銀座のカクテルは秘め恋の味

坂本 光陽

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GカクテルⅢ⑩

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「不死身の怪獣を倒すにはリアリティのある作戦だ。ゴジラ映画シリーズには、氷詰めにされる展開は結構あったな」

「国内版最終作『ゴジラファイナルウォーズ』の冒頭も、そうでしたね。ゴジラは南極のクレパスに落とされて、氷の中に封印される」

「桐野さん、その通り」父さんが手を打って賛同する。「このカクテルは、まさにゴジラの封印ですよ」

 二人で盛り上がっている。私は小さく、溜め息を吐く。

「【Gカクテル】には二つの意味があると言ったよね。一つがジオラマ的仕掛けなら、もう一つの意味は何なの?」

「ミノリさん、メタファーってわかりますか?」

「メタファー? 比喩的表現ということですね」

「はい、隠喩とか暗喩とも訳されています。では、氷と雪に封じ込められたゴジラ。これは一体、何のメタファーだと思いますか?」

 ゴジラのメタファー? 絶対的な破壊王?
 いや、そうじゃない。【Gカクテル】のGとして考えないと……。

「雪村隆一郎から父さんへのメッセージということは、たぶん人の内面的なものですね。例えば、野心とか、衝動とか、根拠のない自信とか?」

 桐野さんは大きく頷いた。

「正解です。たぶん、ゴジラが象徴するものは誰もがここにもっています」そう言って、右手で自分の胸を押さえる。「今にも暴れ出しそうな怒り、苛立ち。不安や焦りも相まって、もろくて不安定な心理状態。特に、二十歳の頃は顕著でしょう」

「桐野さんの言う通りだ。僕が当時、内定した企業を蹴って、怪獣映画を作ると言い出したのも、それだろうな。毎日スーツを着てネクタイを締める暮らしが怖かったんだ。今思い返せば、現実逃避にすぎない。恥ずかしすぎる言い訳だ」

 父さんは本心を語っていた。

「わかるか、ミノリ。これはやっぱり、親父,雪村隆一郎の説教だよ。大した覚悟もないなら、夢を目指すのはやめろ、一時的な衝動など氷の中に封じ込めろ、というわけだな」

 タンブラーの【Gカクテル】を掲げた。

「ゴジラの氷詰めが、そのまま親父の説教というわけだ。カクテルにメッセージを込める、そんなまわりくどいやり方も含めて、すべてが親父らしい」

 父さんは苦笑しながら、カクテルを見つめる。

「説教カクテルか。30年以上前のメッセージ、今しっかり受け取ったよ」

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