夢みる乙女の5K仕事  ~ミルコのテレビ日記~

坂本 光陽

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イカピラフくん探し①

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 カバさんによると、男装の麗人れいじんに扮した金髪中年女性は「借金まみれのブランドマニア」であり、首から下はモビルスーツの着ぐるみというメガネ青年は「少女マンガの付録を探して全国行脚をしている奴」であり、カバさん自身も「世界中の空き缶を集めるために脱サラの上に放浪。帰国したら妻子が消えていた」という。

 缶男、最高! 犬も歩けば棒にあたる。ミルコも歩けば缶男を見つける。
 この時、私の目は間違いなく、キラリと光っていたはずだ。

「二宮さん、ぜひ番組に出て下さい!」
「いやぁ、ただじゃ駄目だよ」と、つれない返事。
「なるほど、ただテレビの予算って意外と少なくて。あ、ノベルティグッズなら好きなだけ提供しますよ」

 ノベルティグッズとは、ボールペンとかステッカーの類だ。番組名入りのグッズは、人気の当たり外れが大きくて、大量の在庫を抱えてしまうこともしばしば。倉庫代もバカにならない。ものによっては、段ボール一箱分でもOKのはずだ。
 でも、カバさんの求めていたものは一味違った。

「おカネでもノベルティでもなくて、リサーチャーの能力で応えてくれないかな」
と、一枚の写真を目の前に滑らせる。写真にうつっているのは、平べったい空き缶だ。ところどころにさびが浮いて、楕円型の蓋には真っ赤なイカのキャラクターが印刷されている。

「イカピラフくんの缶詰だ」
 イカのピラフの缶詰に、そのままのネーミングである。
「こいつを探し出してくれないか。プロの腕前を発揮してさ」
 カバさんはニヤリと笑った。これが、番組出演の交換条件だった。


 翌日から早速、イカピラフくん捜索に取り組んだ。缶の錆具合で嫌な予感がしていたが、やっぱり的中した。とんでもなく古い代物だったのだ。製造元に問い合わせてみても、
「ああ、その缶詰は昭和48年のみの都内限定販売ですよ。えっ、在庫? とっくの昔に賞味期限切れなのに、そんなもの残っているわけがないでしょう」

 担当者は嘲るような口調で、何度も同じ問い合わせを受けているとこぼした。言うまでもない。そんな電話をかけてくるのは、全国各地の空き缶マニアたちだ。
 そう、イカピラフくんとは、マニア垂涎のブツであり、幻の缶といっても過言ではない。
 ネット情報によると、全国に現存しているのは、十数個のみ。所持している方は、もちろん二宮さんの同類だ。空き缶マニアたちが貴重なコレクションを手放すはずがない。

 私はどこに当たればいいのか、たちまち行き詰ってしまった。
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