早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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あの時

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彩世が帰った後、布団に潜り込んでいた那月はいつの間にか眠っていたらしく、目を覚ました頃には窓の外は暗くなっていた。ボーッとした頭のまま枕元にある携帯に手を伸ばす。

「…寝ちゃってた、んーー」

携帯の画面を見ると、時刻は夜の20時。それに明衣からメッセージが大量に届いていた。

一一一授業途中で抜けちゃったし、相野君に保健室連れて行ってもらったから…明衣にたくさん心配かけちゃったな。返信しよう。

ぐっすり寝たおかげか、昼間よりもだいぶ体調は良くなっているようだ。まだ少し熱っぽいが、頭痛は引いていて寒気もない。

「あ、母さんからもメッセージ来てる。だいぶ良くなったって返信しなきゃ」

母もだいぶ心配していて、夜中の1時には帰れると連絡が来ていた。2人に返信をしてから、連絡先をじっと見つめる那月。

「…彩世先輩、家帰ったかな。連絡、しても大丈夫かな。…っあ、ていうか!!」

一一一やばいやばい!!夕方のこと思い出しちゃった…!先輩に、僕はなんてことをしてもらったんだ…!触ってみてほしいだなんて!

一一一熱のせいで大胆になってたのか!?改めて考えるとめちゃくちゃ恥ずかしいことをお願いしたような気がする…!!

「うううー…、はぁ。でも、そのおかげで分かったんだから…。先輩には他の人と違うんだって」

那月は枕に顔を押し付けた後、思い切って彩世にメッセージを打った。

「今日はありがとうございました…と。だいぶ体調は良くなりました…、で大丈夫かな」

それでも今日のことを思い出すたび、彩世に触れられた頭や顔、首が熱くなるように感じてじっとしていられない。那月は自分の胸を押えて、再び布団へと倒れ込んだ。

「これは…どうしちゃったんだろう。克服…とは違う気がする」

一一一男の人に触れても怖くないのに…、変われたんだって嬉しいのに…それだけじゃない。

“向こうが自分をどう思ってるか気になったり、会えるかなって思うのなんて恋しかなくない!?”

そのタイミングで、以前教室で明衣とした会話を思い出した。あの時は有り得ないと思っていたことだ。

「なんで今、あの話を思い出すんだ…」

“違うよ。そもそも僕と先輩は男だし、それ以前に触るとか無理だし…そう思えないし”

“そういう概念とか今までの自分をひっくり返しちゃうのが恋なんだよ?”

「…そんな、ひっくり返すって…、こういうこと?で、でも、でも…」

一一一男の人が怖かった僕が、男の人を好きになるなんてそんなこと…ある訳ないと思ってたのに…。

那月はメッセージを打つのをやめて、携帯でインターネットを開いた。検索欄に「恋   症状」「恋とは」「男同士  ドキドキ」と次々入れて色んな記事を見漁る。

「わぁ!!変な動画出てきた…!うわ!ダメダメ!!戻る戻る…」

一一一え、え?ちょっと待って。慌てて消したけど今の、男の人同士でキス…してた!?うそ!?テレビで見たことあるドラマとかは女の人と男の人しかなかったのに…!

バクバクと心臓を暴れさせながら那月はゴクッと唾を飲み、恐る恐るさっきの検索ページをもう一度押してみた。

そこに映っていたのは、ネット配信のみでやっているボーイズラブドラマのワンシーンだ。動画やSNSにそこまで興味のなかった那月には初めて見る衝撃的な映像だった。

「……え、え?ほんとに、そんなことあるの…?」

恋愛系に耐性のなかった那月にはかなり刺激的なものだったが、なぜか目が離せず次々と関連記事を覗いていく。

「わぁぁ!!!こ、これは18禁だ!!ダメだダメだ、また熱上がっちゃう…」
 
大量に検索を終えた携帯を放り投げ、仰向けに倒れる那月。

一一一やっぱり男の人でも、好きになることは有り得るんだ。じゃあ僕のこの気持ちも…?


「分かんない…あーーー!今までそんな経験なかったから…」

一一一そんな経験…?

“なつくん、ボクのこと嫌い?”
“やだやだ!やめてぇ!”

「い!!いやいや!もう思い出すな!あの時のことは…!もう終わったことだ…。せっかく…先輩のおかげで、男の人への恐怖が無くなってきたんだから…」

一一一あれ?そうか…。小学生の時のあのトラウマ…。今までは何となく、触ってきたのは好意的なものだったのかなって考えてたけど…

触れたい、触れてほしい会いたいって思うのが恋だとしたら?男同士でも恋が芽生えるのが普通だとしたら…。やっぱり、あの時の友達も僕の事を…?

「……名前、なんだったっけ。いや!考えるのやめよう。今は今だ、今のことを考えよう…」


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