18禁BL/ML短編集

結局は俗物( ◠‿◠ )

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主人公じゃなかったから 全14話/三角関係/大学生/陽気攻/意地っ張り受/イラマ/乳首責め

主人公じゃなかったから 2

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 桐島には僕がいればいいの。桐島は僕だけ見ていたらいいの。桐島の傍には僕だけ居ればいいの。


 地味な女は僕に戸惑った。イケメン登場したら仕方ないよ。チョロいよね、女って。彼女は不安そうに桐島を呼んだ。僕以外に、何ぶっさいくな笑顔見せてんの?ムカつくんだけど。
「ごめんね、真樹ちは今僕と話してるから」
 僕は桐島の肩を掴んだ。地味な女は怯えながら謝る。でもまだ去ろうとしない。何となく雰囲気で、この女は桐島のこと好きなんだなって思った。伊達に教室の隅で人間観察してないからね。それからイケメンの勘。やめとけよ、桐島なんて。達央にしておきなよ。見る目のない女だな。
「取り込み中なんだよ、出直してくれる?」
 僕は首を傾げた。地味な女は僕の後ろの桐島を見ようとする。目潰ししてやろうかと思った。身体がカッとした。桐島に片想いとか有り得ない。桐島のことが好きとかバカじゃないの。生物として終わってるよ、この子の家はこの子で末代だ。
「成瀬」
 達央がさらに僕の前に立った。はたからみたら1人の女の子を2人で威圧している。それでも彼女は引こうとしない。本気なんだ。気に入らない。地味な女はもう僕と達央で見えもしない桐島に「また今度」とか言って去っていった。
「小松さん…」
 桐島はあの地味な女を追おうとした。僕はその腕を捕まえる。僕がいるのに何他の人のところ行こうとしてるの。
「成瀬」
 達央が僕を呼ぶ。僕は頭がカーッとなった。何なんだよ、あの地味な女。なんで僕とか達央を好きにならないの。なんで桐島?なんで惨めで情けなくて虚しいぼっちの桐島なんだよ。
「おい、成瀬。大丈夫か?どうしたんだ、いきなり…」
「なんでもないよ。ちょっと顔がタイプだったから突っ掛かりたくなっただけ」
 桐島は僕の手を払った。
「ふざけるな!」
 桐島は怒鳴った。僕はへらへら誤魔化そうと思ったのに目の前に達央の腕が出てきて制された。
「……っ最低だ」
 桐島は狼狽えて、それから達央越しに僕を見て吐き捨てるように呟くと行ってしまった。追おうとしてた僕の前に達央が迫る。
「ああいうのがタイプなのか」
 達央が訊いた。辻褄を合わせるためだけの咄嗟の嘘だった。
「うん。やっぱりああいう感じの子のほうが堅実的っぽいし誠実そうじゃん」
 口は勝手に上手いこと回った。でも僕の意識は桐島の背中が小さくなっていくのを見ていた。



 今日の桐島は人工池の奥の喫煙所の更に奥の有っても無くてもそんな変わりない小規模どころじゃない小規模な庭園にいた。ただの休憩所と化した第二食堂の裏にあるから分かりづらいし何のために設けたのかも分からない、ただ木々が植えられて周りから隠す気もなくただひたすら見えづらいというだけの場所。下は芝生で椅子が少し並べられてるような本当に一家庭の庭かなって感じのふざけた場所だった。桐島は僕を見ても見ない振りをして文庫本を読んでいた。
「何読んでるの」
 桐島は答えてくれなかった。傷心中だね。達央にカノジョが出来たから。驚きだよね。名前は小松松子だが小松松美とかなんかそんな名前してた。全然聞いたことない名前だった。好きな子いたなら教えてくれたら良かったのに。付き合うまで言いたくなかったのかな。達央に迫られたなんて幸せな子だな。ただ思ってよりすごく地味だし平凡って感じで喋る声も小さいから何言ってるか分からないし、はっきりいうともう見た目から釣り合ってなかった。多分性格だって釣り合わないと思うな。だって達央のカノジョってことは必然的に達央カレシに合わせて色んな人に揉まれることになる。でもまぁ僕が口出すことじゃない。これじゃカノジョさんに悪いからデートの話も無しだな。でもいいや、桐島が凹んでるから。
「ねぇったら」
 僕は桐島の前に立って本の間に入り込むようにその表情を覗いた。桐島は栞も挟まないで本を閉じてしまった。エロ小説だったら面白いのに堅苦しい有名な作者のそこそこ有名な文学作品ってところだった。
「達央が付き合っちゃって悲しいんだ?」
「………放っておいてくれ」
「放っておくワケないじゃん。仲良くしようよ。達央はカノジョできて、僕は遠慮しなきゃならないんだし」
 どこかに移動しようとする桐島の前を塞いだ。正面から見つめたら怖がられちゃった。
「僕ならフリーだよ」
「………っ退け」
 僕は退かなかった。桐島は脇を擦り抜けようとする。逃がさない。逃がさないよ、失恋直後の傷心してる桐島なんてそんな美味しいもの、この世にない。ずっと見てきたんだから。初めて会った日から。初めて会った日からずっと見てきて、やっと知り合えたんだから。その時から桐島には達央しか見えてなかったんだろうけど、でも僕はその前から知ってた。
「悲しい?悔しい?つらい?どんな気持ち?ねぇ、今どんな気持ちなのさ?教えてよ、一字一句漏らさずに教えてよ」
 桐島は僕を軽蔑したような眼差しで捉えた。惨めで情けない桐島にそんなカオされる筋合いないんだけどな。
「俺に八つ当たりしている場合なのか」
 あれ?何か凄い勘違いがあるみたいだった。勘違いすぎる。僕はおかしくなってにやにやを抑えきれなかった。本当にバカでマヌケで情けないな、あんたは。全部言葉にしたかったけれど腹の中で嗤っているほうが多分面白い。でも僕の気持ちに気付いてないってのはちょっとつまらないな。でも桐島らしいよ。
「八つ当たり?なんで八つ当たりなのさ。僕は嬉しいよ、大好きな親友にカノジョができて。何をどう勘違いして八つ当たりなんてするのさ?達央のこと大好きな真樹ちでもないのに」
 桐島は思いっきり不愉快そうなカオをした。
「僕とデートしようよ。達央と行くはずだったのに行けそうにないからさ。いいでしょ?それともこの前クソつまらないデートしてトラウマになっちゃった?安心してよ、僕は慣れてるから」
 ナイーブだよね、桐島の目はこの前とは違う意味で潤んでる。クソつまらないデートした自覚はあるげだった。それを僕に突っつかれて泣きそうになってるんだ。可哀想。情けな。
「行こうよ、デート。ねぇ、タピオカミルクティーくらい奢らせてよ」
 落ちた肩に手を伸ばす。でも打ち落とされる。
「誰が…!お前なんかと…!」
「この前足コキしたこと怒ってるの?あの後どうしたの?ちゃんとヌいた?溜め込みすぎはカラダに毒だよ」
 僕は優しく忠告してあげた。下ネタとかダメなタイプか~。顔を真っ赤にしてる。可愛い。っていうか思い出した。あの達央のカノジョ、桐島のこと好きっぽかった子じゃん。薄情だよなぁ。でも達央に告白されたんじゃ仕方ないね。優秀な選択だよ。でも達央はああいうのがタイプだったなんてちょっと意外。
「今夜は失恋オナニーするの?僕が手伝ってあげよっか」
 露骨な単語に桐島の神経質そうなカオはぎょっとした。茹で蛸みたいに顔真っ赤、目はうるうる。その小さな顔に触ったら火傷しそうなくらい熱いんだろうな。触っちゃおうかな。肌荒れもニキビもシミもない。僕は変わるために一時期化粧水とか保湿クリーム塗ってた。安物だけど無いよりよかったし。冷え性は乾燥しやすいんだよ。イケメンの道は美肌からだからね。でも桐島はそういうのなさそう。
「今夜どころか毎日手伝ってあげる。ねぇ、真樹ち。これを機に達央のこと諦めてよ。いい加減、気持ち悪いと思うな、達央も。デートも碌にできない男に好かれてさ。ま、達央は鈍感だから真樹ちのキモチに気付いてるかは分からないケド、キモいやつは僕と遊んでればいいんだよ。僕も達央が大好きだからね?」
 桐島は小さな頭をふるふる振ってた。よく見ると意外にスタイルはいい。スタイルの良さは七難隠すよ、知らないけれど。あともう一押しかもね。僕はにやにや笑った。
「せっかく達央にカノジョできたのに邪魔しないでね?僕も好きで遠慮してるんじゃないんだから」
 俯いた顔からぽろぽろ涙が落ちた。泣いてるんだ。無様だなぁ。腹の下のほうがじんわりして勃ちそうになってる。あのぽってりした唇に無理矢理突き入れてみたいな。困り気味で見上げられたら僕が支配してるはずなのに、僕が逆らえなくなっちゃうんだろうな。
「泣いてるの?かわいい。もっと近くでよく見せてよ」
 顔を上げさせた途端、僕の横面に衝撃が走った。父さんにも殴られたことないのに。僕は良い子だったからね、いじめられても学校通い続けるような。聞き分けが良くて、好き嫌いもなく、成績もオール5だし、ただただ耐えてれば先生からも手の掛からない良い子だなんて評価されるワケで。都合の良い子・どうでも良い子ってやつね。親が教員とか校長とかなら別だったんだろうけどさ。
「へぇ~、真樹ち、そういうことしちゃうんだ?」
 桐島は僕の横面を殴った手を震わせていた。無意識だったみたい。自分の感情と上手く折り合えないのは子供だよ。じゃあ僕はとんだペドフィリアだな。ロリコンって陰口は強ち間違いじゃなかったってワケ。
「あ~あ、骨折れたよ、これ。頬骨粉々になってるんじゃない?達央今カノジョと居るんだろうケド、さすがに親友の緊急事態とあっちゃね~?」
 わざとらしくスマホをちらつかせる。桐島は目を見開いていた。涙引っ込んだみたい。僕のおかげだよ?
「……わ……悪かった…」
「ん~?なぁに?聞こえない」
「わ……るか…った」
「何が悪かったのかなぁ?」
 僕を殴った手を握りしめてまたわなわな震えている。本当にかわいいな、分かりやすくて。
「殴って………悪かった」
「本当に悪いと思ってるならさ、形にしてよ」
「ふざけッ-」
「ふざけてないよ。どんなことがあっても暴力ってNGじゃない?ま、口なら何とでも言えるからね。さ、このままボコボコにされる前に達央に助けに来てもらお。カノジョさんには悪いケド」
 僕はまたスマホをこれ見よがしに取り出した。ふざけてるよ、本音はね。でも桐島は面白いくらいに必死だった。そんな好きなんだ、達央のこと。ただ達央のことよく知りもしないくせにアクセサリーとか自分のステータスと言わんばかりに連れ歩きたい・カレシにしたい輩とは違うのかもね。でもほとんどは達央にマジ惚れしてる人たちだから桐島もそのクチだな。面白いけれど、とことんつまらない奴だよ、桐島って。星の数ほどいるファンの1人に過ぎないんだから。強いて言うなら僕に目を付けられちゃってるくらいで。
「どうしたらいい?」
 まだ濡れてる目が伏せられてすごく色っぽかった。一瞬でムラッときて、桐島を煮るなり焼くなり好きにしたくなる。どうして桐島って、こう、相手の思い通りに動いちゃうかな。そういうところがつまらなくて、かわいいんだよな。
「ふふふ」
 僕は思わせぶりに桐島の周りを練り歩く。尻小さ。脚細くて長。腰細。僕はにやにやもムラムラも止まらなかった。桐島に大きなおっぱいはないけど小さい尻はあるんだよな。大体の人は尻あるけどさ。揉む趣味はないな。形崩しそうで怖いから。見てるのが好きだな、僕は。変態度低め。
「さっさと言え…」
 屈辱に打ち拉がれる姿に僕は舌舐めずりしてたんじゃないかと思う。
「僕さぁ、ずっと考えてたんだ。ずっとね、寝る前も起きた後も真っ昼間も、もしかしたら寝てる時も。夢にまで見てたことがあるんだ」
 焦らして焦らしてその間も桐島の周りをぐるぐる歩いた。怖い?不安?桐島がいけないんだよ、僕に目を付けられちゃうから。達央のことが大好き…って態度カオばっかしてるから。
「何…だ…?」
 僕は笑みを堪えることが出来なかった。もっと嫌がって欲しいな。整形も化粧もしてない、ちょっとの間スキンケアして痩せたら超絶イケメンだった僕を思いっきり拒絶して欲しい。気持ち悪がってね?死ぬほど抵抗して。僕のこと気持ち悪い!嫌!臭い!ヲタク!って言ってた女の子たちみたいに掌返したりしないでよ?後ろから小振りな耳元に口を寄せた。吐息多めに囁いてあげる。
「真樹ちがどんなふうにオナニーするのか見たいなァ…」
 耳の裏舐めちゃった。僕は下ネタ苦手っぽい桐島に卑猥な言葉をかけただけで元気になっちゃった。あっちもこっちも。もっと継続できる頼み事にしておけばよかったかな?付き合って、とか。でも条件がまだ甘い。それならまず材料を集めて、それからだ。耳まで赤くしちゃった桐島の後姿を僕は気長に待っていた。こんなことにも恥じらって、お淑やかなのはタイプだけれど今までどうやって男性社会ホモソーシャルの中やってきたのって感じ。それが嫌で一匹狼選んでるの?一匹狼なんてそんなカッコいいものじゃないか。ハブられ狼、かな。
「絶対に、」
「嫌だ?ふぅん。ま、いいんじゃない。その年になって感情のままに人を殴って、その責任を取ろうともしない碌でなしなんじゃ、達央が振り向いてくれるワケなかったんだよ。そんな奴に好かれちゃってデートまで誘われて達央も気の毒だよな。真樹ちと違って優しいから断れなかったんだね。優しい性格ってのも損だよ。真樹ちとはもう関わらないほうがいいよ、って忠告してあげなきゃ」
 僕は肩を竦めて大袈裟なアクションで言った。効いてるってことも一目で分かる。桐島は分かりやすい男だし、僕だって伊達に桐島のこと見てないんだから。
「……分かっ………た」
「そうそう!別に恥ずかしいことじゃないって。男同士なんだし、修学旅行とかで飛ばしっことかしたでしょ?」
 知らないけど。僕はしてないし、そんな文化があったのかも分からない。桐島はまた顔を真っ赤にしてる。見せ合いっこくらいならあったんじゃない?思春期辺りに。僕は気持ち悪がられてたからしたことないけれど。桐島の肩を抱いてみるけど振り解かれてしまう。人通り少ないし第二食堂のトイレを提案する。控えめに桐島は頷いた。交際に同意する生娘みたいで興奮した。処女好きってわけではないけれど。付き合うなら年上のお姉さんのほうがいいし。あくまであの桐島がもうこの世には存在してなさそうな清純で無垢な処女みたいだからいいのであって。実際女の子で処女っぽいのは何かしらこじらせてる本物の処女かあざとい系の関係持ったら厄介なタイプとかばっかりだから。達央に言うと呆れられるけれどね、偏見を持ちすぎてるってさ。そういうところも好きだな、達央の。むしろ僕は達央に諭されたくてやってる節あるし。あの人は現世に舞い降りた博愛主義の聖人君子だから。


「真樹ちってインポなん?」
 そんなはずはない。足コキした時勃ってた。でも桐島がどれだけ扱いても勃たない。あと粗末な包茎は言い過ぎた。それなりに大きさあるしズル剥けってほどじゃないけどまぁ普通。本当に普通。デカくてズル剥けならそれはそれで揶揄えたのに。
「そん、な……わけ…!」
 2人で入った狭い個室の壁に桐島を押し付けて半歩も隙ないほど詰め寄った。恥ずかしさで顔真っ赤の桐島の手が止まっちゃってた。原因は僕に見られているどころか僕がちんこばっかり凝視してるからだろう。僕は下から捲ってる桐島のシャツに手を入れた。桐島はびくん、って身体を揺らしてかわいかった。乳首とか触るのかな。僕は手探りで桐島の乳首を見つけて指の腹で捏ねる。
「ぁっ!」
 桐島の腰が跳ねた。かなり至近距離にいるから僕にも小さな動きが伝わる。
「いつも乳首いじらないの?」
 すぐ目の前の頭がこくこく頷いた。項垂れている。近過ぎて桐島のシャンプーの匂いとか洗剤の香りとか全部吸えちゃって勃起しかける。そのまま乳首の感触がコリコリしてきて正面からだとやりにくいのにコリコリ乳首がいやらし過ぎて指が止まらなかった。
「胸………や、め……ッん、」
 僕が触り過ぎて固い粒みたいになっていた。桐島のかわいい声が聞こえてやめてあげられない。唇を噛んで声を出さないようにしているのに鼻から抜けていて、僕はもっともっと聞きたくなった。
「僕が扱いてあげるから、自分でおっぱい触って」
 ファスナーからちんこ出してるの、いけないことしてるみたいで凄くやらしい。いつの間にか完勃ちしてるちんこから桐島の手を退かして僕が掴んだ。もう先っぽがぬるぬるしてた。乳首そんな気持ち良かったんだ。亀頭にガマン汁をぐりぐり塗り込んだ。遊び慣れてなさそうなピンク色が皮で見えたり隠れたりした。
「真樹ち?」
 ちんこ触るのやめた手は暇そうだった。片手は胸元でシャツを握って皺を作っていた。
「ほら、おっぱいいじるんだよ?」
 恥ずかしさとはまた違う顔の赤さで目が潤んでる。長い睫毛がゆっくり動く。
「……分か、んな……ぃ」
 かわいいなぁ。ひとりでする時乳首弄らないんだ、桐島は。乳首どころかお尻の穴も弄ってそうなのに。
「中指でくりくりしながら押し込んで」
 息遣いが聞こえる。僕は扱けば扱くほどかわいくなる桐島をずっと見ていたくなった。おそるおそる桐島の手が胸に伸びる。僕の言うこと聞いてくれるんだ?強気になってる余裕もない?
「ん……ぁっ」
 桐島の指が乳首に届いたみたいで桐島の腰が壁から弾んだ。僕の手の中で桐島の熱がもっと大きくなる。
「気持ちいい?指で挟んで引っ張ってみて?」
「っくすぐ、った……い…あッ!」
 でも硬くなってるし、呼吸も早くなってる。僕も身体が暑くて暑くて仕方なかった。かわいい。どんなカオしてイくのかな?どんな声出してイくのかな?僕は手を速くする。
「あっ…、あっ、……激し……ンっ」
 速いかな?ラストスパートなんてこんなものじゃないの?桐島ってやっぱりこういうところもなんか抜けてるよ。どんなオナニーしてるんだろ、普段。感じやすいのかな。少しだけ速度を緩める。僕はこんなんじゃイけないのに、桐島は目を閉じて下唇を吸いながら眉間の皺も取れていて、気持ち良さそうだった。
「ぁ、あっ…佐伯ッ…」
 僕は桐島から呟かれた名前に手を止めてしまった。でもその手の中を桐島の意外と硬くて太いのが出たり入ったりしてびゅるって僕の手に精液が飛んだ。量は多いし色も濃かったし別に臭くはないけど匂いも強かったからご無沙汰みたい。かなり気持ち良かったんじゃないかな。息切れが聞こえているけれど僕は冷えた心地がした。桐島が達央のこと好きなのは知ってただろ。でもなんか、もうイくってところの切羽詰まった声は生々しくて、手にべったり付いた精液の色に強いコントラストを感じた。目眩がする。桐島はまだ久々の射精の気持ち良さに浸ってるみたいではぁはぁいってた。とろんってした目が僕を見て、慌ててトイレットペーパーを巻いて僕の手を拭いた。業務用トイペの繊維の粗さが僕の肌理細かい手を削っていくみたいだ。
「そんなに好きなんだ、達央のコト」
 桐島は口を隠した。僕はそんな桐島から目を逸らす。
「僕と付き合おうよ、友達からでもいいから」
 桐島は僕を押し除けてトイレの個室から出て行った。手を洗い始めて鏡越しに難しい顔を見ていた。
「手を洗え」
 桐島のちんことザーメンなら汚くない気がする。薄汚い脂ぎった知らないおじさんのは嫌だけど。タワシで洗うけど。スチールウールで。まず桐島のじゃないならちんこ握らないし握ったとしてもザーメン掛からないようにするし。桐島が鏡から僕を見ているのが楽しくなって桐島のちんこ握った手を嗅いでやった。
「手を洗え!」
 また恥ずかしさで顔真っ赤にして動揺してかわいいやつ。桐島の隣の手洗い場で水だけで洗うと石鹸付けるように言われた。
「嫌だよ、手、ガッサガサになるじゃん。真樹ちが洗ってくれるなら別だケド」
 手洗い場の前で桐島と向かい合う。溜息吐かれて本当に桐島は僕の手を洗ってくれた。液体石鹸はあんまり泡立たなくて僕の手を洗う桐島の手を堪能できた。深爪だし小さな切り傷あるのが生活感丸出しでかわいくて仕方なかった。
「どうして君は俺に付き纏うんだ」
「気に入らないから」
 僕に興味なんかないでしょ。でも僕は優しいから単純に答えてあげた。でも付き纏われてる自覚あるなら優しくしてよ。僕のこと見てよ。僕のこと好きになってよ。
「傷付いた?」
「別に…」
「傷付いてよ」
「使用済みで悪いな」
 僕の話なんか聞いてもいない。もう少し濡れてるハンドタオルが僕の手から水滴を持っていく。嫌だろうな、潔癖症っぽいから。自分以外の人にハンドタオル使うの。至れり尽くせりだった。ハンドタオルと入れ違いに僕の手の甲にハンドクリームが垂らされて桐島はまた僕に背を向けた。
「何これ」
「乾燥するのが嫌なんだろう?伸ばすのは自分でやれ」
 僕は追いかけるのも忘れた。手の甲に乗っかっているハンドクリームを塗るのも忘れてずっと眺めていた。几帳面だし律儀だよな。ハンドタオルあとで買ってあげよ。二度と使いたくないって具合に捨てちゃうかもだからさっきのハンドタオルに似たやつ。っていうか女子かよ。


 悶々としながら日に当たる。まだ手の甲にはハンドクリームの塊が乗っかっている。塗るの勿体無くて。芳香剤臭いトイレから、桐島の居そうな縄張りランキング2位の裏会館の南側にある直射日光当たりまくりのベンチに移っている間に僕の中には新たな閃きが起こっていた。ハンドタオル買ってあげるならこの際きちんと話してデートに持ち込むのがいいのでゎ?ってこと。誘ったら応じてくれるでしょ、多分。律儀だから。でもこういうのってサプライズ的な感じのほうがいいのかな。それとなくモテキング佐伯達央に訊いてみる?まさか相手が桐島だなんて思わないだろうな…僕の顔面と有用性ネームバリューが好きな女の子なら簡単なんだよ、どっちにしろ喜んでくれるんだから。ただ桐島は僕のこと嫌いだからな。喜んでくれたら嬉しいけどまずは替えのハンドタオル。そこに桐島に喜んで欲しいってのはおまけだな。でもやっぱり買うなら桐島が選んだやつがいいよな。かといってハンドタオル買ってあげるからデートしよ、は多分桐島は素直に誘いに乗らない。デートに誘うにも渋ると思うからな。達央がフリーならな~。達央に選んでもらって、達央が選んだやつだよって桐島に言えるじゃん。でもそんなハンドタオルを桐島が使うか?使わないと思うな。桐島は現世に舞い降りた絶滅危惧種の本物の処女だからね。
「成瀬」
 僕は腕を組んでうんうん唸って思考を巡らせていた。呼ばれているのも気付かずにいたけど、眩しいほどの視界が少し暗くなって気付いた。達央だった。でもカノジョはいない。
「怒ってるか」
「あ、達央。何が?」
 僕達央と何あったっけ?達央も桐島みたいに小難しいカオで僕を見下ろす。逆光しているけどかっこよかった。
「いや…」
「あれ、カノジョさんいないの?連れて来ればよかったのに」
 達央はまたなんか深刻そうに眉毛を動かした。
「悪かった…やっぱり怒ってるよな。だから最近オレを避けてるんだろ?」
「え!何が!達央、僕に何かしたっけ?なんか変な夢でも見た?カノジョできたから邪魔しちゃ悪いと思ってただけケド…?あれ?なんかすれ違いが起こったね?」
 座ってよ!ってまったく微塵も素粒子レベルでも怒ってないことをアピールした。達央が隣に座って、僕もなんか誤解を解かなきゃってところで好きな子談義を始めることにした。達央もカノジョできたばっかりだからね。桐島は僕が思い描くカノジョとかとはまた違う、扱いにくい部類なんだけれども。
「好きな子いてさ、僕…」
 口にすると案外小っ恥ずかしいし照れる。漠然と思う程度には思っていたけれど桐島のこと好きなんじゃ~ん。だって気に入らなくて可哀想で惨めでつまらないところが面白いんだもん。
「それでさ、」
「は?」
 達央は食中りでも起こしたんじゃないの?ってくらい青褪めたカオしていた。青褪めた、は言い過ぎかな。ただなんか、UFOを発見してしまった、みたいな。僕越しに。マジで居たんじゃない?僕は振り返ったけど見えたのはフェンスの奥の近隣住宅。ここの敷地少し低く作ってあるから。
「好きなやつが他にいるのか」
「他って何さ~。僕が浮気性みたいじゃ~ん」
 あの子かわいい!この子かわいい!ナンパしちゃおっかな!は何度も言ったことあるけど、好きになった、までは言ったコト無くない?あったかな。それとも勘違いさせちゃってたかな。
「いや、今回は本気よ、僕。まだ誰かは言えないケド…付き合えたら絶対紹介する!それは置いといてさ、」
 僕は勢いよく両肩を掴まれた。かっこいい顔が目の前に迫った。視界がふわっと回った。日差しがとにかく眩しいけれどすぐ陰ができた。
「誰だよ、そいつ」
 達央に押し倒されてやっぱり男前は何してもサマになるな。誰かから隠れたかったのかな?モテる男は違うね。今度桐島にもやってやろ。どんなカオするかな。早く僕と付き合う気になってくれたらいいのに。達央の両肩を押して起こしてあげる。手の甲に付けてたハンドクリームはぼたってベンチに落ちた。ただのハンドクリームじゃないから指で掬ってまた手の甲に戻す。達央は変なカオをした。
「何だ?」
「その好きな子に付けてもらったんだよ、これ!勿体無くてさ」
 桐島絶対汚がるだろうな。早く会いたいな。
「僕のために大事なタオル使ってくれてさ、悪いからお返ししようと思ってるんだけど、」
 デートに誘って買うべきか、サプライズでプレゼントするのがいいかってところで。
「―のことは好きじゃなかったのか」
 達央は知らない女の子の名前を言った。誰だっけ?って聞いたら、言いづらそうに「オレのカノジョだ」って言った。
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