早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

文字の大きさ
53 / 94
5

どうして

しおりを挟む
一一一テレビで見たことあるやつだ…!恋人同士がやるやつ…!あーんってやつ!!

「……っあ、は、はい」

那月は卵焼きを1つ箸で摘んで、震えながら彩世の口へそっと運んだ。彩世は口に入れられた卵焼きを咀嚼して噛み締める。

「うん…、美味しいね」
「ほんとですか…!」
「ありがとう、ナツくん」
「はっ、はい…」

嬉しそうに微笑んだ彩世を見て、那月は胸をホッと撫で下ろす。しかし安心してすぐ、自分が彩世に食べさせたという事実を思い出し顔を熱くさせた。

そして前を向き直し、顔が見えないように少し前傾姿勢をとる。

一一一僕、今先輩に「あーん」をしてしまったんだ…!ま、まさかそんなことになるなんて…!怖いとかじゃなくて緊張で手が震える!顔熱い!

「ナツくん家の卵焼きは甘めなんだね」
「あっ、は、はい!そうです…僕が、甘いのが好きで…母がこれを教えてくれました…」
「ふーん…、じゃあお菓子とかも?」
「そ、そ、そうですね!甘いデザートとかは、す、好きです…」
「そっか」

一一一先輩、まだこっち見てる?なんか背中に視線を感じる…!!顔赤いのバレるから早く向こう向いてほしい…!

「あのさ、ナツくん」
「は!?は、はい…」
「俺に慣れてきたって言ってたけど、やっぱりこうやって近いと怖くなる?」
「……え、」
「また声震えてるし、縮こまってるから」

一一一ち、違う!!怖いわけじゃなくてこれは、ただ単に緊張してるから…。だから先輩の方見れないだけで…。

一一一え、でもあれ。なんでこんな緊張の仕方してるんだ…同じ男の人なのに相野くんの時とは何か違う。体が固まる感じじゃなくて、むしろ鼓動しすぎて溶けそうな感じ…。え、なんで…?

「…わ、分からない」
「え?」
「あああ!!い、いや、違くて…そ、その…」
「でも急に顔見れなくなってるでしょ」
「そ、それは…」

那月が視線を少しだけ後ろに向けると、彩世はこちらを心配そうに見ながら気にかけていた。それを見て那月は余計に頭が混乱して上手く言葉に出来ない。

「…あの同級生には、そんな風じゃなかったのに」
「へ、?あ、あの、今なんて…」
「…!あ、ううん、何でもない。食べさせてとか言ってごめんね。俺もう行くから」
「せ、先輩…!!」

彩世は小さな声でそう呟くと、中庭を出て行ってしまった。那月は1人残されたベンチで唇を噛み締める。

「…違う、のに」

一一一でも、じゃあなんで自分がこうなってるのか分からない。緊張だけじゃない気がする。だけど理由を聞かれても説明できない…。

顔を下げしゅんと丸くなる那月と同様、中庭を出た彩世もまた深くため息をつき、入り口で立ちすくんでいた。

「あー…何であんなこと言っちゃったんだろ。せっかくナツくんが気にかけてくれたのに…」

一一一だって、あの感じ…怖がってるようにしか見えなかった。別に怖いっていうのは分かってたことなのに…前に俺なら大丈夫って言われて嬉しかったから余計にちょっと…。

「……ん?」

そんな突っ立っていた彩世の元に、目の前から1人の男子生徒が歩いてきた。その男子はキョロキョロと顔を動かしながら、中庭を見つけてハッとした表情を浮かべる。上履きの色からするに、1年生だ。

一一一ここ滅多に人来ないのに…珍しい。ていうか、この子の顔どっかで…。

「あ…、ど、どうも」

その男子は彩世に気付き、先輩だと分かったらしくにこやかに頭を下げた。彩世もそれに軽く会釈を返す。

「ああ…どうしたの。ここに何か用?」
「えっと…ここが中庭ですよね?」
「そうだけど…」

一一一あ!!分かった。この子、今朝ベランダでナツ君に走り寄って話しかけてきてた男子だ。なんでまたタイミングよくここにまで…。

彩世は入り口の前を塞ぐように立ち、退く気はないと言わんばかりに腕を組む。

「あ、あの中に誰かいませんか?」
「誰か探してるの?」
「はい…、ここにクラスメイトがいるはずなんですけど…」
「クラスメイト?君、何組?」
「1年2組の、相野っていいます」

一一一相野くん?2組ってことは、ナツくんと同じ。この子クラスメイトだったんだ。でも突然何の用だ?授業のこと?わざわざ探しに?急用だったら、いつも一緒にいる女の子が連絡してくれるだろうし…。

視聴覚室の件もあり少し警戒していた彩世は、ハキハキとした爽やかな相野をじっと見て、その心配はないかと少し気を緩めた。

だが、別の警戒は張り続けている。

「ふーん…、そっか。でもここには誰もいないよ」
「えっ?そうなんですか?」
「うん。他の所にいるんじゃない?」
「あれ…いるはずなんだけどな…。もしかしたら見えない所にいるかもしれないんで、ちょっと中見ていいですか?」

相野は彩世の後ろにあるドアを開けようと手を伸ばした。しかし、その手は彩世に掴まれドアは開くことなく遮られる。

突然手を掴まれて驚いている相野に、彩世はニコッと微笑みかける。

「えっ…あの?」
「ここには居ないんだから、見ても意味ないよ。他の所を探したら?それか連絡してみたら?」
「あー、連絡先まだ知らなくて…」
「そうなんだ。それは残念」

相野は何となく彩世から離れ、さっきとは真逆の不審そうな目を向ける。

「…ありがとうございます。じゃあ、僕はこれで」
「いえいえ。じゃあね」

そして納得していなさそうな顔をしながら軽く頭を下げ去って行った相野。彩世はそれに手を振り見送ると、ふーっとため息を吐く。

「不審がられちゃったなー。まあいいか、ここに入られて2人きりになるよりは…」

一一一たぶんナツくんを探してたんだな、あの相野って子。警戒しなくてもただ普通の用事かもしれないのに、なにムキになってんだ俺は…。

一一一でもあの子の表情…なんかありそうっていうか…本当にただの用事か?

「…相野くんね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...