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勇者と魔王
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カナタとギルゴマの戦いはまさに一進一退と言えた。
反応の速さではカナタに軍配が上がる。
だが、それもギルゴマに僅かな傷を与えるだけで、致命傷とは程遠い。
さらに付け加えるのであれば、カナタの方は一撃でも致命傷を喰らえば終わりである。
必然的に回避運動が多くなる。
そのため、ギルゴマへ決定的な攻撃を加える事ができない。
戦いはこう着状態に入ったように思われた。
そんな中、何度目かも分からないつばぜり合いから、お互いが距離を取った時にギルゴマが再びカナタへと話し掛けてきた。
「君には本当に驚かされてばかりいる。全く持って惜しい人間だと心から称賛するよ」
「はっ、それがどうしたと言うのだ?なにか特典でも貰えるのか?」
カナタは皮肉を込めて言った。
だがギルゴマは意外にも鷹揚に頷いた。
「あぁ、君への敬意として、魔王の正体を少しだけ君に教えてあげよう」
「…なんのつもりだ?」
「いや、そう警戒する事はない。ただ私は本当に君を称賛しているのだ。そしてこのまま何も知らずに死ぬのが気の毒になっただけの話だよ」
「くだらないな。俺がそれを知る事に何の意味があると言うんだ?」
「ふむ、正直に言うならば、さして意味などないだろうね。だが、君はどうやらただ勇者を救う為だけに命を懸けて来たのだろう?それならば少しは真実を知る資格があると思っただけだよ」
「真実だと?」
「そう真実さ。実はね、君達が勇者と呼んでいる少女だが、彼女は召喚に巻き込まれただけなのだよ」
「…つまり他に真の勇者がいると言う意味か?」
「いや、彼女は魔王を倒すと言う意味であれば真の勇者さ。だがね、それは単に召喚に巻き込まれたが為に定められた運命、いや宿命と言うべきだろうか?…つまり彼女は魔王召喚の儀式に巻き込まれたのだよ」
「それはおかしな話だな。魔王召喚の儀式と勇者召喚の儀式は全く違う場所と時間で行われた」
「ふむ、少し表現が正しくなかったかもしれないね。正確に言おう。今回行われた勇者召喚の儀式で呼び出された本当の存在こそが今の魔王の正体だ。そして私は過去の世界でその事を予見した。つまり君達が阻止しようとしていた魔王召喚の儀式とは未来の世界に呼び出された真の勇者を魔王として過去へ召喚する儀式だったのだよ。そして彼女はその儀式に巻き込まれた為に魔王の対となる存在となった」
「…つまり今の魔王とは本来は勇者となる存在だったという事か?」
「そういう事だねぇ」
「あいつは…カナはその召喚に巻き込まれたが故に魔王を倒せる事の出来る対の存在になった。そういう意味なんだな?」
「君は本当に話が早くて助かるよ。その通りだよ。まあ簡単に言うならば、魔王召喚の儀式が成立した時点で彼女の召喚もまた確定した未来となったという事だねぇ。つまりは魔王もまた君達と同じ世界から来たモノという事さ。あぁ、すまないが、今や人間と呼べるモノではなくなっているのでね。今やあれは単なる…存在とでも言うべきモノだろうねぇ」
ギルゴマはクックックと笑いながらカナタを挑発した。
「貴様、人間を何だと思っているんだ!?」
カナタは激高し、勢いのまま攻撃に移ろうとした。
しかし、その瞬間にカナタの頭にベータとアルファの声が届いた。
「挑発に乗っては駄目」
「カナタ落ち着いて。もう少しギルゴマと会話を続けて。ベータが提案した作戦があるの、お願いよ、ここは私達に任せて」
そのメッセージを聞いたカナタは深く息を吐いて冷静さを取り戻した。
良いだろう。
ここは二人に任せよう。
ベータが作戦があると言うのなら、それは“絶対”だろうからな。
カナタはフッと笑い、ギルゴマともう少し会話をすることにした。
…人類存亡を賭けた戦いは、間もなく第二幕に入ろうとしていた。
反応の速さではカナタに軍配が上がる。
だが、それもギルゴマに僅かな傷を与えるだけで、致命傷とは程遠い。
さらに付け加えるのであれば、カナタの方は一撃でも致命傷を喰らえば終わりである。
必然的に回避運動が多くなる。
そのため、ギルゴマへ決定的な攻撃を加える事ができない。
戦いはこう着状態に入ったように思われた。
そんな中、何度目かも分からないつばぜり合いから、お互いが距離を取った時にギルゴマが再びカナタへと話し掛けてきた。
「君には本当に驚かされてばかりいる。全く持って惜しい人間だと心から称賛するよ」
「はっ、それがどうしたと言うのだ?なにか特典でも貰えるのか?」
カナタは皮肉を込めて言った。
だがギルゴマは意外にも鷹揚に頷いた。
「あぁ、君への敬意として、魔王の正体を少しだけ君に教えてあげよう」
「…なんのつもりだ?」
「いや、そう警戒する事はない。ただ私は本当に君を称賛しているのだ。そしてこのまま何も知らずに死ぬのが気の毒になっただけの話だよ」
「くだらないな。俺がそれを知る事に何の意味があると言うんだ?」
「ふむ、正直に言うならば、さして意味などないだろうね。だが、君はどうやらただ勇者を救う為だけに命を懸けて来たのだろう?それならば少しは真実を知る資格があると思っただけだよ」
「真実だと?」
「そう真実さ。実はね、君達が勇者と呼んでいる少女だが、彼女は召喚に巻き込まれただけなのだよ」
「…つまり他に真の勇者がいると言う意味か?」
「いや、彼女は魔王を倒すと言う意味であれば真の勇者さ。だがね、それは単に召喚に巻き込まれたが為に定められた運命、いや宿命と言うべきだろうか?…つまり彼女は魔王召喚の儀式に巻き込まれたのだよ」
「それはおかしな話だな。魔王召喚の儀式と勇者召喚の儀式は全く違う場所と時間で行われた」
「ふむ、少し表現が正しくなかったかもしれないね。正確に言おう。今回行われた勇者召喚の儀式で呼び出された本当の存在こそが今の魔王の正体だ。そして私は過去の世界でその事を予見した。つまり君達が阻止しようとしていた魔王召喚の儀式とは未来の世界に呼び出された真の勇者を魔王として過去へ召喚する儀式だったのだよ。そして彼女はその儀式に巻き込まれた為に魔王の対となる存在となった」
「…つまり今の魔王とは本来は勇者となる存在だったという事か?」
「そういう事だねぇ」
「あいつは…カナはその召喚に巻き込まれたが故に魔王を倒せる事の出来る対の存在になった。そういう意味なんだな?」
「君は本当に話が早くて助かるよ。その通りだよ。まあ簡単に言うならば、魔王召喚の儀式が成立した時点で彼女の召喚もまた確定した未来となったという事だねぇ。つまりは魔王もまた君達と同じ世界から来たモノという事さ。あぁ、すまないが、今や人間と呼べるモノではなくなっているのでね。今やあれは単なる…存在とでも言うべきモノだろうねぇ」
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そのメッセージを聞いたカナタは深く息を吐いて冷静さを取り戻した。
良いだろう。
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カナタはフッと笑い、ギルゴマともう少し会話をすることにした。
…人類存亡を賭けた戦いは、間もなく第二幕に入ろうとしていた。
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