95 / 107
2 動乱の始まり編
095 王宮への飛行2
しおりを挟む
その頃ゼノビアは、王宮の中に与えられた私室で就寝中であった。今は夜中の3時である。昼間は任務で気を張っているため、夜は疲れてよく眠れる。しかし今日はいつもと違った。
部屋のドアを激しくノックする音が聞こえる。ゼノビアは不審に思いつつも、何事かが起こったことを悟り、急いで上着を来てドアを明ける。
「何事だ!?」
衛兵がかしこまってドアの前に立っている。
「ただいま、王宮の門のところに、ジルフォニア=アンブローズ殿がお見えになっています。緊急の要件だということです」
「なに? ジルが?」
ゼノビアは、この時間、そしてこの場所で聞く名前として、最も場違いな名前を聞いた気がした。ジルが一体何の用事だろうか?
「分かった。少ししたら、私が自分で門へ行く」
ジルの要件をいぶかりつつ、ゼノビアは外へ出る準備をした。薄いネグリジェを脱ぎ、戦士としての服に着替える。部屋から出る時に、ゼノビアは鏡でおかしなところがないかチェックする。
「ふふ」
ゼノビアは自分のことが可笑しくなって、つい笑いをもらしてしまった。自分が外見を気にするとは、以前には無かったことだ。
門まで行くと、衛兵の側にジルが立っていた。緊急の要件というだけに、深刻な表情を浮かべている。ゼノビアはジルに会えた嬉しさを押し隠してジルに話しかけた。
「ジル、どうしたんだ? お前がこんな時間に訪ねてきたんだ、よほどの大事だろうな」
「ええ、そうです。ですが、ここで話せることではありません。どこか内密な話しができるところで……」
「分かった。私の私室で話そう」
ゼノビアはジルを自分の私室へと案内した。
「それで、緊急の要件とはなんだ?」
「帝国のエルンスト=シュライヒャーのことはご記憶にありますよね?」
「シュライヒャー? ああ、以前君と一緒に娘の遺品を届けにいった男だろ? 帝国の有名な軍人だ。彼がどうかしたか?」
「実はエルンスト=シュライヒャーが、シュバルツバルトへの亡命を希望しています」
ゼノビアは驚いて眼を大きく見開いた。
「なに!? なぜジルがそれを知っているのだ?」
それが本当なら、確かにこれは一大事と言って良いだろう。
「そして更に重要なことは、アルネラ様の誘拐事件の首謀者が帝国であったことです」
「なにぃい!?」
ゼノビアは今度は思わず腰をあげ、ジルにつかみかかった。
「本当なのか!? ジル、なぜ君がそのことを知っているのだ!」
アルネラの護衛を担当しているだけに、ゼノビアは誘拐事件以来、自分でも独自に捜査をしていた。しかし、これといった手がかりを見つけることができなかったのだ。それだけに、ジルがもたらした情報は、ゼノビアにとって青天の霹靂だった。
「これは、エルンスト=シュライヒャーからの情報です」
ジルはエルンストが自分に使者を送った経緯について説明した。レミアの死を明らかにするため、エルフのミリエルを帝国に送ったこと、彼女がみつかりエルンストによって許され、逆に使者としてジルに遣わされたこと、など。
ジルの話しを、ゼノビアは非常に厳しい表情で聞いていた。新たな情報が多すぎて、頭の中で整理するのも難しいだろう。
「これがエルンスト=シュライヒャーから王国宛の書状です」
ジルは机の上に書状を置き、ゼノビアに差し出した。
「この書状は私は中を見ていません。王国のしかるべき役職の方にお渡しするべきだと思いました」
「ふむ、そうか……」
ゼノビアは一瞬自分で良いのだろうかとためらった。しかし今は夜中で必要以上に騒ぐのは好ましくない。近衛騎士団副団長の自分なら、これを読む資格はあるだろうと思い直した。その上で、大臣なり大魔導師なりに書状を渡せばよいのだ。そう決めたゼノビアは、書状を開封して目を通すことにした。
部屋のドアを激しくノックする音が聞こえる。ゼノビアは不審に思いつつも、何事かが起こったことを悟り、急いで上着を来てドアを明ける。
「何事だ!?」
衛兵がかしこまってドアの前に立っている。
「ただいま、王宮の門のところに、ジルフォニア=アンブローズ殿がお見えになっています。緊急の要件だということです」
「なに? ジルが?」
ゼノビアは、この時間、そしてこの場所で聞く名前として、最も場違いな名前を聞いた気がした。ジルが一体何の用事だろうか?
「分かった。少ししたら、私が自分で門へ行く」
ジルの要件をいぶかりつつ、ゼノビアは外へ出る準備をした。薄いネグリジェを脱ぎ、戦士としての服に着替える。部屋から出る時に、ゼノビアは鏡でおかしなところがないかチェックする。
「ふふ」
ゼノビアは自分のことが可笑しくなって、つい笑いをもらしてしまった。自分が外見を気にするとは、以前には無かったことだ。
門まで行くと、衛兵の側にジルが立っていた。緊急の要件というだけに、深刻な表情を浮かべている。ゼノビアはジルに会えた嬉しさを押し隠してジルに話しかけた。
「ジル、どうしたんだ? お前がこんな時間に訪ねてきたんだ、よほどの大事だろうな」
「ええ、そうです。ですが、ここで話せることではありません。どこか内密な話しができるところで……」
「分かった。私の私室で話そう」
ゼノビアはジルを自分の私室へと案内した。
「それで、緊急の要件とはなんだ?」
「帝国のエルンスト=シュライヒャーのことはご記憶にありますよね?」
「シュライヒャー? ああ、以前君と一緒に娘の遺品を届けにいった男だろ? 帝国の有名な軍人だ。彼がどうかしたか?」
「実はエルンスト=シュライヒャーが、シュバルツバルトへの亡命を希望しています」
ゼノビアは驚いて眼を大きく見開いた。
「なに!? なぜジルがそれを知っているのだ?」
それが本当なら、確かにこれは一大事と言って良いだろう。
「そして更に重要なことは、アルネラ様の誘拐事件の首謀者が帝国であったことです」
「なにぃい!?」
ゼノビアは今度は思わず腰をあげ、ジルにつかみかかった。
「本当なのか!? ジル、なぜ君がそのことを知っているのだ!」
アルネラの護衛を担当しているだけに、ゼノビアは誘拐事件以来、自分でも独自に捜査をしていた。しかし、これといった手がかりを見つけることができなかったのだ。それだけに、ジルがもたらした情報は、ゼノビアにとって青天の霹靂だった。
「これは、エルンスト=シュライヒャーからの情報です」
ジルはエルンストが自分に使者を送った経緯について説明した。レミアの死を明らかにするため、エルフのミリエルを帝国に送ったこと、彼女がみつかりエルンストによって許され、逆に使者としてジルに遣わされたこと、など。
ジルの話しを、ゼノビアは非常に厳しい表情で聞いていた。新たな情報が多すぎて、頭の中で整理するのも難しいだろう。
「これがエルンスト=シュライヒャーから王国宛の書状です」
ジルは机の上に書状を置き、ゼノビアに差し出した。
「この書状は私は中を見ていません。王国のしかるべき役職の方にお渡しするべきだと思いました」
「ふむ、そうか……」
ゼノビアは一瞬自分で良いのだろうかとためらった。しかし今は夜中で必要以上に騒ぐのは好ましくない。近衛騎士団副団長の自分なら、これを読む資格はあるだろうと思い直した。その上で、大臣なり大魔導師なりに書状を渡せばよいのだ。そう決めたゼノビアは、書状を開封して目を通すことにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
170
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる