早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

文字の大きさ
68 / 94
6

やります

しおりを挟む
次の日、朝のホームルーム前に自分の机で項垂れている那月は突っ伏しながら携帯と睨み合っていた。彩世に連絡するため、昨日の夜から文章を考えている。夏希とのことがあってから、余計に彩世に会いたいと思ったからだ。

「うーん…、なんて送ったらいいんだろ」

だがその気持ちを上手く文に表すことができず、何からどう話せばいいか定まらない。

一一一会って話したいです…?でも何を?ただ会いたいですって言っても、なんで?ってなるかな。そもそも先輩に会いたくて会った後は、僕はどうしたいんだ。

一一一でも、明衣に言われた通りまず会わないと何も解決できないよな…。気まずいままは嫌だ。

「篠井くん、おはよ」
「あっ…!相野くん、お、おはよう!」
「なんか険しい顔してたけど、何かあったの?」
「えっ、あ、いや…」

那月は顔を覗き込んできた相野に気付き、咄嗟に携帯を伏せた。昨日のことがあり、彩世のことを話したからか何となく気恥しさを感じている。

相野はそんな那月を見て、勘良く何かを察したように笑った。

「もしかして、例の先輩のこと?」
「えっ!!」
「携帯見て悩んでたみたいだし、違う?」
「…う、え、なんで、分かったの?」
「篠井くん、分かりやすいしさ。色々検索してたみたいだし、今もそうかなって」

一一一そうだった!いくら相野くんが気にしてないといっても、検索欄を見られたのはやっぱり恥ずかしい…!!

「あー…、う、うん。でも今は調べてたわけじゃなくて…」
「え?そうなの?」
「うん、どうやって連絡しようか、悩んでて…」
「連絡…なんでそんなに悩むの?」
「えっ…と…」
「あっいや、言いたくないならいいんだけど…聞いたら何か力になれるかなって思ったから」

一一一相野くん、やっぱりいい人だな…。僕のことも引かずにいてくれて、悩んでることまで聞いてくれようとするなんて…。

「あ、ありがとう…、相野くん。気持ちだけですごく嬉しいよ。もう少し自分で悩んでみる」

そう言って凛とした笑顔を浮かべた那月。相野はそれを見た直後、石のように固まり口だけを小さく動かした。

「……っかゎ」
「か?」
「…っ!!!あ!なんでもない。どうしようもなかったら遠慮なく相談してね。話なら聞けるからさ」
「うん…、ありがと」

口を抑えて何か言葉を飲みこんだような相野だったが、それだけ言うとそそくさと自分の席へ戻っていった。ちょうどその直後、朝のチャイムが鳴り担任が教室へと入ってきていた。

遅刻寸前の生徒達がバタバタと教室へ倒れ込んでくる中、容赦なくホームルームを始める担任の声が聞こえてくる。

「はーい、もう鳴ってますチャイム!席に着いて~。ホームルームはサクッと連絡事項からいきますよ~」

一一一ホームルーム始まったし、とりあえず文章打つのはまた後にしよう…。

そして授業に関する話と適当な連絡が終わり、行事に関する話が始まった時だ。そこで飛んできたワードに那月はピクッと耳を反応させる。

「えーと、前も話した通りもうすぐ夏夜行祭があるんだけどもー、その準備とかを風紀委員と体育委員がやってるのね。だけど今年ちょっと人足りないみたいでー、1年の各クラスから2人助っ人が欲しいらしくて」

一一一え!?夏夜行祭の準備…?それに風紀委員…ってことは!彩世先輩がいる!?

「放課後にあと2.3回準備があるから、それの手伝いな。それで力仕事もあるから男子2人欲しいらしいんだけど、手伝ってもいいよって言う心優しい男はいる?」

「は、はい!!」

「お?篠井ー!いい挙手!やってくれる?」

「や、やります」

即座に立候補したのは那月ただ1人。それを物珍しそうに見る他の生徒達だが、「面倒臭い~」などとボヤく声が聞こえあとは誰も手を挙げる雰囲気は無い。

一一一ちょっと動機は不純だけど…先輩に会えるし…、しかもこういう行事の準備ってやったことなかったからいい機会かも…!

「じゃあー、あと1人!誰か…」

「はーい、俺やります」

しかし静かに那月が意気込んだ時、また1人手を挙げた。誰もやりたがる雰囲気が無かった中、那月を見て立候補したようだ。

「相野~お前もやってくれるか!助かる助かる」

一一一え!相野くん!?そっか、男子2人だもんな。何も考えずに手挙げてた…。でもまさか相野くんが立候補するとは…!

「じゃあ篠井と相野!早速今日の放課後、第1正門まで集合らしい。よろしくな!いやーあっさり決まってよかったよ」

「はーい」

那月が相野の方をゆっくり振り返ると、前後の男友達に「お前マジ?あんな面倒臭そうなの」などとちょっかいをかけられているようだった。

だがそれを「いいの、俺がやりたかったから」と爽やかにかわしてから那月の視線に気付き、ニコッと笑顔を見せる。那月もそれに返すかのように、微笑みながら頷いた。

「相野すげー、良い奴じゃん。あんなの立候補するとか」
「だよな。放課後とか普通にめんどい。てか篠井と一緒ってノリ違くね?やりづらそー」
「…だからだけどね」
「えー?」
「篠井くんだから、立候補した」
「はー?どゆこと?」

そんな会話に気付いていない那月は、ただただ今日の放課後が待ち遠しいようだ。

一一一久々に先輩に会える…。あのキスのことがあってから初めてだけど…こんなタイミングよく絶好の機会ができたんだから、何かキッカケにしないと!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...