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2 動乱の始まり編
107 ジルフォニア=アンブローズ、宮廷魔術師になる2
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「それで、エルンスト殿はどちらかな?」
「は、こちらがエルンスト=シュライヒャー殿です」
ゼノビアは脇に寄り、エルンストが通る場所を空ける。エルンストが前にやってきて、玉座の前で片膝をつく。
「国王陛下、私がエルンスト=シュライヒャーです。此度は寛大にも私の亡命を受け入れていただき、感謝の念に堪えません。これからは陛下に我が忠誠を捧げます」
エルンストが王に深く頭を下げた。
「ふぉっふぉ。エルンスト、貴公ほどの名将を我が国に迎えることができて、余も嬉しく思っておるぞ」
王がそうエルンストに声をかけた。これでエルンストはシュバルツバルト王宮に正式に受け入れられたと言って良い。
「それでエルンスト殿、早速だが貴公の知っていることを話してもらいたい。先のアルネラ様の誘拐事件は帝国による陰謀だと言うのは本当か?」
ユベールがエルンストにたずねた。これは今回の行為の正当性を主張する上でも、非常に大事なところである。
「間違いございません。私の知るところによれば、全て皇帝、大魔導師ザービアック、『黒の手』の隊長ベイロンによる仕業でございます」
エルンストは自分が調べあげた事実について全て説明した。エルンストの口から改めて事件の真相を聞き、同席した者たちは帝国の悪意に対して敵対心を抱いた。
「貴公はそれを公の場で証言できるか?」
「はっ、この老骨がお役に立つのであれば、喜んで証言いたしましょう」
おお! と脇から歓声があがった。これで帝国に対しては優位な立場に立つことができるだろう。バルダニアもこれを聞けば、シュバルツバルトにちょっかいを出すことはあるまい、人々はそう思った。
「次に、ジルフォニア=アンブローズ、前へ!」
ユベールの言葉に、ジルは一歩前へ進み出た。人々の好奇の目がジルに注がれる。
「貴公の今回の働き、実に見事である。ゼノビア殿からも、すでに貴公の働きが勲功第一であると申し出があった」
ジルは斜め後方に跪《ひざまづ》くゼノビアの方を見た。それに気づいたゼノビアが片目をつぶってみせる。
「先には二度に渡りアルネラ様の命を救ったことも、王国は決して忘れていない。陛下も貴公を大変評価しておられる」
ユベールの言葉を聞きながら、王は深く頷いた。
「その通りじゃ。我が娘の命のみならず、此度は王国のためによく尽くしてくれた」
王の言葉にジルは一段と頭を低くする。
「王国はジルフォニア=アンブローズの功に報いるため、貴公を正式に上級魔術師に叙任することにした。これまでは学生の身分であったため叙任は控えていたが、もはやそれも不要である。特例として学生のまま仕えることを許す」
おおっ、と周囲から感嘆の声が聞こえた。彼らが驚いたのには二つの理由がある。まず、いきなり上級魔術師に叙任されるのが極めて異例なことだからである。長いシュバルツバルトの歴史においても、おそらく例がないのではないか。宮廷魔術師の序列は、下から魔術師、上級魔術師、魔導師、大魔導師となっている。ジルは魔術師を飛ばして上級魔術師に任じられたのである。
そしてもう一つの理由は、わずか15歳で宮廷魔術師として叙任されたことである。これは帝国の歴史上、最も若い宮廷魔術師の誕生を意味する。まさに初めてづくしのことであった。ジルはやや身を固くして、王に礼を述べる。
「ははっ、ありがたき幸せにございまする。過分なご配慮、感謝いたします。これからは更に全身全霊をかけて、王国にお仕えいたします」
「ふぉっふぉ、よいよい。余もそちのような若く能力のある者を家臣にすることができて幸せである。そうでろう、ユベール?」
「ははは、まことにさようですな陛下」
ユベールも笑顔を浮かべている。ジルを見つめる目は、借りは返したぞ、と言いたげであった。
「は、こちらがエルンスト=シュライヒャー殿です」
ゼノビアは脇に寄り、エルンストが通る場所を空ける。エルンストが前にやってきて、玉座の前で片膝をつく。
「国王陛下、私がエルンスト=シュライヒャーです。此度は寛大にも私の亡命を受け入れていただき、感謝の念に堪えません。これからは陛下に我が忠誠を捧げます」
エルンストが王に深く頭を下げた。
「ふぉっふぉ。エルンスト、貴公ほどの名将を我が国に迎えることができて、余も嬉しく思っておるぞ」
王がそうエルンストに声をかけた。これでエルンストはシュバルツバルト王宮に正式に受け入れられたと言って良い。
「それでエルンスト殿、早速だが貴公の知っていることを話してもらいたい。先のアルネラ様の誘拐事件は帝国による陰謀だと言うのは本当か?」
ユベールがエルンストにたずねた。これは今回の行為の正当性を主張する上でも、非常に大事なところである。
「間違いございません。私の知るところによれば、全て皇帝、大魔導師ザービアック、『黒の手』の隊長ベイロンによる仕業でございます」
エルンストは自分が調べあげた事実について全て説明した。エルンストの口から改めて事件の真相を聞き、同席した者たちは帝国の悪意に対して敵対心を抱いた。
「貴公はそれを公の場で証言できるか?」
「はっ、この老骨がお役に立つのであれば、喜んで証言いたしましょう」
おお! と脇から歓声があがった。これで帝国に対しては優位な立場に立つことができるだろう。バルダニアもこれを聞けば、シュバルツバルトにちょっかいを出すことはあるまい、人々はそう思った。
「次に、ジルフォニア=アンブローズ、前へ!」
ユベールの言葉に、ジルは一歩前へ進み出た。人々の好奇の目がジルに注がれる。
「貴公の今回の働き、実に見事である。ゼノビア殿からも、すでに貴公の働きが勲功第一であると申し出があった」
ジルは斜め後方に跪《ひざまづ》くゼノビアの方を見た。それに気づいたゼノビアが片目をつぶってみせる。
「先には二度に渡りアルネラ様の命を救ったことも、王国は決して忘れていない。陛下も貴公を大変評価しておられる」
ユベールの言葉を聞きながら、王は深く頷いた。
「その通りじゃ。我が娘の命のみならず、此度は王国のためによく尽くしてくれた」
王の言葉にジルは一段と頭を低くする。
「王国はジルフォニア=アンブローズの功に報いるため、貴公を正式に上級魔術師に叙任することにした。これまでは学生の身分であったため叙任は控えていたが、もはやそれも不要である。特例として学生のまま仕えることを許す」
おおっ、と周囲から感嘆の声が聞こえた。彼らが驚いたのには二つの理由がある。まず、いきなり上級魔術師に叙任されるのが極めて異例なことだからである。長いシュバルツバルトの歴史においても、おそらく例がないのではないか。宮廷魔術師の序列は、下から魔術師、上級魔術師、魔導師、大魔導師となっている。ジルは魔術師を飛ばして上級魔術師に任じられたのである。
そしてもう一つの理由は、わずか15歳で宮廷魔術師として叙任されたことである。これは帝国の歴史上、最も若い宮廷魔術師の誕生を意味する。まさに初めてづくしのことであった。ジルはやや身を固くして、王に礼を述べる。
「ははっ、ありがたき幸せにございまする。過分なご配慮、感謝いたします。これからは更に全身全霊をかけて、王国にお仕えいたします」
「ふぉっふぉ、よいよい。余もそちのような若く能力のある者を家臣にすることができて幸せである。そうでろう、ユベール?」
「ははは、まことにさようですな陛下」
ユベールも笑顔を浮かべている。ジルを見つめる目は、借りは返したぞ、と言いたげであった。
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