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それでも俺は
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一一一先輩が僕の家の前に!?どういうことだ!?
携帯を持ったまま、慌てて部屋着のまま玄関へと向かう那月。ドアを開けると、そこには同じく携帯を耳に当ててまだ制服姿の彩世がいた。
「彩世先輩…!な、なんでここに…」
「あ…、ごめん。急に押しかけちゃって…今日あんなことあったし心配で」
「…っ!そ、そんな」
一一一まさか先輩が家に来るなんて…!熱出して送ってもらった時以来だ…。しかも夜だし、いつもと少し雰囲気が違う…。
携帯をしまった彩世の二の腕には、血が滲んだ絆創膏が貼り付けられている。それにハッと気付き、また痛々しく那月は眉を下げる。
「夏希も家に送って、落ち着いて眠るまでついてたからもう大丈夫だよ。今後のことも…ちゃんと話してきたから。ナツくんにこんなことしないって約束させた」
「…っ先輩、あの。やっぱり、夏希さんは僕を嫌って…」
「いや…、少し目の敵にしてたのはあると思うけど…こうなっちゃったのは、昨日俺がこの関係は終わりにしたいって話したからだ」
「…そ、それって」
「今日のこと…さっき聞いた。夏希、自分から話してきたんでしょ?中学の時のこと」
「あっ、は、はい…」
一一一中学生の時、男の人が好きだって周りに知られていじめられて…友達はもちろん、親も先生も誰も理解してくれなくて先輩だけがそばにいてくれたって話だ。
「そう…それがきっかけで、夏希は俺に執着するようになってさ。俺も最初はやっぱり心配でそばについてたけど…いつの間にか自分の生活も人間関係も疎かにしてまで、夏希に言われるまま動いてたんだ。呼ばれたら何時でも何処へでも行って、みたいな」
「…っ!えっ、そ、そうだったんですか」
「うん。俺も、だんだんこんなのおかしいって思ったけど。中々ハッキリ言えなかったし、夏希の精神状態を知ってたから放置することもできなかった。正直、今まで幼なじみとしてはおかしい関係だったんだ」
那月は今日のことを思い返した。あの傍から見たら異常なまでの彩世への執着。でもそれは、彩世のことを好きだったからだと、自分と同じ気持ちだからだと分かった。
ただ夏希の場合、その気持ちは純粋な恋心から拗らせていき、異常な独占欲や執着へと変わっていってしまったのだ。
「でも、ナツくんと出会って接していくうちに…決心がついたから話したんだ。怖いのに辛いのに変わろうって頑張るナツくんを見て、勇気を出して俺にぶつかってきてくれたナツくんを見て…俺も前に進もうって思えたから」
「…っえ、」
「いきなり変わることは出来ないと思ってるけど…でも俺も踏み出せたし、少しずつだけど状況を変えることができた。でもそのせいで、ナツくんを巻き込んで怖い思いさせた…。本当にごめん」
「い、いや…!僕が変われたのは、先輩のおかげだし…!きょ、今日のことも…先輩に助けてもらいましたし…」
彩世は那月の前へ1歩踏み出して、頭の上へ手を伸ばす。撫でようとしたのだろうが、那月は肩をビクッと跳ね上げた。
「…ごめん。また怖くなった?俺のこと」
「ち!違います…!す、すいません…。反射的に…体が勝手に、つ、つい…」
「ううん、そうだよ。あんな事があった後で身構えるに決まってる」
「…っで、でも!先輩のことは怖くないです!し、信じてください!!」
頭の上に伸ばしていた手を顔の横にずらし、彩世は那月の頬を優しく撫でた。一瞬、那月は目を閉じて体がビクついたが、その後は触れられる彩世の体温を感じ、ホッと落ち着いた。
「…俺だって、ナツくんがいたから変わろうと思えたし、救われてたよ」
「え、え…っ!」
「昔、優しすぎてつまんないって2年付き合ってた彼女に浮気されて振られて…、その優しさがいけないって周りにも言われて、夏希には残酷だって言われてた。全部俺自身を否定されてる気がして、ずっとどうしたらいいか分からなかった。少し冷たい態度取ったみたりね」
「先輩…」
「でも、ナツくんとあの日出会ってさ、なんか夏希に少し似てる所を感じてほっとけなくて。徐々に自分に慣れてきてくれたことが嬉しくて…。最初はそれだけだったのに、ナツくんの健気な所とか怖がりなのに意思が強い所とか…。俺の素を知っても、くれる言葉が全部真っ直ぐで…嬉しかったし、笑ってくれたらドキドキした。会いたいなって思うようになってた」
「…っ」
「だから、いつの間にか俺の中でナツくんの存在が大きくなってたんだよ」
一一一先輩の手が温かい…。むしろ前に触れた時よりも熱い。撫でられる度に温かすぎて涙が出そう…。
「…っぼ、僕は、先輩に怪我させちゃったし、出会った時も、今もいつも助けられてばかりで…!あ、呆れられてもおかしくないと思って…!」
「呆れるわけないでしょ。それに、今日はナツくんが俺と夏希を救ってくれたんだよ」
「でっ、でも…!」
「だからいいの。確かに周りが言うように、俺は誰にでもいい顔して優しいだけかもしれないけど…他の人にはここまでしない」
「え……」
「ナツくんだからだよ。ここまで気にしてるのは」
彩世はもう片方の手でポカンと涙ぐんでいる那月の頬に手を添え、両側から柔らかい頬を包んだ。
「ほんとに…今日だってナツくんが傷付けられそうになって、マジで焦った。死に物狂いで飛び込んだよ」
「…っせ、先輩、あの」
「もちろん夏希は大事な幼なじみだけど、それとはまた違う。この…ナツくんに対しての気持ちは」
「…っえ、」
一一一こ、これは夢?こんな胸がいっぱいになることを、先輩にたくさん言われて…こんな近くにいるなんて…。夢じゃない、よね。
「俺、ナツくんのことが好きだよ」
携帯を持ったまま、慌てて部屋着のまま玄関へと向かう那月。ドアを開けると、そこには同じく携帯を耳に当ててまだ制服姿の彩世がいた。
「彩世先輩…!な、なんでここに…」
「あ…、ごめん。急に押しかけちゃって…今日あんなことあったし心配で」
「…っ!そ、そんな」
一一一まさか先輩が家に来るなんて…!熱出して送ってもらった時以来だ…。しかも夜だし、いつもと少し雰囲気が違う…。
携帯をしまった彩世の二の腕には、血が滲んだ絆創膏が貼り付けられている。それにハッと気付き、また痛々しく那月は眉を下げる。
「夏希も家に送って、落ち着いて眠るまでついてたからもう大丈夫だよ。今後のことも…ちゃんと話してきたから。ナツくんにこんなことしないって約束させた」
「…っ先輩、あの。やっぱり、夏希さんは僕を嫌って…」
「いや…、少し目の敵にしてたのはあると思うけど…こうなっちゃったのは、昨日俺がこの関係は終わりにしたいって話したからだ」
「…そ、それって」
「今日のこと…さっき聞いた。夏希、自分から話してきたんでしょ?中学の時のこと」
「あっ、は、はい…」
一一一中学生の時、男の人が好きだって周りに知られていじめられて…友達はもちろん、親も先生も誰も理解してくれなくて先輩だけがそばにいてくれたって話だ。
「そう…それがきっかけで、夏希は俺に執着するようになってさ。俺も最初はやっぱり心配でそばについてたけど…いつの間にか自分の生活も人間関係も疎かにしてまで、夏希に言われるまま動いてたんだ。呼ばれたら何時でも何処へでも行って、みたいな」
「…っ!えっ、そ、そうだったんですか」
「うん。俺も、だんだんこんなのおかしいって思ったけど。中々ハッキリ言えなかったし、夏希の精神状態を知ってたから放置することもできなかった。正直、今まで幼なじみとしてはおかしい関係だったんだ」
那月は今日のことを思い返した。あの傍から見たら異常なまでの彩世への執着。でもそれは、彩世のことを好きだったからだと、自分と同じ気持ちだからだと分かった。
ただ夏希の場合、その気持ちは純粋な恋心から拗らせていき、異常な独占欲や執着へと変わっていってしまったのだ。
「でも、ナツくんと出会って接していくうちに…決心がついたから話したんだ。怖いのに辛いのに変わろうって頑張るナツくんを見て、勇気を出して俺にぶつかってきてくれたナツくんを見て…俺も前に進もうって思えたから」
「…っえ、」
「いきなり変わることは出来ないと思ってるけど…でも俺も踏み出せたし、少しずつだけど状況を変えることができた。でもそのせいで、ナツくんを巻き込んで怖い思いさせた…。本当にごめん」
「い、いや…!僕が変われたのは、先輩のおかげだし…!きょ、今日のことも…先輩に助けてもらいましたし…」
彩世は那月の前へ1歩踏み出して、頭の上へ手を伸ばす。撫でようとしたのだろうが、那月は肩をビクッと跳ね上げた。
「…ごめん。また怖くなった?俺のこと」
「ち!違います…!す、すいません…。反射的に…体が勝手に、つ、つい…」
「ううん、そうだよ。あんな事があった後で身構えるに決まってる」
「…っで、でも!先輩のことは怖くないです!し、信じてください!!」
頭の上に伸ばしていた手を顔の横にずらし、彩世は那月の頬を優しく撫でた。一瞬、那月は目を閉じて体がビクついたが、その後は触れられる彩世の体温を感じ、ホッと落ち着いた。
「…俺だって、ナツくんがいたから変わろうと思えたし、救われてたよ」
「え、え…っ!」
「昔、優しすぎてつまんないって2年付き合ってた彼女に浮気されて振られて…、その優しさがいけないって周りにも言われて、夏希には残酷だって言われてた。全部俺自身を否定されてる気がして、ずっとどうしたらいいか分からなかった。少し冷たい態度取ったみたりね」
「先輩…」
「でも、ナツくんとあの日出会ってさ、なんか夏希に少し似てる所を感じてほっとけなくて。徐々に自分に慣れてきてくれたことが嬉しくて…。最初はそれだけだったのに、ナツくんの健気な所とか怖がりなのに意思が強い所とか…。俺の素を知っても、くれる言葉が全部真っ直ぐで…嬉しかったし、笑ってくれたらドキドキした。会いたいなって思うようになってた」
「…っ」
「だから、いつの間にか俺の中でナツくんの存在が大きくなってたんだよ」
一一一先輩の手が温かい…。むしろ前に触れた時よりも熱い。撫でられる度に温かすぎて涙が出そう…。
「…っぼ、僕は、先輩に怪我させちゃったし、出会った時も、今もいつも助けられてばかりで…!あ、呆れられてもおかしくないと思って…!」
「呆れるわけないでしょ。それに、今日はナツくんが俺と夏希を救ってくれたんだよ」
「でっ、でも…!」
「だからいいの。確かに周りが言うように、俺は誰にでもいい顔して優しいだけかもしれないけど…他の人にはここまでしない」
「え……」
「ナツくんだからだよ。ここまで気にしてるのは」
彩世はもう片方の手でポカンと涙ぐんでいる那月の頬に手を添え、両側から柔らかい頬を包んだ。
「ほんとに…今日だってナツくんが傷付けられそうになって、マジで焦った。死に物狂いで飛び込んだよ」
「…っせ、先輩、あの」
「もちろん夏希は大事な幼なじみだけど、それとはまた違う。この…ナツくんに対しての気持ちは」
「…っえ、」
一一一こ、これは夢?こんな胸がいっぱいになることを、先輩にたくさん言われて…こんな近くにいるなんて…。夢じゃない、よね。
「俺、ナツくんのことが好きだよ」
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