零下3℃のコイ

5

温かい君【完】

「や、ぁ…一一！」

胸に今まで感じたことのない吸われる感触。初めての痺れるような快感。
それが次々に色んな所に落とされるから…ただ身をよじるしかできない。

「うっ…や、はずかし……」

「可愛いよ、風音くん」

「……っ」

「今まで色んな練習一緒にしたきたけど、もうこれからは練習なんてなしだからね」

胸、首、腕…色んなところに感じるくすぐったさとわずかな痛み。それに耐えていたら、するりと下半身に触れられる感触がした。

「まっ…！！まて！そこは…っ」

「大丈夫だから…、触らせて」

「……～～！ぁ、ぁ」

いつ降ろされたのか、下着とズボンを纏ってない僕の下半身に触れる大きな手。

「それ……っ、だ、め…」

なにこれ…人に触られるなんて初めてで…こんなの1番恥ずかしいし、消えたくなるほど顔から火が出そう。

「くっ…日下部…」

僕の顔をじっと見ながら、日下部の手の扱い方が早くなる。涙目になりながら反対の手を握ると、日下部からはぁ…と荒く息が漏れた。

「ぁっ…、まっ…も、むり…」

「…っいいよ、いって？」

「ん…一一一、あ、あぁ…～～－－－！」

はぁはぁ、とお互いの激しい呼吸と共に、日下部の手を汚す僕のそれ。

もう…さっき匂い嗅いでたこととか忘れちゃうほど、全部が官能的で刺激が強い。

「…まだ終わってないから、こっちもだよ」

「へ！？あっ…」

「可愛い…、早く繋がりたいよ…」

いつの間にか、とろっとした物を手に纏った日下部は、指を僕の中にゆっくりと解しながら入れた。

「ぁ…っ！なに、これぇ……」

「…っ痛い？」

「い、たくないけど…っ、変、なんか…へん…一一！」

「痛かったら言って、」

どろどろと解されていく中、全身は汗ばんで熱くて、ぶるぶると震えが止まらない。

それに、動く度に日下部の大きくなったモノが下半身に当たって…僕でこんな風になってくれてるかと思うと…ゾクゾクしてしまう。

「ん、やぁ…、ぁ、ぁ…一一一一！」

ちゅく…っと、後ろを解しながら首に吸いつかれたら、何かが弾け飛んで…体がしなってしまった。

「あぁ……一一一一っ」

「…っはぁ、大丈夫？練習なしで、こっちでもいけたね」

「うっ…、く、くさかべ……」

「なに…？」

「はっ…、はやく……」

涙と汗で髪の毛も張り付いて、ぐちゃぐちゃな顔してるはずなのに…見られるとか関係なしに、日下部の腕を引っ張って、本能のまま強請った。

「…っ、いれるね。痛かったら言うんだよ」

「う、うん……」

くるくる、とあっという間にゴムを自分のモノにつけてる日下部は、初めてってほんとか？と疑ってしまうほど手早い。

なんて考えていたら、日下部はバサ…ッと上のシャツを脱ぎ捨てて僕に覆い被さった。

間近で見る好きな人の生身の体に…胸が激しく高鳴る。
あ、これが女心ってやつ…？

「いっ……一一っ、あ……」

「やっば……っ、キツい、痛い？」

そして、日下部のが中に入ってくる圧迫感に心臓が押し上げられるみたい。

「痛い…、け、ど大丈夫……」

「無理しないで…、1回抜くよ、」

「いい！やだ！抜かないで！」

離れようとした日下部の体に勢いよく抱きついて、抜かれるのを阻止した。

だって…痛いけど、幸せだから。離れてほしくない。

「だ、大丈夫なの……？」

「うん…、日下部と、こうやってできるの…嬉しい、から」

「……っ風音くん、」

ゆっくりと動き出した日下部は、僕の頬を撫でながら愛おしそうに見つめてキスをした。

その律動に合わせて、痛みと一緒に僅かな快感を拾い始めてしまう。

「……っ、ぁ、」

「は…一一一、ぁ、風音くん……好きっ…初めて、僕にくれて、ありがとう……」

「んっ……、う……」

ぽたぽたと汗を垂らしながら、切なそうに眉をしかめて呼吸をする日下部が、今世界で1番かっこいいと思ってしまう。

「…っ日下部、僕も、…だよ…っ」

「風音くん…お願いがあるんだけど」

「なに…？」

「名前で…零って呼んで？」

あ、そういえば名前で呼んだことなかった…。
初めて話した時、絶対呼んでやらないって意地になったから日下部って呼んでたんだよな…。

でも、お願いがそれって…可愛いとこあるな。

「…っれ、れい、」

「……っ！は、」

「ぁっ、な、なんで早くなっ……」

やばい、やばい。名前で呼んだ途端、動きがより激しくなって、ダメなとこに当たってる。

まさか…あんな恋愛初心者でヘタレだった僕が、好きな人とこんなこと出来るなんて…想像もしてなかった。

「もっと、呼んで……っ」

ビリビリと、背筋に電気が走るみたいに体が痺れて、歯がカタカタと震えて揺れる。


「零、れい……っ、ぁ、、もういっ…」

「風音くん…っ、あ、僕も…っ」

「零…一一一！いっ…く…、！」

汗ばむほど熱くて、体が溶けるような感覚…。
そっか、これが…

「あ、はぁ…はぁ、大丈夫？風音くん」

「う…ん、大丈夫…」

ぎゅっと日下部の胸に抱きついたら、脱力感と何とも言えない気持ちになった。切ないような、苦しいような幸せ。

そのまま、ごろんと横になった日下部は、僕の頭を腕に乗せたまま横向きで抱き寄せた。

これは、腕枕…。

「幸せ…風音くん、好きだよ…」

「…っぼ、僕も。れ、零」

「ふふ、やっと呼んでくれた」

嬉しそうに笑うその顔は…初めて話した時と違う。

氷が溶けたみたいに温かくて、子供みたいな無邪気な笑顔。ずっと僕だけが見ていきたい…。

「ねぇ、風音くん。僕をちゃんと見てくれてありがとう」

「な、なんだよそれ…」

「なんか言いたくなったから。これからも、僕のそばにいてくれるよね？」

改めて確認するみたいにそんなことを聞くから、僕は体を起こして、日下部の唇にちゅっと触れるだけのキスをした。

「…いるに決まってる」

「…っあはは、」

「なんで笑うんだよぉ！！」

「可愛いから」

「だから可愛いって言うなー！」

そばにいる。ずっと…。

始まったばかりの未熟な恋かもしれないけど、そう強く思うのは…君だから。

僕と、彼の、熱すぎて冷たく感じるような…
迷って、もがきながら見つけた恋だから。


「…好きだ！零！」

一一fin一一