早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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モヤモヤ

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所変わり、3年生の教室。彩世のクラスでも朝のホームルームで夏夜行祭の話が出ていた。3年目ともなると、生徒のリアクションはバラバラだ。

参加する気満々な生徒や、最初から出る気のない生徒など様々なようだ。

「彩世~!お前、夏夜行祭出る?」

話が終わった後、彩世の席へ男友達がやってきた。3年で知り合った一見タイプが真逆に見える友達だが、普通に仲はいい。

「うーん…そうだな、どうしよう」
「俺出たいんだよー!高校最後だし!彩世も予定ないなら出ようぜ!?」
「なんでそこまで出たいんだよ?行事なら文化祭もあるし…」
「ばか!高校にしては珍しい夜の行事だぞ!?しかも夏!恋の季節!毎年出たいに決まってるだろ!」
「恋の季節って…そんなのないでしょ」
「いやいや、生徒の間では人気なんだぞ?夏祭りって気分上がるじゃん?女子は参加率高いし、しかも夜だし、文化祭よりカップル爆誕するって言われてんだから!」

その友達の言葉を聞いた途端、なぜか思い切りむせた彩世。咳き込みながら周りを見てみると、言われた通り今から気合いの入ってそうな生徒も多い。

「おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫…。てかそれって、恋人作りたいだけじゃん」
「そうだ!悪いか!!イベントの力借りるしかないんだよ!もう高校生活終わりに差し掛かってるんだからー!早く恋人作って学生恋愛したいだろーが!」
「はぁ…」
「なんだよ、彩世は興味ないの?そもそも今恋人いんの?」
「いないよ、高1の時彼女いたけど別れてからはいない」
「マジかよ!なんで別れちゃったの?」
「…浮気された」
「ひーー!マジ!?なんかごめん!」
「いやいいんだよ。もう終わったことだし…それより夏夜行祭どうしようかな…」

その時、彩世の携帯がポケットで振動し始めた。すぐ携帯を見てみると、そこには那月からのメッセージが来ていた。

その内容を見て、フッと自然に笑みが溢れる。

「……」
「ん?どした?女か!?」
「違うよ。あのさ、俺も出る。夏夜行祭」
「おお!マジで!?なんで急に!」
「何となく…うん。少しくらい出ようかなって」

那月からの「夏夜行祭出ますか?」というメッセージに「うん、少し参加するよ」と返信をした彩世。

「彩世、お前なにニヤニヤしてんだよ」
「は?してないよ」
「してるわ!!いいなぁー、既にいい感じの子でもいるだろーな」
「は!?何言ってんだよ、別にそんなんじゃないし…」
「てかさー、同学年で探すから難しいのかな?ほら、俺ら3年だし年下っていう手もあるじゃん」
「おいおい…、誰でもいいのかよ」
「違うけど!!まずは出会いだろー!出会って知り合わないと何も始まらん!!」

友達が彩世の机にもたれ、窓の外を眺めた。彩世の席は窓際で、下を覗くとちょうど2階の広いベランダが見える。教室移動の時に生徒がよく行き交う所で、屋上のような作りになっているため休み時間を過ごす時もよく使われる。

ちょうど今も、1年生や2年生が大勢ガヤガヤと歩いているようだ。

「ほらほら、見てみろよ彩世。若いなぁー、それに初々しい感じが可愛いよな。1年とかって。アリだな」
「まあな…、お前発言がオヤジ」
「だって!あのキャピキャピ感見たら誰でもそう思うわ!ほら、見てみろあの辺!可愛い1年女子が集まってるぞ!」
「いたっ!引っ張るなよ、別に興味な…」

友達に頭を捕まれ、窓の方を向かされた彩世。嫌々目を向けたが、クリアに視界に入ったのは可愛い女子達ではなく、たった1人。

偶然、教科書とノートを胸の前で抱えて歩いてくる那月だった。

「……あ、」

上の階からでも那月だと気付いた彩世は、じっとその様子を見つめた。那月の隣には明衣がいて、何やら楽しそうに話をしながら歩いている。

「なんだよ、そんな熱烈に見つめちゃって~!他に可愛い子いたのか!?」
「……いや、違う」

何となくそこから目が離せない彩世は、2人が歩いている所を目で追っていく。すると、後ろから那月達に駆け寄ってくる男子が1人見えた。

「は!??」
「びっくりしたぁ!なになに、どうした」
「あ、ごめん。何でもない…」

那月の男性恐怖症のことを知っているから、男が近付いたらやばいと思うのは自然だろう。だが焦りに焦った彩世とは対照的に、後から来た男子と2人は自然に会話をしているようだった。

那月は緊張しているのか教科書を固く抱きしめてソワソワしてはいる。だが以前ほどの極度に怯えている雰囲気はない。

「……まただ、何だこれ」
「なにが?うわっ、あのロングヘアの子可愛い!」
「うーー…はぁ…」

一一一そっか、慣れてきたんだ。俺だけじゃなくて他の男にも。あーうん、そっか。いいことじゃん。ナツくんがいい方向に変われたんなら…。

一一一モヤモヤすることじゃないはず…。
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