いきなり最終話(クライマックス)

アルファ・D・H・デルタ

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世界は彼に運命を託した

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ハイヴィジョンを視る者がテレヴィジョンを視る者が…世界中が大歓声を上げていた。




「すげえ、すげえよ!こいつ!辿り着いた!勇者まで辿り着きやがった!」




「こいつじゃねぇ!カナタと呼べ!虹色のヒーローカナタだ!」




「奇跡だ、奇跡が起きた」




世界中が喝采を上げる中、カナタと勇者カナはみるみるうちに魔物を屠る。




「さっきまでの苦戦が嘘みたいだぜ!勇者の動きも良くなってる!魔物の大軍がまるで溶けたバターみてぇに消えていくぜ!」




「なぁ?さっきから気になっていたんだが…この二人は知り合いなのか?」




「さあ?だが確かにさっきから親しそうに話しているな。動きも息ピッタリだ。まるでダンスのようじゃねぇか」




「おい、見ろ!遠征軍と別動隊もすぐ近くまで来ている。これは…」




「あぁ、勝てる。この戦い、人類の勝利だ!」




ワァー!っと歓声が上がった。




「見ろ!グラン指揮官だ!これであの二人も脱出できるぜ!」




「いや待て、何か様子がおかしい…」




その次の瞬間、カナタがグランの腕を切った。

世界に悲鳴が起きる。




「どうしたんだ?!何故味方を切る?!」




「戦いに疲れて、気が触れちまったか?!」







「いや、待てグラン指揮官はまだ奥にいる!あれは偽物だ!」




再び世界は歓声に沸く。




「なんでカナタは分かったんだ?」




「そんな事はどうでも良い!少し静かにしろ!グラン指揮官の偽物とカナタが何か話している!」







シーンと静まり返った中、突然グランの体が弾け、そして中から絶望が現れた。







「ば、馬鹿な!これは、ギルゴマさまじゃねぇか!」




「おい、嘘だろう。なぜ最高神が魔物の味方をするんだ?!」







「おしまいだ。神が人類を滅ぼそうとしているんだぞ?これはもう神意だ。神からの天罰だ」







世界には一定数必ず神の教えに従う人間はいる。

今その者達がこの残酷な事実を受け入れようとしていた。

しかし、その時、映像の中に突然ユーリィ・エルフィンドワーフが現れた。




「皆の者これから儂の言う事を良く聞くんじゃ」




大賢者の言葉に世界は固唾を飲んだ。




「あの者は儂の古くからの友人じゃ。高潔で気高く、そして誇り高い男じゃ。儂もカナタと勇者の関係は知らん、だが儂はカナタの事を知っておる。あやつは己の命を懸けて勇者を、そして我々人類を救おうとしておる!どうか皆の者達よ。彼の尊い行為を無駄にはせんでくれ、どうか彼に祝福を…」




そういって頭を下げる大賢者の目には涙が流れていた。







「おい…声を出せ、みんな彼に祝福の応援を送るんだ!彼の行為を無駄にするな!」




「そうだ!我々は、彼に全てを託す!これが本当に神の意思だと言うなら!我々は滅びるだろう、だがそれは、カナタが倒れた時の話だ!」




「カナタに祝福を!」







世界が祈った。

老いも若きも、男性も女性も、種族を超え、全ての人々がカナタの為に祈りを捧げた。




途中、カナタの腕が切られても祈りは途絶えない。




カナタが絶対結界魔法を勇者に掛けた時、世界中が彼の行動に驚いた。

だが祈りが絶える事はなかった。

みなカナタを信じていた。

彼ならきっと何とかしてくれる。

世界がカナタに運命を託した。







この祈りはカナタに届くのか。

それとも…。




その答えを知る者は誰もいなかった…。
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