36 / 110
奇跡を見る、その13~動き出す“世界”~
しおりを挟む
「おい!あいつの様子がおかしいぞ!」
「あぁ、さっきから何か苦しそうな様子だ。もしかすると着地でどこか捻ったか?」
「くそ、あとちょっとなのに!」
「いや、待て。そうじゃない胸を押さえている。何か体に異常が起きているようだ」
「なあ?俺の気のせいか?あいつの体が淡く光っているように見えるんだが…」
「いや、気のせいじゃねえよ、俺にもそう見える」
中央冒険者組合本部では彼の異変に気付いた人々の間で様々な憶測が飛んだ。しかし、彼が何かを叫んだ瞬間、全員の目が眩む程の激しい光が膨張した。
「くそ、一体あそこでは何が起きているんだ?!」
光は一瞬、ドーム状の形となり、そしてパリンっと割れた。
次の瞬間には恐ろしいほどの爆風が辺り一面を吹き飛ばす。
映像を見ていた全員が呆気にとられた。
「おいおいおい、今のは何だ?これまでの爆発とは比べ物にならねぇぞ!」
「そんな事より、彼は無事か?!」
「あ、あぁ無事だ…。いや、無事…なのか?何だかしらねぇが、酷く苦しそうに頭を抱えているぞ?」
彼を見守る観衆が、ゴクリと唾を飲む。
誰もが心配そうに固唾を飲んで彼を見つめていた。
そして酷く長く感じる空白の時間を人々はジッと見守っていた。だが実際にはほんの数十秒といったところだったであろう。その数瞬の間を置いて、彼は大きな声で名乗りを上げた。
「俺の名は田中彼方!地球から、次元を超え、時間をも超えてやって来た!勇者を救う者!」
彼がそう言った瞬間、割れるように砕けた光の渦が再び収束する。
今まで薄ぼんやりとしていた光は彼の元へと戻り、今やハッキリと彼を虹色の光で包み込んでいた。
観衆は理解した。彼こそが勇者を救う為に使わされた者であると。
「おい、今の名乗りを聞いたか?」
「あぁ、タナカカナタと言った、勇者を救う使者だと言ったぜ!みんなも聞いたか?タナカカナタ!くそ、これじゃ言い難いな!カナタだ!みんな彼の名を世界中に告げろ!彼の名はカナタだ!」
「おう!カナタ!勇者を救う使者!」
「あぁ、カナタだ!カナタ!」
世界中の人々が、彼の名を呼んだ。
世界が彼の名を呼んだ。
"世界"は認めた。彼の名を、彼の存在を、彼の生き様を。
もう"彼を修正"する事は出来ない。世界は認めるざるを得なかった。
だが…彼が死ねば、修正は可能だ…。
彼がいなくなれば、世界は元の姿へと戻る…。
歓声に沸く人々の裏側で"世界"はゆっくりと動き始めた。
その事に気付いている者は誰一人としていなかった…。
「あぁ、さっきから何か苦しそうな様子だ。もしかすると着地でどこか捻ったか?」
「くそ、あとちょっとなのに!」
「いや、待て。そうじゃない胸を押さえている。何か体に異常が起きているようだ」
「なあ?俺の気のせいか?あいつの体が淡く光っているように見えるんだが…」
「いや、気のせいじゃねえよ、俺にもそう見える」
中央冒険者組合本部では彼の異変に気付いた人々の間で様々な憶測が飛んだ。しかし、彼が何かを叫んだ瞬間、全員の目が眩む程の激しい光が膨張した。
「くそ、一体あそこでは何が起きているんだ?!」
光は一瞬、ドーム状の形となり、そしてパリンっと割れた。
次の瞬間には恐ろしいほどの爆風が辺り一面を吹き飛ばす。
映像を見ていた全員が呆気にとられた。
「おいおいおい、今のは何だ?これまでの爆発とは比べ物にならねぇぞ!」
「そんな事より、彼は無事か?!」
「あ、あぁ無事だ…。いや、無事…なのか?何だかしらねぇが、酷く苦しそうに頭を抱えているぞ?」
彼を見守る観衆が、ゴクリと唾を飲む。
誰もが心配そうに固唾を飲んで彼を見つめていた。
そして酷く長く感じる空白の時間を人々はジッと見守っていた。だが実際にはほんの数十秒といったところだったであろう。その数瞬の間を置いて、彼は大きな声で名乗りを上げた。
「俺の名は田中彼方!地球から、次元を超え、時間をも超えてやって来た!勇者を救う者!」
彼がそう言った瞬間、割れるように砕けた光の渦が再び収束する。
今まで薄ぼんやりとしていた光は彼の元へと戻り、今やハッキリと彼を虹色の光で包み込んでいた。
観衆は理解した。彼こそが勇者を救う為に使わされた者であると。
「おい、今の名乗りを聞いたか?」
「あぁ、タナカカナタと言った、勇者を救う使者だと言ったぜ!みんなも聞いたか?タナカカナタ!くそ、これじゃ言い難いな!カナタだ!みんな彼の名を世界中に告げろ!彼の名はカナタだ!」
「おう!カナタ!勇者を救う使者!」
「あぁ、カナタだ!カナタ!」
世界中の人々が、彼の名を呼んだ。
世界が彼の名を呼んだ。
"世界"は認めた。彼の名を、彼の存在を、彼の生き様を。
もう"彼を修正"する事は出来ない。世界は認めるざるを得なかった。
だが…彼が死ねば、修正は可能だ…。
彼がいなくなれば、世界は元の姿へと戻る…。
歓声に沸く人々の裏側で"世界"はゆっくりと動き始めた。
その事に気付いている者は誰一人としていなかった…。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる