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独占欲
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まだ全く抵抗が無いわけではないが、男子への耐性が前より格段にできている。初めて話す時や体が触れそうな時はやはりまだ体が強ばるが、入学当初と比べたら差は歴然。
前に彩世に言われたことを思い出し、先程初めて話した浜野と市早とはこれからも親しくしたいと思った那月。
午前中の授業を終えてから、軽やかな小走りで中庭へと向かう。手に弁当袋とポーチが入った手提げを持って。
「…!あっ!」
少し息を切らしながら中庭へ入ると、既にいつものベンチに座っている彩世がいた。那月が入ってきたことに気付いて、彩世はパンを咥えながら振り向く。
「お、ナツくん。走ってきたの?珍しい」
「はっ…はい!先輩、いた、よかった」
「え?なんで?」
「今日、その…さっき嬉しいことがあって…」
「へぇ、何があったの?」
「あ、あの…数学の時間、クラスメイトの男子に休んだ所のノートを見せて欲しいって、思い切って声をかけたら…その2人の男子と話せるようになったんです…!」
「…え、」
「れ、連絡先も、さっき交換しようって言ってもらえて…!緊張するけど、だいぶ克服できたような気がします…!その2人とも、仲良くなりたいって思って!」
「へぇ…そうなんだ」
所々息を切らしながら、嬉しそうにさっきあったことを彩世に伝える那月。彩世は表情を動かさず前を向いて残りのパンを頬張り、ペットボトルのお茶を一気に飲み干した。
「こ、こんなこと初めてです…、嬉しくて先輩にも話したかったんです…!先輩が励ましてくれたから、失敗しても諦めずに頑張ろうって、お、思えて…」
「よかったね、ナツくん」
「は、はい…!本当に、ありがとうございます!」
彩世はベンチから立ち上がったが、那月の方を向こうとしない。後ろから那月が覗くとちょうど彩世の首筋が見える角度で、朝見た絆創膏がやはり貼られていた。
「あ!そうだ、せ、先輩!首のとこ怪我してるんですよね…?」
「…っえ!?な、なんで」
「え?あ、朝首に絆創膏してるの見えて…でも剥がれかけてたし赤くなってたから、け、怪我したんだと思って…」
「……あー」
那月に首のことを指摘された彩世は手で首を隠し、深くため息をついた。那月は近くに寄り、ポーチから取り出した絆創膏を何枚か彩世におずおずと差し出す。
「あ、あ、あの、よかったらこれ…絆創膏使ってください!」
「え…」
「怪我してるとこ、すぐ剥がれちゃうと思うんで…で、でもバイ菌入ったらよくないし…使ってください」
「あー…うん、ありがと」
彩世はそれを黙って受け取り、じっと絆創膏を見つめた。
「せ、先輩…?どうかしましたか…」
「でも首のここ、怪我したわけじゃないんだよね」
「え…」
「痕が見えないように絆創膏貼ってただけ」
「痕…?」
彩世はぺりぺりと今貼ってある絆創膏を剥がし、シャツの襟を広げてその場所を那月に見せた。朝よりもハッキリ見えたそこには、赤黒く何かが噛み付いたような歯型と吸い付いたような痕がくっきりついている。
「わ!?い、痛そうですよ…、そ、それは何の痕…」
「…キスマって知ってる?」
「……へ?」
「キスマーク。よく恋人同士がつけるやつ。俺は恋人いないけど夏希につけられたの」
「………は?き、き、?キス?え、」
突然ハードルの高いワードが出てきたことで、動揺が隠せない。目と顔をキョロキョロと動かし狼狽える那月。
彩世は無表情のまま、そんな那月を細目で見下ろし淡々と話す。
「ナツくんの家から帰った夜、なつが家に来てさ。俺が知らない奴の家から出てくるの見たって言われて…その時無理やり首噛まれてつけられた」
「……っ!!」
「だから別に怪我じゃないんだ。内出血みたいなもんだし大丈夫だよ。隠したいから絆創膏貼ってるだけ」
一一一首を…首を噛む?キスマーク??ど、どういうこと?そういえばネットで調べた時、そんな言葉出てきた気がする…。でも、恋人同士がすることなのに、なんで夏希さんが先輩にするの…?
一一一嫌だな、なんかまた胃がムカムカしてくる…。さっき嬉しいことがあったのにそれを上回るほどの…。
「え、え、えっと…、そ、その、」
「ナツくん?」
「なっ…なんで、な、夏希さんは…先輩に…」
「…怒ったからだよ。俺が他の人に盗られるって思って」
「え…」
「さすがにここまでされるとは思ってなかったけどね。キスマってなんでつけるか分かる?」
「…っわ、分からないです、」
耳を赤くして俯く那月に近付き、彩世は那月の頬に手を伸ばす。そしてそのまま首を優しく掴んだ。
「独占欲だよ」
「……え」
「自分だけの物だっていう印。マーキングみたいなもの。だからみんな独占したい相手につけるんだよ」
前に彩世に言われたことを思い出し、先程初めて話した浜野と市早とはこれからも親しくしたいと思った那月。
午前中の授業を終えてから、軽やかな小走りで中庭へと向かう。手に弁当袋とポーチが入った手提げを持って。
「…!あっ!」
少し息を切らしながら中庭へ入ると、既にいつものベンチに座っている彩世がいた。那月が入ってきたことに気付いて、彩世はパンを咥えながら振り向く。
「お、ナツくん。走ってきたの?珍しい」
「はっ…はい!先輩、いた、よかった」
「え?なんで?」
「今日、その…さっき嬉しいことがあって…」
「へぇ、何があったの?」
「あ、あの…数学の時間、クラスメイトの男子に休んだ所のノートを見せて欲しいって、思い切って声をかけたら…その2人の男子と話せるようになったんです…!」
「…え、」
「れ、連絡先も、さっき交換しようって言ってもらえて…!緊張するけど、だいぶ克服できたような気がします…!その2人とも、仲良くなりたいって思って!」
「へぇ…そうなんだ」
所々息を切らしながら、嬉しそうにさっきあったことを彩世に伝える那月。彩世は表情を動かさず前を向いて残りのパンを頬張り、ペットボトルのお茶を一気に飲み干した。
「こ、こんなこと初めてです…、嬉しくて先輩にも話したかったんです…!先輩が励ましてくれたから、失敗しても諦めずに頑張ろうって、お、思えて…」
「よかったね、ナツくん」
「は、はい…!本当に、ありがとうございます!」
彩世はベンチから立ち上がったが、那月の方を向こうとしない。後ろから那月が覗くとちょうど彩世の首筋が見える角度で、朝見た絆創膏がやはり貼られていた。
「あ!そうだ、せ、先輩!首のとこ怪我してるんですよね…?」
「…っえ!?な、なんで」
「え?あ、朝首に絆創膏してるの見えて…でも剥がれかけてたし赤くなってたから、け、怪我したんだと思って…」
「……あー」
那月に首のことを指摘された彩世は手で首を隠し、深くため息をついた。那月は近くに寄り、ポーチから取り出した絆創膏を何枚か彩世におずおずと差し出す。
「あ、あ、あの、よかったらこれ…絆創膏使ってください!」
「え…」
「怪我してるとこ、すぐ剥がれちゃうと思うんで…で、でもバイ菌入ったらよくないし…使ってください」
「あー…うん、ありがと」
彩世はそれを黙って受け取り、じっと絆創膏を見つめた。
「せ、先輩…?どうかしましたか…」
「でも首のここ、怪我したわけじゃないんだよね」
「え…」
「痕が見えないように絆創膏貼ってただけ」
「痕…?」
彩世はぺりぺりと今貼ってある絆創膏を剥がし、シャツの襟を広げてその場所を那月に見せた。朝よりもハッキリ見えたそこには、赤黒く何かが噛み付いたような歯型と吸い付いたような痕がくっきりついている。
「わ!?い、痛そうですよ…、そ、それは何の痕…」
「…キスマって知ってる?」
「……へ?」
「キスマーク。よく恋人同士がつけるやつ。俺は恋人いないけど夏希につけられたの」
「………は?き、き、?キス?え、」
突然ハードルの高いワードが出てきたことで、動揺が隠せない。目と顔をキョロキョロと動かし狼狽える那月。
彩世は無表情のまま、そんな那月を細目で見下ろし淡々と話す。
「ナツくんの家から帰った夜、なつが家に来てさ。俺が知らない奴の家から出てくるの見たって言われて…その時無理やり首噛まれてつけられた」
「……っ!!」
「だから別に怪我じゃないんだ。内出血みたいなもんだし大丈夫だよ。隠したいから絆創膏貼ってるだけ」
一一一首を…首を噛む?キスマーク??ど、どういうこと?そういえばネットで調べた時、そんな言葉出てきた気がする…。でも、恋人同士がすることなのに、なんで夏希さんが先輩にするの…?
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「ナツくん?」
「なっ…なんで、な、夏希さんは…先輩に…」
「…怒ったからだよ。俺が他の人に盗られるって思って」
「え…」
「さすがにここまでされるとは思ってなかったけどね。キスマってなんでつけるか分かる?」
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