クリスマス・デス ~25歳で死ぬ病~

坂本 光陽

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三つのルール②

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 マキナは笑顔を浮かべていた。余裕たっぷりの表情であり、後ろめたさは少しも感じられない。そんな彼女の視線を受けて、恭介はたじろいでしまう。

「あの、勝手に入ってきて、申し訳ありません」

「気にしないで構いません。私はあなたたちの担当窓口であるわけだし」悪戯っぽく肩をすくめると、「そろそろ、連絡が入るかもって思っていたのよ。まさか、直接乗り込んでくるとは思わなかったけどね。とにかく、中に入りましょうか」

 会議室の中は、説明会の時のままである。二人は向かい合う形で、それぞれパイプ椅子に腰を下ろした。

「それで、何の御用かしら」
 恭介は覚悟を決めて、
「同じバイトの二人が殺されました」

 マキナの表情には変化はない。恭介は続けた。
「船木さんと堀部さんです。昨日ここで一緒に説明会を受けた二人ですよ」

 それでも、マキナの表情は変わらない。それどころか、口元に笑みを浮かべている。
「うん、よく覚えている。悪ガキをそのまま大きくしたような二人だったわね」

 確かにその通りだが、マキナのリアクションはおかしい。
「単刀直入に訊きます。二人の死と僕たちのバイトには、何か関係あるんですか?」

 マキナは両手を広げて、間をとってから、
「もちろん、関係あるわよ。私があれほど言ったのに。二人はルールを破って、区外に出たんだもの」

 あっさり認めた。区外に出た? 確かに、赤京区から出ないように言われていたが。

「あの、ルールを破っただけで……、たった、それだけで、二人は死んだんですか?」

 マキナは腕組みをして苦笑していた。
「ええ、死んだ。正確に言えば、殺した。私が直接、手を下したわけじゃないけれど」
「それって社会的に抹殺したとか、比喩的な意味じゃないですよね?」

 マキナはケラケラ笑った。
「君、面白いこというね。天然くんだったんだ」

「区外に出たのは確かなんですか?」
「もちろん、間違いない。居酒屋を出た後、風俗に行く話になったんでしょ? 風俗街・吉原があるのは、隣の台東区だからね。赤京区内なら無事だったのに」

「どうして、それを? 僕たちを尾行したんですか?」
 マキナは首を横に振る。
「尾行なんかしなくても、君たちの行動はすべて把握しているの。他にも、歩き煙草をした者、秘密保持を破った者。八人中四人がルール違反を犯した。まさか初日で、半数が脱落とはね」

 恭介は驚愕した。船木と堀部だけじゃない。他にも二人殺されている?
「ルールを破っただけで、殺したんですか? 信じられない。どうかしている」

 誰が殺されたんだろう。まさか、深原詩織さん? 思わず、怒りが爆発した。
「こ、殺すことないでしょ!」

「違反したら即死刑なの。私たちのルールは、法律より重いのよ」
 マキナは冷ややかに言い放った。この女は頭がおかしい。どう考えても、まともじゃない。

「君の口座には、今日は10万円が振り込まれているはずよ。めいっぱい人生を楽しみなさい。死の間際までね」
 そう言って、マキナは笑った。なぜ、こんな時に笑えるのか、恭介には理解できない。

「……失礼します」

 恭介は会議室を走り出た。暗い階段を一気に駆け下りる。どうする。どうすればいい。真壁マキナは、殺人への関与を認めたのだ。今すぐ警察に届けるべきだろう。手元には、刑事からもらった名刺がある。すぐに通報してやる。

 いや、まず、深原さんの無事を確認すべきだ。ビルを出るなり、スマホを取り出した。彼女のメモリーを呼び出して、電話をかけてみる。

 しかし、いくら待っても、深原さんは出ない。

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