18禁ヘテロ恋愛短編集「色逢い色華」

結局は俗物( ◠‿◠ )

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雨と無知と蜜と罰と 弟双子/気紛れ弟/クール弟

雨と無知と蜜と罰と 4

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 舞夏まなつは頬杖をついている。唇を尖らせて、加霞かすみを目で追っている。停滞して淀んだ空気を打破できたであろう嵐恋あれんは今、風呂に入っている。テレビが点く気配もなく、舞夏はキッチンにいる加霞を不貞腐れたつらで見ている。彼女は明日の弟の弁当の下拵えをしている。購買部では甘い菓子のようなパンしかなく、高校近くのスーパーマーケットやコンビニエンスストアで買っていくのでは好きなものしか選ばないだろう。それに彼女が、弟に弁当を手作りするのが楽しみであった。日記代わりにフォトグラフ系SNSに付けている。弁当の写真に使った食材とその日の発見などを添えている。閲覧数は多くないがアーカイブの溜まっていく様が面白い。
「そろそろ帰るわ、オレ」
「そう。今日も来てくれてありがとう」
 姉弟がマイペースに日常を送り、舞夏がひとり暇を持て余すのは普段のことで、嵐恋が風呂から出てくればまたべたべたと甘えるのだ。舞夏もまた暇そうでいて寛いでいる様子だったため加霞も気を遣わなかった。構い過ぎれば却って嫌味になりそうだから意思疎通は難しい。しかし、今夜の舞夏は様子が違った。加霞は自宅、舞夏は他人宅でありながら好きにやっていたはずが、今日の舞夏は加霞を観察し、また監視しているようだった。少し怒っているようなところのある彼を加霞は玄関前まで見送る。
「ごめんね、今日は……」
「いんや。オレが勝手に押し掛けてるだけだし。でもな……でもな、加霞サン。宝生ほうしょうちゃんが言ってたこと、本当なん?」
 靴を履き終え彼は加霞と向き合った。まだ唇を尖らせている。
「……うん。本当」
「………………そっか。加霞サンは、嫌じゃないの?」
「嫌っていうか……大切な相談だし。北条くんの悩みが解決するなら」
「ああ、そう……ンでも、加霞サンが嫌な時はちゃんと断れよ。オレが口出すまでもないと思うけど……」
 舞夏は両手を伸ばしかけ、躊躇いを見せた。しかしそれも1秒足らずの時間で、加霞の両肩に彼は触れた。
「うん。ありがとう。また来てね」
 彼が玄関扉の把手を握るタイミングで風呂場からどたどたと嵐恋が出てきた。足跡が照る。
「マナツ兄ちゃん、もう帰っちゃうの!」
「また明日来るって。お姉様の言うこと聞いて、さっさと寝るんだぞ」
 嵐恋はまた頷いた。唇を甘く噛んで揉む仕草が子供のようだった。
「寂しいの?」
 加霞は隣の濡れた弟に訊ねる。彼は迷いもなく頷いた。舞夏がへらへらと笑う。加霞も素直で兄代わりによく懐いている弟が可愛らしくて口元が綻ぶ。
「じゃあな。ちゃんと身体拭けよ。風邪ひいたら遊べないから」
 舞夏は照れたような嬉しそうな笑みを引いたまま姉弟に手を振った。



 以前はグループメンバーの1人の名前ばかり囁きながら自慰に耽っていた宝生に「お姉ちゃん」「お姉ちゃん」と呼ばれた。これで名前を呼んでいた同性の、それもグループメンバーに対して恋愛感情も性愛も持っていないと言うのだから加霞も宝生のことがよく分からない。それでも呼ぶ相手が変わったのは素人同士、荒療治の成果である。
 彼は突然黙った。その無言はつまりマスターベーションの終わりであった。手淫を施している間は要求の多い猫みたいに鳴くくせ、射精が始まると彼は静かになる。その癖はまだ続いているらしかった。
 デリケートで真摯な悩みに真面目に向き合っていたつもりだが久々の電話に加霞は以前の認識を忘れて、気拙さと緊張と他者由来の羞恥を覚えた。
『―………お姉ちゃん?』
 互い沈黙し、まだ微かな電子音を感じながら加霞はスマートフォンの画面を見た。通話は切られていない。小さな表記でカウントアップされている。
「うん、北条くん?」
『いっぱい出ました……ティッシュ3枚使っちゃいました』
 生々しいことを言われ、返しようがない。また黙らざるを得なくなった。応答の手札がない。
『ちょっと仕事が忙しかったから、最近その辺り、疎かになってて……』
「そ、そうなんだ」
『風俗行こうと思ったんですけど、やっぱりお姉ちゃんにヒトリでしてるところ聞いてもらうが気持ちいいや……リスクもありませんし』
 少し声が甘たるく間伸びしているのにも加霞は緊張感を持ってしまう。
「役に立てたならよかった」
『はい。とても……このことは、舞夏さんに言っちゃダメですよ』
「言わないよ」
『ボクのためじゃなくて、お姉ちゃんのために』
 彼は舞夏の名前を出すことも好む。マスターベーションに入る前にも舞夏に怒られるというようなことを冗談めかしていた。
「わたしのために?」
『男の子は女の子に幻想を抱いてますからね。ボク等アイドルとファンの関係ではなくて、一般的な男女の話です。あの人も事務所辞めて長いから、もう一般的な男の人の部類でしょ?』
 端末の奥でくすくすと上品に笑っている。アイドルとしては私的な面でよく見せる聡い部分をひた隠し、不思議な世界観とずれた発言、甘えた挙動で人気を博している。
「舞夏ちゃんはわたしの弟と仲良いし、よくおうちに来るから、わたしのズボラなところよく分かってると思うよ」
 彼女は嵐恋のためを想い家事に努めたが、それでも思い描いた水準に達している感じはない。
『そうですか?』
「わたしの話はいいや。じゃあ、またね」
 自分の話をする流れにしてしまい、通話相手が人気アイドルであることを思い出す。加霞は電話を切る。確かライブツアーがあるとか言っていた。
 ローテーブルに端末を置いた瞬間、インターホンが鳴る。彼女は何も聞いていないかのようにキッチンに入る。水に漬けたジャガイモを手に取る。芽はすでに除去され、皮も剥かれている。パイユを作ろうとしていた。レシピ通りに包丁を入れた。
 インターホンが鳴る。インターホンが鳴る。インターホンが鳴る。インターホンが鳴る。
 加霞はまだジャガイモを細く切っていたが、あまりの煩さにとうとう負けた。この悪質な嫌がらせをする人物は分かっている。包丁を持ったままチェーンロックは掛けた玄関扉を開けた。双子のどちらかが立っている。脱色された髪とピアス、似合わない黒縁フレームの眼鏡が特徴的な男が立っている。
「姉さん」
 目が合った。玄関扉を閉めようとすると手が挟まれる。白く骨張ったそれは加霞の力でも簡単に砕けてしまいそうで、彼女は完全に閉めることを躊躇った。
「帰りなさい」
「会いに来た」
「来なくて良いから。あなた達が居なくても、わたしは元気で幸せに暮らしています」
 肩でも凝ったように霙恋は首を捻った。彼等の訪問は何も姉の暮らしを案じたものではないことを姉本人も覚る。
「姉さんの幸せなんて望んでいない」
「……そうみたいね」
「俺のいないところで幸せになるな」
「いきなり来て、何?」
 加霞は嗤ってしまった。今まで離れて暮らしていた。それは加霞とその末弟にとってありがたいことでもあるが、久々に一度会っただけで、こう言われては片腹どころか腹全体が痛む。
「姉さん。出てきてくれ。触りたい」
「警察に連絡するからそこで待っていて」
「……そうか。それなら嵐恋に頼む」
 彼は潔く踵を返した。雫恋かれんと違い、脅迫ではなく本気に聞こえるから厄介だ。雫恋はまだ弟に対して手酷い扱いをした自覚や記憶があるようだが、霙恋の口振りはそうではない。
「やめて」
 チェーンロックを外す。長弟が戻ってきて三和土たたきに踏み入った。
「あーくんには絶対に会わないで」
「それは姉さん次第だな。嵐恋も俺たちには会いたくないだろう?」
「当然でしょ」
「何か言っていたのか」
 嘲笑も揶揄もない。ただただ雑談混じりの事実確認という感じだった。
「何も言ってない。あーくんはあなた達のことなんて忘れたいんだから」
「そうか」
 次弟以上に愛想が、そもそも表情が乏しい霙恋を加霞は雫恋以上に苦手としていた。小さな頃から大人びていて気味が悪かった。彼女は特定の宗教を信仰しているわけではないけれど、刷り込まれた概念によって、この長弟は前世の記憶を受け継いだまま輪廻転生し、また人間として生まれたのではあるまいかと。
嵐恋あいつとは血が繋がっているからな。姉さんほど気にならない。けれど姉さん、あんたとはそうもいかない」
 彼は加霞の握っている包丁を見て微笑した。
「俺が変態だったらどうする?あんたは自分の力量を知ったほうがいい。返り討ちに遭う。好きな女を滅多刺しにして興奮する男もいるんだぞ」
 彼は自分が変質者の異常性癖であることを否定したが、そう話している時の目は爛々と粘こく光が入る。
「手に、好きな女の肉の感触が伝わるからな。あんたの体温だとか、あんたの生々しい匂いだとか、あんたの無防備な姿も見られて……許せない」
 霙恋は声を掠れさせ、拳を白くなるまで握り締めて震わせている。加霞はその姿こそ、恐ろしい。誰よりも危険な人物を玄関に通してしまった。
「あなたも十分、変態……」
「姉さんとセックスしたから?姉さんは俺を弟と思ってくれているのか?嬉しい……けれど、困る。俺は姉さんを、女としか見られない。あんたはオス犬の俺を玄関に入れた……頼む、姉さん。オスをこんな簡単に、中に入れるな」
「あなたが脅すからでしょう?」
 話を聞いている様子はなかった。冷淡げな印象しかない顔を蕩けさせ、加霞に手を伸ばす。指の背で姉の頬に触れた。彼女は後退る。
「姉さん……あんたといると矛盾する」
「用が済んだなら帰りなさい」
「姉さん」
 かまちに踏み込み、彼は姉を捕まえた。
「帰りなさい」
「姉さん、二度と包丁を持ち出したらいけない。危ないから」
 霙恋は包丁をぎ取り、彼女のエプロンのポケットに入れた。
「料理中だったから……」
 長弟を拒めど、平均男性よりも背丈があり、細くとも華奢ではない男の力には敵わない。無理矢理に頬と頬を合わせられる。
「好きな女を滅多刺しにした後、切り刻んで料理にする変態もいる。気を付けてくれ、姉さん。簡単にチェーンロックを外すから、あんたは」
 それが揶揄ではないから余計に腹が立った。的確に姉が一番大切にしているものを出したのはこの男である。
「脅迫しに来たの?もう用は済んだでしょう?早く帰って」
 放す様子はない。弟の腕は結束具と化している。
「姉さん」
「放して。もう帰って。お姉ちゃん、お友達来るから……」
「姉さんの友達?女の人か?俺も挨拶しておこう」
 霙恋はびくともしない。冗談に聞こえない。女友達と言って嘘は吐いていないが、これから来るのは舞夏である。
「気、遣わせるし……あなた、わたしに関係ないでしょう?」
「姉さん」
 関係あるとばかりに抗議の挙動と響きを帯びながら甘えた声を出す。荒い息に髪を吹かれて擽ったくなる。
「放して……帰ってよ」
「すぐ終わらせる……姉さん次第だが」
 姉の背中に手を添え、弟は彼女を腰を抱いて床に倒す。
「やだ……っ!」
「姉さん。友達が来る前に終わらせたいだろう?抵抗しないことだ」
 降ってくる唇に顔を背ける。
「キス、嫌か」
「嫌」
「残念だ」
 諦めたと見せかけて霙恋は加霞の口に回り込む。接触して去る。
「姉さん」
「もう悪ふざけしないで……」
「悪ふざけ?」
「カノジョとか、いないの?そういうことしてくれるお店とか……」
 彼は鼻を鳴らした。乱暴に乳房を掴まれた。柔らかな脂肪を潰さんばかりに揉む。ブラジャーが歪む。ワイヤーが肋骨にぶつかる。
「痛……っ、!」
「オナホ扱いされたいなら、そうするが」
「女の人の身体をなんだと思ってるの?」
「姉さん以外、女なんてどうでもいい」
 彼の端正な顔を押し除ける。姉と末弟に対して粗暴であったが、この双子は性根から腐っているらしい。社会に対しても倫理が備わっていない。
「サイテー。帰りなさい。弟として恥ずかしいから、二度と姉弟きょうだいだなんて言わないで!サイテー男!」
「特別扱いは嬉しくないか?」
「あなたがそんな、女の人をモノみたいにしか見られないことが、わたしは悲しくて仕方がない。あーくんのことをいじめてたのは兄弟だし、仕方ないことだと思ってた。あーくんのことしか可愛がれなかったわたしのことを恨んでるのも分かる。でも、他の人には、他の女の人にはもう少し、きちんとした人だと思ってたのに……」
 霙恋は首を傾げる。
「俺に期待し過ぎたな」
「帰って!帰りなさい!サイテー男!」
「あんただって、カノジョや商売女相手なら俺が好き勝手してもいいみたいに言っていただろう」
「人として扱えって言っているの……」
 彼は鼻を鳴らす。笑っていた。
人身御供ひとみごくうや人身売買を勧めておいてよく言うな」
 加霞は硬直する。髪を毛先まで撫でる手が拳に変わる。
「姉さん。俺が他のメス共をオナホ代わりにしないように、あんたが俺のオナホになればいい」
 髪を引っ張られ、彼女は頭を押さえた。挙動は乱暴だが痛みはない。
「オナホ姉さん。俺はもう二度と、自分で処理しないからな。全部姉さんに出す。姉さんは今日から俺のオナホ。姉さんも俺のことを生肉ディルドだとでも思えばいい」
 雫恋に押さえられながら公園の多目的トイレで身体を暴かれた時よりも、加霞の身包みを剥ぐのは容易らしかった。両手首を床に貼り付けられ、シャツの裾を捲られた彼女は弟を前にブラジャーを晒す。部屋着のロングスカートも布の殆どが腹に掛かり、ブラジャーと揃いのショーツを見せている。模様もないシンプルなライトブルーの下着は洒落気よりも機能性を重視している。仕事の日は朝から気を引き締めようと派手な下着を選んでいたが、家にいる時は大体こういうものを好んだ。そもそも加霞にとって、下着は他人に見せるものではなかった。ただ売られている下着を気に入り、より自分を、その日を好きになれるような物を選ぶのだ。そこに他者は介在しない。
「これから来るの、カレシってわけじゃないんだな」
 無愛想な男がくく……と嬉しそうに笑む。加霞は彼の下で抵抗に疲れ、額と首を汗で輝かせ、息を乱していた。掴まれて血流の阻まれている手はわずかに赤い。
「姉さん」
 弟の指が唇をなぞる。
「やめて」
 首を勢いよく曲げて振り払う。
「オナホに優しくする必要はなかったな」
 宙に残る手が引いていった。ショーツに手が掛かる。
「ちょっと、やだ!霙恋ちゃんっ!」
「姉さんの中では、まだまだ俺も子供か」
 両手の拘束が解かれ、膝を抜けていく下着を追う。片腕だけまた掴まれた。
「頭も背丈もすぐには大人にならないくせに、ここだけはすぐに大人になって……姉さんは無防備だった」
 彼女は眉を顰める。加霞なりに気を遣っていた。血の繋がらない姉弟である。折り合いも悪かったため、より他人で男女という認識が強かった。肌の露出はしないようにして、身体の接触もないようにしていた。それが同衾したり、一緒に入浴をしたり、抱擁などがあった末弟との差をさらに大きくした。
「俺ももう大人の男だ。オナホ穴で感じて、姉さん」
「やだったら!」
 ショーツは爪先を抜けた。腰を引き寄せられ突然の挿入である。潤いの足りない粘膜同士が軋み、加霞だけでなく相手もまた痛い思いをしたことだろう。それは衝突に等しかった。しかし長弟はまだ結合を試みる。
「い……痛いっ……、痛い、いた……っ」
「痛いか?けれど、姉さんはオナホだからな」
 霙恋も苦しいはずだ。無表情の彼の肌は照っている。それは接着の痛みによるものなのか、餌食に対する興奮なのかは分からない。
「壊れ………る、」
 防衛本能による分泌が追いつかない。
「姉さん」
 弟に呼ばれていることに気付く余裕もない。痛みと熱と圧迫感に意識は占拠されている。両手が自由になっても、まずやることは痛みに耐え掌に爪を立てることだった。頭の中は真っ白になり、口腔は喉まで乾いている。
「痛い、いや……、痛い、熱い…………」
 女の肉感を侮るように男の冷めて汗ばんだ手が彼女の腰を左右からがっちりと掴んだ。加霞は痛んで爛れたように疼くそこから脳天まで真っ直ぐ発砲されたのかと思った。視界が接続不良の豆電球になっている。口と腹は悪質な釣り人によって陸に放られた雑魚である。がくがくびくびくとグロテスクなほど痙攣し、彼女は床に弛緩する。
「オナホになったな、姉さん。少しだけ待ってやる。自分で濡らせ」
 押し上げられた内臓が口から飛び出そうだ。それか、腹が破裂する。体勢は雫恋に抱き上げられたままこの男に貫かれた時の方が膝や腰や、普段使わない筋肉などつらかったが、内臓にまで響く苦しみはなかった。
「い………っあ、ぅう………」
「姉さん。オナホは俺をイかせればいいが、俺は姉さんにもイって欲しいから慣らすぞ」
 腰で肉に減り込む彼の手が繋がった箇所の真上を弄った。
「ぁっあ!」
 苦しみと同時におかしな痺れが起こる。緩和も中和も凌駕されることもない。
「姉さん」
「触らな………で、も………あっぅ!」
 小さな尖りを器用に捏ねられ、彼女の首を仰け反らせた。髪が耳元でしゃりしゃり擦れる。
「姉さんの全部が見たい」
 質素なブラジャーから乳房が溢れた。薄く色付いたところを切れの長い目が妖しい光を以って捉える。
「いや……!」
「綺麗だ」
 彼は呟き終わると同時に姉の胸の実を舐めねぶった。飢渇に飢渇を重ねたような勢いで、胸を吸う。幼い頃から大人びていた気味の悪い弟の逞しく育った姿と嬰児みたいな仕草のその大きな差すべてが羞恥になる。そしてこの密度の高い恥ずかしさを彼女の頭は理性とはかけ離れ情欲と判断する。
「やだ、やだ……!そんな……っ!」
 鋭過ぎず、広く浅くやんわりと起こる疼きに加霞は目を眇めた。頭の芯に優しく訴えかける甘さは、苦しみと痛みを忘れさせてしまう。熱を生む箇所が異質の温もりを帯びて滲んだ。弟の形を知らされる。
「姉さん……濡れてきたな」
 それを知らしめようとしているのか、霙恋は徐ろに腰を引く。阨狭あいきょうな小路を牡銛のかえしが拓いていく。人体解剖図にも載らない腹奥にある快楽のコアまでその律動が伝わっている。
「ぃ………や、ァ!ぁんッ」
 意思に沿わない己の肉体反応に彼女は嘆いた。弟はまるで猫が喉を鳴らすように彼女に相槌を打って杭を挿れていく。姉の悲しみに共感と同意を示しながら犯し尽くす。最早それは会話ではない。
「いや………ッ、ぁっ、やだ……!」
「怖いな、姉さん。苦しくてつらいな?」
「ぁうっ……」
 指と口で胸の頂を刺激され、同時に深奥を穿たれる。彼を締め付けているうちに、その間隔が狭まっていった。真上で聞こえる息遣いも荒々しい。接した肌が湿しとっていく。蒸し殺されそうなほど弟の肉体もその間にある空気も熱くなった。暴力的な腰遣いに汗ばみながらも乾いた音と粘着質な水音、布の摩擦音が競う。媚肉は激しい抽送を諌めようとするが抵抗し拒んでいるわけではなかった。
「姉さん……っ、」
「あっあっあぁ!そこ、ぃや!いや、いや!」
 半狂乱になって加霞は嬌声を上げる。苛烈な甘覚と凄まじい揺さぶりにもう頼れる相手がこの自身を陵辱する男しかいなかった。彼の背に爪を立てる。服の繊維の感触に意識を集中していた。その指は戦慄いている。
「一緒にイこう?」
 身体が破裂する寸前まで抱き締められ、牡芯が力強く彼女の喉奥を越え脳髄まで貫いた。加霞の固く閉じた睫毛が水を含む。
「あああっ………!」
「………ッ、姉さん!」
 打ち上げ花火を突っ込まれているらしかった。否、爆竹に近かった。四散しそうな下肢が恐ろしく、弟に腰部に絡み付き、びくびくと震える。エクスタシーの尾どころか胴体そのものを引き摺っている状態で弟は牡の種付けの本能よろしく蠕動ぜんどうする。脳味噌をトンカチで四方八方から殴打されるのとそう変わらない快苦に彼女は弟を突っ撥ねる。しかし牡は女を放さなかった。
「あっああアアアっ!」
 絶叫とともに弟の腕の中で彼女はぐったり崩れ落ちる。
「最高だ、姉さん………俺のオナホ。姉さん……」
 加霞は身を捩って床を這った。内部で接合がわずかに緩まる。
「まだしたいのか?」
 どこをどう見て彼はそう解釈したのだろう。自ら引き抜かれにいったかと思うと霙恋は強く腰を入れた。疼き爛れ淫らに腫れ上がった柔鞘を剛健な肉刃が削り裂く。
「あああッ!」
 姉は背を逸らし、目を見開くや否や、床に叩き付けられる。何を見てもすべてが白ずんでいる。やがて、収斂した目蓋が落ちていく。身体の一部と認めはじめている異芯が去っていく感触にまた果てたはずみで意識を手放した。
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