零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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嫌だ

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家を飛び出したのはいいものの…おい、風音。僕はどこへ向かってるんだ?

日下部に会いたい…そう思っていてもたってもいられなくなって……外に出てきたけど。
大体どこにいるか分かんないし、あんな話の後で連絡しても返してくれるかどうか…。

そもそも、日下部は僕のことは何とも思ってないんだから、いきなり今会いたいとか言われても…断られるだけかもしれない。

「あっ…カフェ…行ってみよ」

まさか、バイト先にいるなんてことないだろうけど…前に行きたい的なこと言ってたし、もしかしたらの可能性も…。

でも…元々、僕は雪菜さんのこと好きだったのに…日下部は今のこの気持ちを知ったらどう思うんだろう。

ていうか…知った所で、ごめんって言われるだろうけど…。

「いやいや、頑張れって姉ちゃんも言ってくれたし、頑張るって思ったんだろ、自分…!」

叶わない確率の方が高くても…やっぱり何もしないままじゃ、あの頃の僕と同じだ。

「着い……えっ!!?あ、あれ……」

バイト先のすぐ近くまで着いた時、入り口に男の人が2人立っているのが見えた。2人とも背が高くて、1人は学生服…って。

い、いた…。

ほぼいないと思ってたのに。

日下部が立ってる…。
と、もう1人は…雪菜さんのお兄さん?

え、なんであの2人が一緒に…?

「いや幼なじみなんだから、一緒にいたって不思議じゃないし…」

でも、なんで僕は足を止めてしまったんだろう。

「…あ、」

2人はカフェから出てきたばかりのようで…何か言葉を交わしてる。そして、光也さんの手が日下部の頭に伸びて、そのまま優しく撫でた。

なんだろう、何話してるんだろう…。

ただ頭を撫でるなんて、仲が良い人同士なら有り得るだろうし…でもそれだけじゃない。

日下部が、頷きながら無理せずに笑ってる…。何も取り繕ってないような笑顔だ。何をしてどんな話でそうなったんだ?


なんかどうしよう。
嫌だって思ってしまう…。

でも、日下部はあの人のことを好きで…

「…っ!!あ」


その場で固まっていたら、不意にこちらを向いた日下部と視線が合わさった。
光也さんはその場で別れたらしく、日下部に手を振ってから反対側へと歩いて行く。


「…風音くん?」

日下部だけが、僕に気付いてこちらへ足を踏み出した。

なんて言ったら…何をどう話したらいいか…吹っ飛んだ。

「…っ」

「あっ、ちょっと!待って…!」

来た道を戻るように、僕は振り返って走り出す。もう頭の中がごちゃごちゃだ。

「はぁはぁ…っ、待って!なんで逃げるの!風音くん!!」

え、なんでそんな追いかけてくるんだよ…!

もうこの関係やめたら、構わないって言ってたくせに…!

「うわ…っ!!」

「…っは、ぁはぁ、つ、かまえた、」

「はぁ…っ、な、んで」

カフェが見えなくなるくらいまで走った時、追いつかれた僕は日下部に腕を掴まれて、立ち止まった。

僕を掴む手は、少し汗ばんでる。

しかも必死に息を吸って…なんでそこまでして。

「…っなんで、追いかけてきたの、」

「風音くんこそ、なんで逃げるの?」

「…っそ、れは」
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