純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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「もちろんよ。駿介は私の大事な家族だから」
「うん、なら、問題はないと思うよ」

 いや、問題はある。とても大きな問題が、僕の前に立ちはだかっていた。
 こんなのは想定外だ。まさか、こんなことになるなんて、たった今まで思いもしていなかった。
 魅子さんは、ずっと顔を伏せていた。エリさんは右手で、魅子さんの膝に触れている。問いたださずにはいられなかった。

「あの……、二人は、そういう関係なの?」

 エリさんはゆっくり頷いた。魅子さんはうつむいたまま、エリさんの手に手を重ねた。僕と目を合わせずに、恋人にもたれた。エリさんは言う。

「いきなり驚かせてごめんなさい。いつかは話さないと思いながら、今日まできちゃった。でも、駿介も20歳だし、理解してもらえるよね」

 混乱した頭で弾き出した一つの答え。
 どうやら、僕は失恋をしたらしい。しかも、母親が恋敵こいがたきだとは……。
 これは、笑うに笑えない。

「駿介、私たちのこと、撮られちゃったの」
「え、何? 撮られたって、何を?」
「ほら、パパラッチとかいうやつ」
「ええっ、写真週刊誌?」

「先月、Yホテルで缶詰めをしたじゃない。あの時、バーラウンジで……、脱稿後の解放感があったし、カクテルの酔いも手伝って……」

 エリさんによると、大胆にもホテル・バーで、魅子さんとキスをしたらしい。その場に、たまたま性悪カメラマンが居合わせた。エリさんたちは、盗み撮りに全く気づかなかったという。

 そして、今日の話だ。

 エリさんは突然、写真週刊誌編集部から連絡を受けた。深水エリと担当編集者のキス写真と同性愛の事実を次号に掲載する、という事前通告だ。
 もみ消しは不可能だと言われた。まちがいなく、来週発売号に掲載される。

 マスコミは例によって、エリさんを追い回して、面白おかしく騒ぎ立てるのだろう。
 いや、そもそも、「深水エリ=同性愛者」に、ニュースバリューがあるのだろうか?

 僕にはわからない。想像もつかない。性的マイノリティに対するデリケートな問題だ。無茶な取材攻勢はないかもしれない。僕はマスコミの良識を信じたかった。
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