早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

文字の大きさ
63 / 94
5

独占欲

しおりを挟む
まだ全く抵抗が無いわけではないが、男子への耐性が前より格段にできている。初めて話す時や体が触れそうな時はやはりまだ体が強ばるが、入学当初と比べたら差は歴然。

前に彩世に言われたことを思い出し、先程初めて話した浜野と市早とはこれからも親しくしたいと思った那月。

午前中の授業を終えてから、軽やかな小走りで中庭へと向かう。手に弁当袋とポーチが入った手提げを持って。

「…!あっ!」

少し息を切らしながら中庭へ入ると、既にいつものベンチに座っている彩世がいた。那月が入ってきたことに気付いて、彩世はパンを咥えながら振り向く。

「お、ナツくん。走ってきたの?珍しい」
「はっ…はい!先輩、いた、よかった」
「え?なんで?」
「今日、その…さっき嬉しいことがあって…」
「へぇ、何があったの?」
「あ、あの…数学の時間、クラスメイトの男子に休んだ所のノートを見せて欲しいって、思い切って声をかけたら…その2人の男子と話せるようになったんです…!」
「…え、」
「れ、連絡先も、さっき交換しようって言ってもらえて…!緊張するけど、だいぶ克服できたような気がします…!その2人とも、仲良くなりたいって思って!」
「へぇ…そうなんだ」

所々息を切らしながら、嬉しそうにさっきあったことを彩世に伝える那月。彩世は表情を動かさず前を向いて残りのパンを頬張り、ペットボトルのお茶を一気に飲み干した。

「こ、こんなこと初めてです…、嬉しくて先輩にも話したかったんです…!先輩が励ましてくれたから、失敗しても諦めずに頑張ろうって、お、思えて…」
「よかったね、ナツくん」
「は、はい…!本当に、ありがとうございます!」

彩世はベンチから立ち上がったが、那月の方を向こうとしない。後ろから那月が覗くとちょうど彩世の首筋が見える角度で、朝見た絆創膏がやはり貼られていた。

「あ!そうだ、せ、先輩!首のとこ怪我してるんですよね…?」
「…っえ!?な、なんで」
「え?あ、朝首に絆創膏してるの見えて…でも剥がれかけてたし赤くなってたから、け、怪我したんだと思って…」
「……あー」

那月に首のことを指摘された彩世は手で首を隠し、深くため息をついた。那月は近くに寄り、ポーチから取り出した絆創膏を何枚か彩世におずおずと差し出す。

「あ、あ、あの、よかったらこれ…絆創膏使ってください!」
「え…」
「怪我してるとこ、すぐ剥がれちゃうと思うんで…で、でもバイ菌入ったらよくないし…使ってください」
「あー…うん、ありがと」

彩世はそれを黙って受け取り、じっと絆創膏を見つめた。

「せ、先輩…?どうかしましたか…」
「でも首のここ、怪我したわけじゃないんだよね」
「え…」
「痕が見えないように絆創膏貼ってただけ」
「痕…?」

彩世はぺりぺりと今貼ってある絆創膏を剥がし、シャツの襟を広げてその場所を那月に見せた。朝よりもハッキリ見えたそこには、赤黒く何かが噛み付いたような歯型と吸い付いたような痕がくっきりついている。

「わ!?い、痛そうですよ…、そ、それは何の痕…」
「…キスマって知ってる?」
「……へ?」
「キスマーク。よく恋人同士がつけるやつ。俺は恋人いないけど夏希につけられたの」
「………は?き、き、?キス?え、」

突然ハードルの高いワードが出てきたことで、動揺が隠せない。目と顔をキョロキョロと動かし狼狽える那月。

彩世は無表情のまま、そんな那月を細目で見下ろし淡々と話す。

「ナツくんの家から帰った夜、なつが家に来てさ。俺が知らない奴の家から出てくるの見たって言われて…その時無理やり首噛まれてつけられた」
「……っ!!」
「だから別に怪我じゃないんだ。内出血みたいなもんだし大丈夫だよ。隠したいから絆創膏貼ってるだけ」

一一一首を…首を噛む?キスマーク??ど、どういうこと?そういえばネットで調べた時、そんな言葉出てきた気がする…。でも、恋人同士がすることなのに、なんで夏希さんが先輩にするの…?

一一一嫌だな、なんかまた胃がムカムカしてくる…。さっき嬉しいことがあったのにそれを上回るほどの…。

「え、え、えっと…、そ、その、」
「ナツくん?」
「なっ…なんで、な、夏希さんは…先輩に…」
「…怒ったからだよ。俺が他の人に盗られるって思って」
「え…」
「さすがにここまでされるとは思ってなかったけどね。キスマってなんでつけるか分かる?」
「…っわ、分からないです、」

耳を赤くして俯く那月に近付き、彩世は那月の頬に手を伸ばす。そしてそのまま首を優しく掴んだ。

「独占欲だよ」
「……え」
「自分だけの物だっていう印。マーキングみたいなもの。だからみんな独占したい相手につけるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

ヒートより厄介な恋をα後輩に教え込まれる

雪兎
BL
大学三年のΩ・篠宮湊は、何事も理屈で考えるタイプ。 ヒート管理も完璧で、恋愛とは距離を置いてきた。 「フェロモンに振り回されるのは非合理的」 そう思っていたのに――。 新学期、同じゼミに入ってきた後輩は、やたら距離の近いα・高瀬蒼。 人懐っこくて優秀、なのに湊にだけ妙に構ってくる。 「先輩って、恋したことないでしょ」 「……必要ないからな」 「じゃあ俺が教えますよ。ヒートより面倒なやつ」 余裕のあるα後輩と、恋に不慣れなΩ先輩。 からかわれているはずなのに、気づけば湊の心は少しずつ乱されていく。 これは、理屈ではどうにもならない “ヒートより厄介な恋”を教え込まれる物語。

処理中です...