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王様の失墜④
しおりを挟むSNSを見ると、速水誠が任意で警視庁の事情聴取に応じたとか、被害者男子に数百万の賠償金を支払う見込みとか、無責任な情報が目に付く。
被害者男子の正体を突き止めた者はいない。私は完全に、蚊帳の外だった。だけど、このままで済むはずがない。心のどこかで、そう確信していた。
そして、その電話を着信したのだ。もしかすると私は、それを待っていたのかもしれない。
「鮎川、おまえだったのか?」王様の質問は、単刀直入だった。
「……」とりあえず、言葉の続きを待つために沈黙した。
「おかげで俺は破滅だ。おまえをぶっ殺してやりたいよ」
「……どうしたんですか? 速水さん、大丈夫ですか?」
「……」
「がんばってください。何があっても、私は速水さんの味方です。いつまでも応援していますから」
皮肉たっぷりに伝えると、あの王様が絶句していた。そして、唐突に電話は切れた。
速水さんが自宅マンションから飛び降りたのは、その直後だったらしい。50mを超える落下運動は、スーパーアイドルの全身を粉々にした。
走り書きの遺書が後に、マスコミを通じて公開された。
「僕は無実です。どうか信じてください。これまで支えてくれたファンの皆さん、こういう結果になって申し訳ありません」
自殺に見せかけた殺人というバカげた噂も流れたが、遺書の筆跡鑑定の結果、書いたのは本人だと証明されている。
速水誠のファンの中には、彼の冤罪を信じている者がいる。この遺書は、そうした想いを裏切らないことに腐心したのだろうか。
バカげている。
これは、スーパーアイドルの見栄だ。
みっともない格好つけ。嘘っぱちの自己正当化。バラ色の未来を失った以上、恥をさらして生きるより、ここで終わりにする方がベターな選択だと判断したのだろう。
速水さんらしい、自己中心的で、我が儘で、空っぽな男にふさわしい最期だ。
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