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錯乱
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那月に覆い被さったその人は力いっぱい那月を抱き寄せ、振り下ろされた刃物に背中を向ける。布が切れる音が聞こえた時、一瞬で切った相手が誰なのか理解した夏希。思わず手に持っていたハサミを地面に落とした。
「…っ、い、ろ、?」
「彩世先輩!!?」
庇って切られたのは彩世だった。
思い切り走ってきたようで、呼吸を荒げながら険しい顔つきをしている。状況を飲み込んできた那月は、足の力が一気に抜けて地面にへたりこんだ。
「せ、先輩!!なんで…う、腕が…!」
「大丈夫、かすっただけだし。シャツがちょっと切れただけだよ」
青ざめながらしがみついてくる那月の頭を撫で、安心させるように笑った彩世。右腕のシャツが斜めに切れていて、ハサミがかすった肌には1本の傷ができている。幸い、そこまで深くはなさそうだが痛々しく切られた直後で血が滲んでいる。
「ご、ごめ…なさ…、僕を、かばって…」
「大丈夫だから落ち着いて」
「那月くん!!大丈夫!?」
「あ、君。ごめん、ナツくんのことお願い」
「…っは、はい」
彩世は駆け寄ってきた相野に那月を支えるように体を引き渡し、ゆっくり立ち上がる。
那月を隠すように前に出て、呆然としている夏希に近寄った。夏希は正に放心状態で、目の焦点が合っていないようだ。
「…夏希、もうやめよう」
「…あ、あ、」
「周りの人を傷つけて、それで本当に救われる?こんなことしても、俺は変わらないよ」
「……お、れ、あ、あ…」
「怒るなら俺に怒って、殴るなら俺を殴って。ここまでお前が酷くなったのは、今までハッキリしなかった俺のせいだから。でもこんな刃物を使うのは違う。それに、関係ない人を巻き込むのも違うよ」
落ち着いたトーンの声だが、夏希は彩世がとても怒っていると話す前から気付いた。そして少しだけ腕から血が垂れていても、それを気にすることなく夏希を鋭く見つめている。
「……っう、」
好きな人を傷付けてしまったことと、那月を庇ったこと、そして彩世が今までで1番怒っていること。夏希は目の前で起こっている事実に混乱し、ショックを受けているようで汗を垂らしながら目を泳がせている。
その様子を後ろから見ていた那月は、先程の恐怖に震えながらも何とか立ち上がろうと足に力を入れていた。
「なつ…」
「こっ、来ないで!!!お願い来ないで!!もう…、なんで、なんで!!!」
「あっ、おい!!」
また彩世が1歩近付いた時。夏希は叫びながら駅の方へと勢いよく走り出してしまった。
「夏希!!」
その後を追い込かけて走り出した彩世。残された2人はその場にしゃがみこんでいたが、那月は地面に手をつき腰を無理やり上げた。
「那月くん…?何を」
「ぼ、僕行かないと!!」
「え?何言って…危ないよ!」
一一一立たなきゃ、立ち上がるんだ。だって、夏希さんは僕に似てる。苦しんでた過去も、おかしくなりそうなほど辛い日々も、きっと同じように感じてきたんだ。
「夏希さんを、あ、あのまま放っておけない…!」
「ちょ、ちょっと!」
一一一でもすごく怖かった。先輩が来てくれなかったら、重傷を負ってたかもしれない。それに先輩は僕を庇って怪我をしてしまった。全部の状況が怖いのに…怖くて仕方ないのに、足が動く。このままじゃダメだって思うから。守られてばかりじゃダメなんだ…。
「那月くん!待って!」
2人が走って行った方向に飛び出して行った那月と、その背中を追って相野も走り出した。
一一一きっと駅の方へ走っていったはず。さっきの夏希さんの精神状態だったらきっと…。何があってもおかしくない…!
「…っ、い、ろ、?」
「彩世先輩!!?」
庇って切られたのは彩世だった。
思い切り走ってきたようで、呼吸を荒げながら険しい顔つきをしている。状況を飲み込んできた那月は、足の力が一気に抜けて地面にへたりこんだ。
「せ、先輩!!なんで…う、腕が…!」
「大丈夫、かすっただけだし。シャツがちょっと切れただけだよ」
青ざめながらしがみついてくる那月の頭を撫で、安心させるように笑った彩世。右腕のシャツが斜めに切れていて、ハサミがかすった肌には1本の傷ができている。幸い、そこまで深くはなさそうだが痛々しく切られた直後で血が滲んでいる。
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「那月くん!!大丈夫!?」
「あ、君。ごめん、ナツくんのことお願い」
「…っは、はい」
彩世は駆け寄ってきた相野に那月を支えるように体を引き渡し、ゆっくり立ち上がる。
那月を隠すように前に出て、呆然としている夏希に近寄った。夏希は正に放心状態で、目の焦点が合っていないようだ。
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「周りの人を傷つけて、それで本当に救われる?こんなことしても、俺は変わらないよ」
「……お、れ、あ、あ…」
「怒るなら俺に怒って、殴るなら俺を殴って。ここまでお前が酷くなったのは、今までハッキリしなかった俺のせいだから。でもこんな刃物を使うのは違う。それに、関係ない人を巻き込むのも違うよ」
落ち着いたトーンの声だが、夏希は彩世がとても怒っていると話す前から気付いた。そして少しだけ腕から血が垂れていても、それを気にすることなく夏希を鋭く見つめている。
「……っう、」
好きな人を傷付けてしまったことと、那月を庇ったこと、そして彩世が今までで1番怒っていること。夏希は目の前で起こっている事実に混乱し、ショックを受けているようで汗を垂らしながら目を泳がせている。
その様子を後ろから見ていた那月は、先程の恐怖に震えながらも何とか立ち上がろうと足に力を入れていた。
「なつ…」
「こっ、来ないで!!!お願い来ないで!!もう…、なんで、なんで!!!」
「あっ、おい!!」
また彩世が1歩近付いた時。夏希は叫びながら駅の方へと勢いよく走り出してしまった。
「夏希!!」
その後を追い込かけて走り出した彩世。残された2人はその場にしゃがみこんでいたが、那月は地面に手をつき腰を無理やり上げた。
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「那月くん!待って!」
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