最強の装備は美少女だ!

大澤聖

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001 美女と剣士

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「おう! おめー、この辺の者じゃねーな。誰の許しで仕事してんだ、コラっ!」

 下品な男たちが酒場で俺に声をかけてきた。
 レザーアーマーを着た、一目で裏稼業の人間だと分かる奴らだ。

 答えるのも面倒だが、この手の奴らは無視すると余計に面倒になるもんだ。

「仕事? なんの話だ?」
「おめぇ、身なりからして盗賊だろ? ギルドに入らなきゃ仕事できないのは知ってんだろぉ?」

 うぷぷぷっ
 隣で女が吹き出した。
「ガルフ、おぬしの着ているものが粗末過ぎんのよ」

 俺は女をジト目で見た。

「俺が盗賊に見えるっていうのか? アルゼリア」
「現にお仲間が寄ってきてるではないか」

 アルゼリアは明らかに騒動を楽しんでいた。ちっ、この女の悪い癖だ。

「うへへ、こいついい女連れてるじゃねーか。なあ?」
「まったくだ。ねーちゃん、そんな男ほっといて俺たちと遊ぼうぜぇ」

 よくもまぁ、こんだけありふれたセリフを言えるものだ。

「と、言ってるぞアルゼリア。遊んでやったらどうだ?」
「冗談! 良い女と認めるのは吝《やぶさ》かではないが、こんな奴らが相手なら、まだおぬしと飲む方を選ぶぞ」
「まだ、とはなんだ、まだとは」

 俺とアルゼリアは男たちを無視して、漫才のような会話を続けていた。

「おい!! なめてんじゃねーぞ、女。こっちを向け!!」

 男がアルゼリアの肩をつかむ。あーあ、やっちまった。お前終わったぜ。

「おい、我に触れたな?」

 アルゼリアが超低音(温?)な声を出した。突如裏拳を男にお見舞いすると、驚き突っ立っている男に右フックでKOした。

「てめぇ、まわずぞコラ!」

 一瞬呆気にとられた男たちだったが、ついに俺たちに襲いかかってきた。うーん、舐められてんなぁ。こいつら6人しかいないじゃねーか。俺たちを相手にするなら、完全装備で最低20人は連れてこないと。

 結局男たちをのすのに1分もかからなかった。

 酒場では他の客が俺たちの争いを見守っていたが、あっという間に勝負がついて拍子抜けしたようだった。

「ちっ、だらしねー奴らだ」

 そんな声が聞こえてくる。こういう所に来るのはひと癖あるような奴らばかり、争い事を楽しんでいるのだ。

「あんたら強えーな。なにもんだ?」
 バーテンがカウンターごしにたずねてきた。酒場ならこういうことは日常茶飯事だろうな。

「旅の剣士だ」
 俺は短くそう答えた。酒場の人間ってのは情報を集める時に使えるもんだ。仲良くしておいて損はない。

「剣士? 剣なんか持ってねーじゃねーか」
 うーむ、鋭いところついてくるな、この兄ちゃん。アルゼリアがクククと忍び笑いをするのが聞こえる。

「剣か。いま砥《とぎ》に出してるとこでな」
 もちろん嘘だ。適当にごまかしておくにこしたことはない。それより、いい機会だ。バーテンにこの街について聞いてみるか。

「この街について教えてくれないか。何しろ今日来たばかりの流れ者なんでな」
「おう、そうか。商売がら大抵のことは知ってるぜ」

 バーテンは他の客に酒を出すと、また俺たちのところに来てくれた。

「ここフリギアって街はな、交易都市として発展した街よ。まああんたらも街を歩いたなら分かるだろうがな」

 確かに昼にこの街にやってきた時に、あまりに賑やかなのに驚いた。大通り沿いにびっしりと店が並んでたもんな。

「しかしフリギアを知らないとは、あんたらどっから来たんだ?」
「もとはバルダニアの片田舎の出なんだが、流浪の旅に出ていてな」

 俺の故郷はバルダニア王国の南の方にあるラミアって街だ。大陸でも最も南にある最果ての場所。
 そこからある物を探してここに流れ着いたってわけだ。
 
「そうか、大変だな。ここはデカイ街だから冒険者ギルドはあるし、そんだけ強いならお前さんたちが食っていくに不便はないだろうぜ」

「うむ、とりあえずギルドには登録しておくべきだな」
 横からアルゼリアが口を出す。

「おねぇさん、あんたも剣士なのか?」
「いや、わたしはむしろ、け」
 俺は慌てて話を遮るように咳払いをした。

「こ、こいつも剣士だよ。俺より腕が立つかもな」
「ほぇー、女なのにやるもんだ。いい女だしな」

 バーテンがニヤリと笑みを浮かべた。まあ、確かに良い女だぜ、性格を抜かせばな。
「ほぉ、おぬしなかなか見る目あるではないか。名はなんという?」
「俺か? ランドールっていうんだ。これでもこの辺りじゃ、かなりの事情通なんだぜ」

 良い女に聞かれて嬉しいのか、ランドールは自慢しだした。事情通か、初めての街だしやはり仲良くしておくか。

 俺は冒険者ギルドや、評判の良いアイテムショップの場所などを聞くと、懐から出した銀貨を親指でカウンターに弾く。

「これは?」
「今日は騒動起こして済まなかったな。これはその迷惑料と、まあ、いまの情報に対してだ。俺たちはしばらくこの街にいることにしたから、情報通とは仲良くなっておきたいんでな」

 ランドールは悪びれもせず銀貨をしまうとまたニヤリと笑いかけた。冒険者を扱い慣れているのだろう。
 ちなみに銀貨1枚というのは、一週間分の食費ぐらいになる金額だ。
 
 この男なら、俺たちが探している「物」についても何か知ってるかもしれない。

「ところでヒルデグリムって名前に心当たりはないか?」
「ヒルデグリム? 知らんな。女の名前か?」
 知らんかー。まあ当然っちゃ当然なんだが。

「いや、聞いたことがないなら良い。もしその名を聞くことがあったら、俺に教えてくれ。ここには良く来るだろうからな」
「おぅ、分かったぜ。ねぇちゃんもまた来てくれよ」

 横でアルゼリアがうなづく。ランドールの言うこともよく分かる。
 酒場ってところは男臭が強くてかなわんもんなぁ。そりゃこいつに常連になって欲しいわけだ。

 俺達がフリギアについた初めの日は、こうしてロクでもない乱闘で終わったのである。
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