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プロローグ
しおりを挟む鬱蒼とした森のつくりだす漆黒の闇は深く、真夏だというのに、身体の芯に震えがくるほど冷え込んでいた。
運命の一夜、犬飼理市は全裸で横たわっていた。ヤクザどもの壮絶なリンチを受けたために、身体じゅう血まみれである。大腿骨を含め全身の骨を砕かれた姿は、まるで壊れた人形のようだった。
山間の道路から谷底に放り投げられ、数十メートルも落下したのだから、まだ生きているのは奇跡のようなものだ。
正確に言えば、理市の心臓は一度停止した。それでも息を吹き返したのは、おそらく生への執着が強靭だったせいだろう。その執念深さは、復讐心の強さと言い換えてもよかった。
理市は心の底から願ったのだ。命よりも大切なものを奪った奴らは絶対に許さない。たとえ死んだとしても必ず復讐してやる。
もしかしたら、その願いが天に届いたのかもしれない。いつのまにか、理市の前に、圧倒的な存在感をもつ何かがいたからだ。小山のような巨大熊か、太古の恐竜か。
いや、そうではない。現世では考えられないほど異質なものである。言ってみれば、神や悪魔と近しいのかもしれない。外見を正確に描写すれば、〈数多の目をもった黒い小山〉になる。明らかに、この世のものではない。
できるだけ正確に描写すれば、異世界の化け物か、妖怪の親玉だろう。
ただ、〈黒い小山〉の頂には、不似合いなものが認められる。何と、一糸まとわぬ美少女である。羽根こそなかったが、ゆっくりと舞い降りてくる姿は、まるで天使のように光り輝いていた。
天使が悪魔や化け物だって構わない。頼む、俺の命を助けてくれ。そう理市は強く願った。〈ささやかな幸せ〉を奪った奴らに復讐を果たせるなら、魂だって何だってくれてやる。
理市の願いは叶えられた。だが、その後に訪れる悲惨で残酷な運命を知っていれば、もしかしたら、安らかな死を望んでいたかもしれない。
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