早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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触れて

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一一一あ、なんだかとんでもない事を言ってしまったのかもしれない…。先輩が目を大きくして固まってる。

「…あ、あの」
「えっと…、俺が触ってみていいってこと?」
「はい…!」
「本当に大丈夫…?」
「お、お願いします!」
「…分かった」

提案をした那月より、彩世の方が緊張しているようでふーっと息を吐いている。心臓を細かく鼓動させているのは2人とも同じだろう。

「…嫌だったらすぐ言ってね」
「っはい、でも、大丈夫です…!僕も、僕のことを分かりたい、から…」
「ナツくん…」
「どこでもいいので、お願い、します…!」

彩世は先ほど引っ込めた手をまたゆっくり伸ばし、那月の頭の上に持っていった。そして手のひらをそのまま頭に優しく乗せる。

那月はギュッと目を閉じてそれを受け入れた。

「……っ」
「大丈夫?」
「…っは、はい」

那月の頭に乗せられた手はぎこちなく動き出し、ゆっくりと撫でる。熱のせいかこの緊張によるせいか、那月の首筋に汗が伝った。

一一一あれ、これは…もしかして頭を撫でられてる…!!!?親以外にされたことない…!しかも男の人に、先輩に…!

那月は固く閉じていた目を開け、彩世の方を見上げた。口をきゅっと引き結んだ表情を浮かべていて、恐る恐る触れているのが分かる。

「…怖くない?」
「はい…、大丈夫です…」
「でも胸のとこギュッて強く握ってるのは…?怖いからではないの?」
「あっ、こ、これは…違います。やっぱり先輩に触られると、近くにいると…ドキドキして…、今まで感じたことない緊張がする、から…」
「……そう」

頭を撫でていた彩世の手は自然と下へ降りていき、那月の頬を包むように触れた。那月の耳と右頬は彩世の大きな手で覆われている。

「顔熱いね」
「は、はい…」

お互い向き合ったままこの至近距離で触れ合う時間。2人の間だけ時間がスローに流れているかのような感覚。

一一一あんなに怖くて目も合わせられなかったのに…、彩世先輩に触れられたら胸がうるさくなるし、なんかくすぐったい。なんで?やっぱり明らかに他の人とは違う。

一一一それに、今はこの人の目に吸い込まれそうで…視線を外せない。


「…っ!!」

手の感覚に集中していた那月だが、その手が首筋に触れてなぞられた瞬間。ビクッと体を跳ね上げた。

「…!あっ!ご、ごめん。汗かいてるなと思って、つい…」
「いいいいえ!!大丈夫で、す!く、くすぐったくてびっくりしただけで…」

我に返ったようなリアクションをする彩世は慌てて那月から手を離す。何となく気まずい空気感を感じる2人は視線を別々の方へ戻した。

「あっ、ありがとうございました…」
「ううん。大丈夫。それより早く汗拭いて寝てた方がいいよ、はいタオル」
「はい…、あの、先輩…」
「…っなに?」
「僕やっぱり…先輩に触れても、強ばりません…。むしろ体が溶けて消えそうっていうか…。で、でも他の人に対する緊張とは違うって、分かりました…!」

真っ赤な顔でそう必死に訴えてくる那月を見て彩世はフッと軽く笑うと、手渡したタオルを掴み那月の汗を拭った。

「そっか、ありがとう」
「へ…あ…」
「それが分かってよかった」

一通り那月の額や首の汗をトントンと優しく拭い、彩世はタオルを枕元に置き立ち上がる。

「じゃあ、そろそろ俺は帰るよ。1人の方がゆっくり寝れるだろうから。スポドリと水はここに置いてあるしゼリーとかは冷蔵庫に入ってるからね」
「あ、ありがとうございます…」
「ちゃんと寝てね。お母さん、なるべく早く帰るって言ってたけどもし何かあったら連絡してきて」
「はい…」
「それじゃ…」
「あ、あの!!!先輩!」

鞄を持ち扉の方へ向かった彩世を呼び止めた那月。ゴクッと唾を飲み、1呼吸してから口を開いた。

「きょ、今日は本当にありがとうございました…!先輩が、居てくれて…よかったです!」
「……」

それを聞いた彩世はすぐ顔を背け、扉の方を向いたまま後ろに大雑把に手を振る。

「いえいえ、お大事にね」

そしてバタンッと閉まった扉。

一一一ひえええ!!!どうしよう、克服できたってことなのかな!?でも先輩に対してだけだ!こんな風になるのは…!それが分かったのはいいけど、これは一体…。

「…っ苦しいの、収まんない」

扉が閉まった後、顔を赤くしてベッドに突っ伏した那月と同様。扉の向こうで彩世もまた耳を赤く染めていることを那月はまるで想像もしていないだろう。

「…っはぁ…あぶね、」

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