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【龍馬カクテル】Ⅱ⑥
しおりを挟む今夜のカクテルは、【銀時計】の将来を占う試金石になる。桐野さんを選んだ私の眼が間違っていなかったかどうか、それが明らかになる。
手早く清掃をすませると、できたばかりの制服に着替えた。アイボリーホワイトのシャツと黒のミニスーツ。桐野さんの制服と御揃いだ。ふふ、「似合いますね」と言ってくれるかな。
17時ぴったりに、桐野さんが来た。【銀時計】のバーテンダーはいつも時間に正確だ。私は取って置きの笑顔で出迎える。
ただ、私の制服姿を見たのに、残念ながらリアクションはなし。まぁ元々、期待薄でしたけどね。
桐野さんは無言のまま、着替えに向かった。いつにも増して、引き締まった表情をしていた。もしかしたら、緊張しているのかもしれない。
旧知のリオナさんがお相手とはいえ、バーテンダーとお客様は一期一会。創作カクテルをお出しするのは、ある意味、カウンターを挟んだ真剣勝負なのだろう。
私は昨晩、新しい【龍馬カクテル】を味わった。
桐野さんが作るところを見ていたので、レシピはすべてわかっている。良い意味で、予想が裏切られた。このお酒とコーヒーは意外にも、とてもよく馴染んでいた。あらゆるお酒と飲料の組み合わせに黄金率があるのなら、桐野さんはそれを瞬時に割り出せる天才なのかもしれない。
いや、天才なんて俗っぽい言葉で片付けるのは失礼だろう。桐野さんは現状に妥協せず、さらに【龍馬カクテル】の完成度を高めるため、試行錯誤を重ねてきたはずだ。
19時15分、リオナさんが【銀時計】に来られた。
「今日も暑かったわね」
カウンター席の真ん中で、おしぼりで手をぬぐいながら、リオナさんは言った。
「昔から夏は苦手なのに、大きな仕事が入ると決まって、この季節なのよね」
「リオナさん、いよいよ映画の撮影が始まるみたいですね」
桐野さんが訊ねると、リオナさんは苦笑した。
「うん、明日クランクイン。一番暑い時に最悪よね。しかも初日から、蒸し風呂みたいな道場にこもって撮影よ」
おそらく、千葉道場のシーンなのだろう。リオナさんの役は、道場主,千葉定吉の娘,千葉さなである。
「小太刀の特訓の成果を見せないとね。ほら、まだ痛いけど、バンドエイドもとっちゃった。幕末にはありえないものだからね」
笑いながら、両手を広げる。血豆の痕が痛々しい。
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