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雨と無知と蜜と罰と 弟双子/気紛れ弟/クール弟
雨と無知と蜜と罰と 11
しおりを挟む「ごめんね、あーくん。これで足りるかな。足りなかった分は帰ってきたときに渡すから、自分のお財布から出しておいてくれる?ちゃんと食べなきゃだめだよ」
青緑の印刷の紙幣1枚と金色の大型硬貨を1つ、朝飯を食らう弟の横に置いた。嵐恋は「うん」と頷いて牛乳の染み付いたコーンフレークを口に運ぶ。
「姉ちゃん」
彼は3本だけ焼いたウィンナーのひとつにフォークを刺し、塩胡椒のざらついた膜がぷつりと裂けた。
「なに?」
「今日は……マナツ兄ちゃん、来てくれる………かな?」
遠慮がちに彼は訊ねた。梵鐘用の撞木で胸部を突かれた心地だ。脳天や爪先から指先まで響く。
「最近忙しいみたいだから。あんまり遅くなるのは困るけれど、あーくん、学校の友達と遊んできたら」
「うん。そうする」
嵐恋はしゃくしゃくとコーンフレークを食らう。しゃくしゃく……しゃくしゃく……という音が止まった。
「気にした?」
弟が一言ぽつりとこぼし、加霞は何か聞き逃したものと思った。
「え?」
「マナツ兄ちゃん、もう来ないのかどうかだけ、教えて……姉ちゃん。そしたらおで、もうマナツ兄ちゃんのコト訊かないから……」
加霞は弟から顔を逸らし、ぐっと眉間に皺を寄せた。
「分からないけれど、もしかしたら、もう来ないかも知れない」
嵐恋をちらと見た。彼はコーンフレークの浮かぶ皿をぼんやりと見下ろしていた。
「…………分かった。こんなコト訊いて、ごめんな姉ちゃん」
またしゃく、しゃく……と彼はスプーンを口に寄せた。弟とのコミュニケーションがどこかぎこちなく感じられた。加霞の勘違いのような気もした。
「お姉ちゃん、ちょっと早いけど先に行くから。戸締りしっかりね」
「うん」
弟の声が硬く冷め、張り詰めて彼女に刺さる。やはりそれは思い込みだったのかも知れない。
嵐恋から逃げるようにして加霞は自宅マンションを飛び出した。舞夏のこと、哀れな嵐恋のこと。眉根が寄る。施したばかりの化粧が崩れそうだ。
職場からの帰りにポストを開けた。郵便物は朝と夕方に調べている。中にはビニール袋に入った果物があった。加霞はびっくりして勢いよく後退る。おそるおそる指だ摘み、エントランスの共同ゴミ箱に捨てた。まだ食べられたかも知れない果物を食べる気になれない。その下にはメモ書きがあった。末尾に書かれた送り主の名だけ確認した。それは弘明寺愛恵である。紙片を握り締めると皮膚に刺さった。そのまま球体にして果物のごろごろと転がるゴミ箱に捨てる。
「何しているんだ?姉さん」
振り返った。ほんの一瞬に幻聴であることを望んだ。だがその希望は簡単に打ち砕かれる。金髪の怪人が立っている。頭の中がサッと空になる。逃げるために軽量化されたのだ。膝の骨が抜かれたように感覚がない。階段を駆け上がった。脹脛の負荷も感じない。鞄の中から鍵を漁る。こうしている間にも怪異の擬人化みたいな金髪男がこちらに向かってきているに違いなかった。鍵を見つけ、穴に挿し込む。意識するとどちらに捻るのか分からなくなってしまった。自身の息遣いがさらに急かす。ドアが開き、玄関に飛び込んだ。安堵している間はない。鍵を下ろし、チェーンロックにしがみつく。上がり框に腰を下ろし息切れを整える。久々の運動に精神的な圧迫感が加わっている。横腹が痛い。膝と脹脛、それから腿に今になって鈍い重みがやってくる。わずかながら高さのあるパンプスに踵も痛む。スマートフォンを確認した。嵐恋から1通メッセージが入っているのを焦りながら開ける。少し遊んで帰るそうである。心臓が痛むほど安堵の溜息を吐く。
―だが、ドアが揺れた。施錠しているためデッドボルトが金具に引っ掛かり低い音をたてる。まるで楽器だ。脅迫行為に等しい頻度でドアノブが外側から捻られている。加霞は驚きと恐怖で脈を飛ばした。がんっ、がんっ、と硬く付けられた金具と金具が叩き付けられている。
「やめて!」
玄関に自分の声が谺する。
「開けろ」
震える手が鍵だけ下ろした。ドアに対する暴力は聴覚に対する暴行である。チェーンロックがキンっと一直線になる。
「なんだこれは」
金髪の怪物が持っているのはビニール袋に入った果物である。
「誰からもらった?弘明寺か?」
「誰だっていいでしょ……帰ってよ」
「弘明寺だな?」
鱗状になった紙切れを見せられる。球体にしたはずだ。そこで初めて文面を見た。謝罪が書かれている。
「信じられない………人の手紙、勝手に広げたの…………………?」
「人の見えるところに捨てたのは姉さんだろう?ストーカーに拾われたらどうする?姉さんの指紋と手垢が付いているだけでコレクションする変態もいる。姉さん……もう少し自覚を持ったほうがいい」
「あんたより変態なんかいない!」
「そんなことはない、姉さん。油断をするな。これだから放っておけない。変態はあの手この手で姉さんを手に入れようとする。気を付けろ」
ドア奥にいる人物が得体の知れないもののように見えて仕方ない。彼は一応のところ弟であるはずだった。久城家の長男である。それがまるで宇宙人に取り憑かれたみたいになっている。
「帰って……変態はあなただから…………この変質者!帰ってったら!」
金髪の変質者は気難しげに眉を顰め、手紙をまた球体にしてしまった。
「弘明寺とのセックスは俺とした時よりも感じていたみたいだが、どうしてだ?雫恋も同じことを言っていた。どうして?俺たちと何が違う?姉さん……姉さん好みのディルドになる。姉さん………………俺以外に感じるな。俺以外に感じないカラダにする。入れてくれ」
加霞は自分を抱き竦める。鳥肌が止まらない。胸元の浮き沈みが激しくなる。
「姉さん……そんなに弘明寺がいいのか?」
「違う!」
「だがすごく感じていた。見たことないくらい……」
「やめて、……!聞きたくない!」
甦る。乱れた己の裸体が脳裏を過ぎる。言葉で否定しても、記憶にしっかりと残っている。
「姉さん……開けてくれ。早くしないと嵐恋が帰ってくる。それは困ると言っていたな」
「それなら最初から困らせないで」
「姉さん」
チェーンロックに守られたドアの隙間にはこの狂人の手と爪先が割り入っている。
「入れてくれ、姉さん…………―こんにちは。姉がお世話になっています」
悪寒が止まらない。怪人の後ろを同じ階の住人が通り過ぎていった。怪物は人間のふりをして無愛想なりに愛想良く振る舞う。
「もうやだ、帰って!お願い、帰ってください。帰って……今度こそ本当に警察に通報しますから…………」
加霞は泣きそうになりながら把手を押さえた。昔から変わらない冷ややかな目に見下ろされる。
「姉さん」
「……お願い。帰って……」
「ドアチェーンの値段を調べてみた。その後の設置費用も……」
「な、に…………?」
急に何の話だか分からなくなってしまった。無愛想な男がふわりと優しく微笑する。醜かった。
「姉さんがそのつもりなら……俺はチェーンカッターを買うことにする。姉さん。前に言ったな?風俗にでも行けばいいだなんて。そんな人身売買をするよりも安く済む。安心してくれ、費用は俺が持つから。姉さんを守る大切なチェーンだ。鍵はもうあるからな」
曇った質感の銀色の鍵を見せられ、彼女は脳天に稲光が落ちる。
「う、そ………」
「非合法な手段だからな。支払いもあんなふうに姉さんの身を売ることになった」
そこに立っているだけの力も、もう加霞には残されていなかった。壁を頼り、しかしずるずると三和土に崩れていく。
「姉さん?」
「………いや………」
「大丈夫だ。姉さんの家を荒らそうだとか、何かを盗もうだなんて考えていないから。姉さん、俺たちはただ姉さんが欲しいだけだよ。姉さんの物や、それ以外の物が欲しいわけじゃない。姉さん、欲しいのはあんただけだよ」
「どうして、わたしなの…………なんで………手近で済むから?血が繋がってないのに家族なのが気に入らない?わたし可愛くないじゃん。スタイルも悪いし、髪もぱさぱさだし、太ってるし、ノロマだし、頭良くなくて、背も……」
明確な比較対象が頭の中に浮かんでいく。美容室帰りのような乱れのない艶やかな一律の栗毛、ほっそりとしなやかな長い四肢、横顔だけで判じられる美貌、だらしなくないタンクトップワンピースの描く曲線そして綺麗に丸く浮かび上がる臀部。この時ばかりは己のコンプレックスに感謝した。この金髪の変質者は姉がいかに美しくないか理解できただろう。
「姉さんは愚かで、可愛いよ」
ドアノブに縋って俯きながら彼女はよろよろと立ち上がる。
「俺を可愛がらないところがとてもいい。姉のくせに俺と雫恋の区別もつかないところなんかが。血の繋がった弟可愛さに、俺たちを引っ叩いたところもいいな。それから、好きでもない男にイかされるところもまぁまぁ悪くない。腹は立つが興奮した。不快感を通り越して」
加霞は足下の虚空を凝らしている。怪物の声が耳を通り抜ける。
「愚鈍で可愛いよ、姉さん。ところで今日、嵐恋は何時頃帰る?」
この弟は姉の扱い方をよく分かっている。どの話題で彼女の血が昂り、気を尖らせるか理解し過ぎている。おそらくそういう戦略だった。そして加霞もまた蛻同然になっていた様から怒りの活力を取り戻す。
「……何時だっていいでしょ。あなたには関係ない……………」
「関係ない、か……確かにそうかも知れないな」
不気味なほど潔く引き下がる霙恋に加霞は胸騒ぎを覚える。
「そうかも知れない、じゃない。そうなの」
「そうかい、姉さん?やはり姉さんは可愛いよ。俺の姉さん」
「気色悪いこと言わないで」
霙恋は薄気味悪く控えめに笑っている。それが非常に人を不快にする。挑発しているようだ。
「気色悪いか、姉さん。近親相姦みたいに思った?俺たちは姉と弟なのに本当の近親相姦にはなれないが……」
否、単純に強い厭悪感を催す物言いだった。彼は姉に性加害じみた言葉を吐くのが一種の性的嗜好であるようだ。
「俺に嵐恋のことは関係ない、姉さんの中ではそうだな?けれど、嵐恋が雫恋と一緒にいたらどうだろうな」
爪先から迫り上がる熱と蒸気は刹那として脳天に至った。後先も考えずにチェーンロックを外す。定位置に戻さず振り子となる。加霞はその可能性を掌握しているみたいな金髪の不審者に喰ってかかる。勢いよく飛び出し、怪物みたいなのは彼女を受け止めて後ろに何歩か下がった。背を手摺壁や笠木天端に打った反動が加霞にも伝わる。この者に当たれば、叩き込まれた現実や事実を捻じ曲げられ、意の侭に、少なくとも悪い方へは行かぬようできる気がした。
「どういうこと!」
「姉さん、やっと出てきてくれたな」
腕を掴まれ、強く引かれた。何度も頬擦りを繰り返される。
「……嘘なの?」
「姉さん、いい匂いがする。少し汗をかいているな。緊張しているのか」
手摺壁に背を預け、霙恋は加霞を両腕も胸元に閉じ込める。彼の口が届く範囲にキスのスタンプを連打された。
「放しなさい!」
「姉さんが自分から来たんだろう?放さない。それに遅かれ早かれ姉さんは出てきた。出てこないはずがない。可愛いかわいい唯一の、血の繋がった大切な弟だものな」
ひぐ、と加霞は喉が鳴った。いやでもその意味が分かってしまう。嵐恋の身に何か起こる。
「あーくん、雫恋ちゃんといるの?」
「想像に任せる」
「あーくんに酷いことするの?やめて!」
「それは姉さん次第だと思うが、どうする、姉さん。俺たちが何を求めているのか分かるよな。嵐恋は俺にとっても血の繋がった久城家の三男だ。酷いことはできればしたくない。あれもこれも姉さん次第だ。嵐恋を甚振れば、あんたは俺たちを見てくれる」
加霞は長弟を見上げた。彼もまた姉を見下ろしている。相変わらず冷ややかな目付きに、粘着質な妖しい水気を含んだ眼をしている。
「あーくんに何もしないって、雫恋ちゃんに誓わせて……」
「そうしたら?」
「……………あーくんに何もしないでいてくれるなら、わたしはどうなってもいいから…………好きにしなさい」
霙恋は美貌を歪めて不細工に笑った。
「分かった。雫恋に電話しよう。中に入れてくれ、姉さん。ここではできないだろう?」
宅内に怪物を招いてしまった。加霞は膝を震わせ上がり框にへたり込む。霙恋は三和土に突っ立って電話をしていた。これが魔物の双子の芝居なのではないかと、疑ってみることもできた。だがもし本当に雫恋が弟を捕まえていたら、今度は命まで奪われてしまいそうだ。家族間の出来事で、雫恋は金になる。所属は巨大な事務所だ。黒い内容の多い雑誌などでよくが書かれる、業界は正しさと事実ではなく権力で成り立っているという見方は、どこの分野でもそうだろう。
「よかったな、姉さん。嵐恋は雫恋と打ち解けているらしい。男 同胞なんてそんなものさ。姉さんだけ、独りだな」
「……怯えているのが分からないの?」
「怯えるか?嬉しいものだと思うがな。兄がこうして歩み寄ってくれたなら」
話が通じない。加霞は顔を覆った。これから訪れる恐ろしい時間から逃げたい。ほんの一瞬だけ、末弟を売ろうと考えてしまった。そのことに深い自己嫌悪を覚え、しかし本音だと認めなければならなかった。慰み物になるなど耐えられない。それでいて冷静に計算する頭の一部は、痛めつけられた弟を哀れみ沈痛の日々に浸って居場所を互いに失くすことよりも、嵐恋を守り身を削ってでもこの居場所を確保しておくことを良しとして導き出していた。
「さぁ、姉さん。しようか」
霙恋は自宅のようにリビングに入った。そしてソファーに座る。
「舐めなさい」
加霞はゆっくり歩を進めたが、霙恋は腰を上げ、ソファー前まで引き摺った。
「フェラが下手なんだろう?きちんと仕込んでおくよう雫恋に言われた。安心してくれ。優しく指導する」
「…………いや」
加霞は顔を伏せた。
「そうか」
ソファーが小さく軋み、霙恋は目の前で立ち上がる。至近距離に背の高い男が立っているのは恐怖心を煽る。半歩前に出られ、加霞は後退する。
「な、に………」
「姉さんに舐めろと言う前に、まず俺が舐めないとな。姉さん……」
次の瞬間には視界が大きく半転し、加霞はソファーの上にいた。
「いい………しなくて、いい………」
「俺が舐めたいんだ。姉さんを舐めたい。姉さん……」
抵抗も虚しく加霞は下半身を霙恋に奪われてしまった。スカートは捲り上げられ、ミントグリーンの下着に彼は鼻先を埋めている。そこで深呼吸をされるから加霞はびくびくと背筋を凍えさせた。身体中の力が抜け切れず、開放される場もない。かといって人一人を跳ね除けるだけの力も入らない。
「ゃ………ぁっ、」
布越しに唇が秘部を撫でる。舌先が光沢のある繊維を探った。くりん、ともどかしい痺れが腰の中に溶けて広がる。
「姉さん………くらくらするような匂いだな。毛はもう生えたのか?伸ばして欲しい。子供を犯しているみたいで嫌なんだ」
存分に鼻と唇と舌で姉の下着を楽しむと彼は布を脱がせにかかる。
「い、や……恥ずかし、………い」
「恥ずかしくない、姉さん。綺麗だ。いい匂いがする。早く舐めたい」
「や………だ、」
しなやかな仕草で霙恋はショーツを脱がせた。人質のいる加霞はただ顔を両手で覆っている。
「剃らなきゃよかったな、姉さん。姉さんの匂いが半減する。姉さん、手を出せ。繋ぎたい」
霙恋の言うことはすべて否定する体制に入っている彼女はやはり頭を左右に振った。
「意地っ張りな姉さん、可愛いよ。素直な姉さんよりずっと可愛い。雫恋の前でも意地を張る気ならやめたほうがいい。あいつは反抗的な姉さんが大好きだからな。いやでも素直にならないと、抱き潰されるぞ」
加霞はただ首を振る。霙恋は柔らかく微笑して顔を覆う手を剥がさせた。力尽くで手を繋ぐ。
「や、だ………っ」
「恋人みたいだな、姉さん」
手を拒む女の手を無理矢理に掴み、剃られてなかなか伸びない肌に彼は舌を這わせた。跡地を惜しみ唾液を塗す。すぐ真下に潜む敏感な箇所までその感触が響いた。
「姉さんがいけない。嵐恋ばかり可愛がって。俺たちは指を咥えて見ていたよ。羨ましくて仕方がなかった。俺たちは幼い時から、優しく笑いかけちゃくれなかった姉さんを追い求めて、こんな、意地っ張りで俺たちが邪魔で仕方のない姉さんに興奮するようになった。姉さんがいけない。俺たちの健全でノーマルな恋愛を潰した。優しく笑う素直な女に何の価値も感じなくなった。姉さん……」
八つ当たりのように霙恋は濡蕊へ唇で柔らかく齧り付く。舌が尖りを掬い上げて転がした。
「や……っぁ!」
腰骨を程良い電流が包む。繋がされた手を引こうとしたが許されない。まだ顔を覆う片手に歯を立てる。
「噛むな」
霙恋はもう片方の手を取ろうとするが、彼女は筋張ったそれを打ち落とす。
「姉さん、声を聞かせてくれ」
加霞の髪がソファーの座面でしゃらしゃらと鳴った。霙恋は欲情に瀞んだ眼光で、ふぅふぅ胸を上下させている姉を見つめた。そして思い出したように口淫を再開する。その集中力は飴玉探しに似ていた。それでいて唇や舌はむしろ秘部全体に用があるような動きである。情液を舐め啜られ、代わりに彼の唾液が残されていく。乳を飲むよう児の如く、紅肌を摩り、珠を食み、花弁を吸う。
「あ………っぁあ!」
ずくんと彼女は波打った。鋭い官能が押し寄せる。繋がれている手も戦慄く。
「美味かった」
「………もう、いや………」
「舐めないと。姉さん」
世話の必要な幼児みたいに下着を穿かされ彼女は猛烈な羞恥に顔を真っ赤にした。
「酷いことはしない。口には出さない。好きなように拭いてからでもいいから」
火照りに涙ぐむ姉の双眸を覗きながら霙恋は彼女の乱れた髪を整えていく。頭を撫で、声も諭すように優しい。どちらが年長者かも分からなくなる。
「姉さんの意思は要らない。これは嵐恋のためだ。嵐恋のために仕方なく姉さんは俺のを咥えるんだ。できるな?」
毛束を細かく直す手と言動が一致しない。
「姉さん……俺も雫恋も、あの可哀想な子を哀れむことはできても優しくすることなんぞできるはずもない。ただ姉さんが手に入るならそれも吝かじゃないという話だ。言っただろう、あれもこれも姉さん次第だと」
「………っ」
やはりこの双子は血が繋がっていても嵐恋の兄ではなかった。何からも誰からも愛されなかった少年を見捨てられない。加霞は霙恋の下腹部に手を伸ばした。彼はソファーにどかりと腰を下ろす。
「本当は、勃つまで手でしてほしい」
前を寛げた霙恋のそこは、手淫を施すまでもなくすでに強靭な活力を灯していた。
「けれど姉さんのを舐めていたら……もうこんなふうに……」
加霞の視線に反応するかのようにそれは眼前でさらなる膨張を遂げる。
「まずは姉さん、そのままやってみてくれ」
汗や洗剤の他にヒトの肌の匂いがするが、馴染みがない。それでいて皮膚に沁みていく。それが牡の匂いだと彼女は漠然と理解した。加霞は霙恋の膝の間に座り、彼の腿に縋りながら首を伸ばした。男の、それも弟の汚らしい場所に舌を伸ばす。霙恋の持つ清潔感がどうにか彼女の不快感を微弱ながら緩和した。
「姉さん……」
熱っぽい吐息を漏らし、冷めた手が髪や頭、耳の裏を愛撫した。切り揃えられた爪と硬い指が不本意な心地良さをもたらす。
「根本から、舐めて…………?」
病み上がりを思わせる掠れ気味の声がいやな色香を帯びている。
「舌の裏も使うんだ。先の方は敏感だから………」
言われたとおりに舌の裏側で熟れた李に似た先端を焦らす。引き攣った艶やかな声が頭上から聞こえた。
「姉さんみたいなタイプはきっと口の中も気持ち良くなる……口に入れて、上顎に擦り付けてみろ」
加霞は口を開けた。自ら串刺しにされ、ぐふ……と嘔吐いた。吐き出すと唾液が糸を引いて撓んだ。ぶるりと振れた巨杭は濡れそぼち、てらてらと卑猥に照る。
「ゆっくりでいい。少しずつ……」
彼女はまた牡印を口腔に迎える。
「上手だ。すごくいい……俺のほうを見て、姉さん」
見上げている余裕はなかった。動きを止めて霙恋を仰ぐ。相変わらず冷笑的な顔をしているが眼は蕩けていた。唇と唇に挟んだ物体が脈を打つ。
「姉さん……そうしたら次は少し大変だが、口に入れたまま頭を動かすんだ。姉さん…………できるか」
霙恋も余裕がないようだった。声も喋り方も湿っぽい。髪を耳に掛けていく手も汗ばんでいた。
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