れる。たぶん、先端のくびれがGスポットに引っかかって、刺激しているのだろう。彼女は快感に飲み込まれ、身体をよじっている。

「衣湖さん、気持ちいいんですね」

 慌しく頷いた。

「でしたら、オサムさんのバナナのこと、褒めてあげてください」

「……すごく、気持ちいい。……前の時と違って、今日は全然痛くない。……硬くて、逞しくて、……オサムくんの×××××、すごいっ。前と全然ちがうっ」

 オサムさんはつながったまま、衣湖さんを抱きしめる。

「ありがとう。衣湖さんがこんなに感じてくれて、とてもうれしいよ」

 そう耳元で囁くと、腰使いは熱を帯びていく。情熱的に、力強く。心と身体が通い合えば、アドバイスは必要ない。

 おそらく、二人はボタンを掛け違えただけにすぎない。互いに少し反省して、じっくり話し合って、もう一度試していれば、同じ結果になっていたように思う。

 オサムさんは衣湖さんの両脚を高々と上げると、力強く腰を打ち込み始めた。逞しいバナナのピストンを濡れたザクロが受け止めている。

 あとは、フィニッシュまで二人に任せればいい。
 僕はもう用済みだ。立ち上がろうとすると、衣湖さんの手が僕の手を握った。

「シュウくん、行かないで。私のこと、見ていて」せつなげな瞳で訴えてくる。

 オサムさんも腰を動かしながら、僕を見て言った。

「僕からもお願いします。そこにいてください」

 どうやら、フィニッシュまで見ていなければならないらしい。

「わかりました」

 僕は衣湖さんの手を握ったまま、二人のセックスを見守ることにした。

 二つの果実が奏でる湿った音。苦しげな息づかい。甘みを帯びた悲鳴。

 セックスは客観的に見ると、かなりカッコ悪い。ケダモノのように欲望を露にした行為だし、少なくとも他人に見せるべきものではない。

 文字通り、素っ裸なのだから、見せかけの飾りは取り払われ、その人間の本質がむきだしになる。ごまかしはきかない。

 でも、だからこそ、心身ともに結びつけば、快楽の相乗効果が生まれる。衣湖さんが僕の手を強く握ってくる。オサムさんの顔がセクシーに歪む。二人とも、エクスタシーが間近のようだ。

 一瞬も見逃さないように、僕は視線に力を込める。


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