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「兄上も可愛がってた。雄黄怖がるから、陰ながらって感じだったけど」
懐かしむように言った。
「あんたも怪我したんだろ」
痛々しいものを目にしたかのように顔面を歪ませ彼は訊ねる。
「掠り傷を少々」
珊瑚は遠くを眺めていた。蘇芳は彼に気付かない脇でリスの目をぎょっとさせ極彩へと向けた。見舞いに訪れた際に容態は晒していた。掠り傷では済まなかった。桜の尽力なしでは命も無かっただろう。
「でもその件は、あんたの所為じゃないだろ」
答えることはしなかった。
「そうですよ。極彩様!極彩様は被害に遭われただけなんですから…」
蘇芳が並ぶ。この話題を断ち切りたかった。そろそろこの者の兄の元へ向かう頃かも知れない。気は進まない。腹は重く痛んだ。手首の鈴が鳴る。
「だから…」
「何も、わたしはその一件を指して言ったわけではありませんよ」
くすくす笑ったやると珊瑚は眉根を寄せた。不機嫌はすでにその顔面に貼り付いてついているが不信の色が滲んでいた。
「そろそろ戻ります」
「極彩!」
傍を離れようとすると手を握られた。兄とは違う肉感だった。武器を持ったことがない柔らかな掌だ。肉刺の痕も、胼胝ひとつない。
「あんたの所為とは思えない。悪いのはあんたを狙ったやつだろ。なんで狙われたあんたに責任があんだよ。返事しろよ…」
「同じようなことを二公子は仰せになりました。ですが恨む、とも濁されました。二公子の答えがそうであるなら、そうなのでしょう」
兄の名さえ入っていればこの少年は黙るしかない。狙い通りに彼は口を噤む。
「早いご回復をお祈りいたします」
「おい、あんた…」
擦り抜けられるものかと思ったが歩きだせば、放されず手を引かれる。
「兄上の言うことを鵜呑みにする必要なんて…」
「そろそろ戻ります」
「極彩」
「先程の話ですが、三公子ならばすべて許されているのかも知れません…二公子に次いで」
三公子の手を振り解き、気圧されている蘇芳へ会釈すると来た道を思い返し、庭園を出た。まだ剣士は同じ場所に立っていた。
「二公子がお呼びです」
「今伺います」
同じ文言を繰り返す。不言通りに置かれた電動絡繰りを思わせる。日当たりの悪い広間へ案内された。扉の対面の壁に広い階段式の壇が設けられ、天藍が座していた。見慣れた後姿の青年がその前に跪き、頭を垂れている。入室と同時に極彩は揖礼した。腹部が引き攣れるような感覚があった。
「早く会いたかったよ、おいで」
絢爛豪華な座具に頬杖をつき、脚を組んでいたが姿勢を正して手招きした。
「ほら、群青も顔上げて」
青年の隣に膝を着くと彼は二公子の命の通りに面を上げた。
「彩ちゃんに会うのは久々でしょ?」
天藍は愉快なことこの上ないといった様子だった。群青は静かに肯定する。
「それでね、群青。帰ってきて早々悪いんだけどさ、一仕事頼むよ」
受け取って、と言って天藍は小さな瓶を放り投げた。群青は造作もなく片手に納める。まだ片腕は吊るされていた。
「器持ってきて」
扉の脇に控えている世話係に要求してから二公子は極彩と群青を親しげに見遣る。
「いやぁ、嬉しいよ。こうやって3人で顔を合せるのはいつぶりかな。みんなおっさんばっかりで嫌になっちゃうよ。同い年って楽でいいなぁ」
座具から立ち、徐ろに壇を下りると2人の間へやってきた。そして自らの手を差し伸べ立ち上がらせるとうろうろと周りを練り歩いた。
「群青、彩ちゃんね、結婚したんだって」
群青は謹厚な態度を崩さず、煌めいた座具を仰いでいた。
「もっと驚いてよ。まさか君と結婚したわけじゃないだろう?それオレが一番恥ずかしいやつじゃん」
趣味の悪い冗談を笑う者たちはこの室内にはいなかった。
「収まりがいいや。群青もそろそろ身を固めてもらいたいところでね」
どう?とばかりに有無を言わせない眼差しが群青を窺う。
「甚だ僭越ではございますが、拝辞させていただきます」
天藍は片眉を上げ、面白そうにほくそ笑んだ。美しい瞳は極彩へ移る。
「いつ死ぬかも分からない身だもんね?危ない仕事だし、妻子なんて持ったら、まぁ、足枷だね。人質にとられでもして、うっかりそっちを選んだりなんかしたら…」
群青は長い睫毛を伏せた。
「安心してよ、そんなことされたら裏切り者の妻子としてオレの手で処すからさ。ちゃんと仕事を優先してもらわないと困るよ。彩ちゃんの叔父上みたいに、さ?」
群青の顔を覗き込みながら極彩の周りを回った。それから群青の前を徘徊した。
「期待してるんだから、群青には。若手の誰よりも。どうしてその若さでこんな立場に居られると思うの?兄上も世話になったし、君は本当に自ら血飛沫を浴びてくれるからね」
それで君は積極的にオレの兄上を斬ったんだっけね。あの人が背負うはずだったものを背負うオレのこと、支えてくれるわけだ。君のその忠義を継いでくれる子供がいなくなるのは少し残念だな。でも君ならさっき言ったような拙い状況になっても仕事を選んでくれるってオレは思ってるんだけどなぁ、だって君はそんな人畜無害で綺麗な顔してたって案外野心家だもんね。おっとこれって仕事上の性的威圧になる?こういう訴状いっぱい来てるからね、気を付けなきゃ…それはそうと、君みたいに情け無用な男にも妻や子を愛しちゃう感情はあるんだなぁ。是非ともそういう側面を見てみたかっただけに本当に本当に残念でならないよ。それとも他に好きな子でもいるのかな。君が潜入してる娼館とか?まさかね。仕事なんだから娼妓に入れ込んでるなんてことはないと思うけど。それとも妻になる人への負い目かな?大丈夫だよ、金持ってる男なんて大体女のひとりふたり買ってるもんだし、群青みたいな真面目な男だって知らんカオしてやることやってるもんだよ。周りの女の子たちだって放っておかないでしょ…っと、これも職務中の性的威圧ってやつだな?気を付けないとね、本当に。まぁでも、そんなのは裏切りにならないってこと。オレから話しておいたっていい。自分はいつ死ぬか分からないから結婚しない、子も持たない。うん、それも素晴らしい主義・主張だよ。自由意志の付与ってやつだね。でもこれ、河教の教えじゃないんだよなぁ。それで?それはまだ自分の人生ってやつじゃないな。ただ可能性に賭けた存在するかも分からない誰かで何かの人生だね?衝動や本能すらも断ち切り克服した?それにしても忌々しいな、自由意志の付与って一体誰がそんなことをしたんだろう?少なくとも主上やオレじゃないな。まぁ好きに考えて言ったらいいさ、処断しないとは言ってないけどね。なにしろここは人間が統治してる世だからね。だってそれってオレらはただ与えられているだけの幻ってことだよ、いつでも奪えるということだ。ああ、つまり君はその存在するかも怪しいものに従って、自由意志に抗っているわけだな。せめて与えられた人生の自由をも拒否する、うん、道を耕し固めて均していくのは大変だからね。流されて崩れ去るなんてこともよくある。どうせどうせと向かう先は同じだけど意味があっても内容がないな。
懐かしむように言った。
「あんたも怪我したんだろ」
痛々しいものを目にしたかのように顔面を歪ませ彼は訊ねる。
「掠り傷を少々」
珊瑚は遠くを眺めていた。蘇芳は彼に気付かない脇でリスの目をぎょっとさせ極彩へと向けた。見舞いに訪れた際に容態は晒していた。掠り傷では済まなかった。桜の尽力なしでは命も無かっただろう。
「でもその件は、あんたの所為じゃないだろ」
答えることはしなかった。
「そうですよ。極彩様!極彩様は被害に遭われただけなんですから…」
蘇芳が並ぶ。この話題を断ち切りたかった。そろそろこの者の兄の元へ向かう頃かも知れない。気は進まない。腹は重く痛んだ。手首の鈴が鳴る。
「だから…」
「何も、わたしはその一件を指して言ったわけではありませんよ」
くすくす笑ったやると珊瑚は眉根を寄せた。不機嫌はすでにその顔面に貼り付いてついているが不信の色が滲んでいた。
「そろそろ戻ります」
「極彩!」
傍を離れようとすると手を握られた。兄とは違う肉感だった。武器を持ったことがない柔らかな掌だ。肉刺の痕も、胼胝ひとつない。
「あんたの所為とは思えない。悪いのはあんたを狙ったやつだろ。なんで狙われたあんたに責任があんだよ。返事しろよ…」
「同じようなことを二公子は仰せになりました。ですが恨む、とも濁されました。二公子の答えがそうであるなら、そうなのでしょう」
兄の名さえ入っていればこの少年は黙るしかない。狙い通りに彼は口を噤む。
「早いご回復をお祈りいたします」
「おい、あんた…」
擦り抜けられるものかと思ったが歩きだせば、放されず手を引かれる。
「兄上の言うことを鵜呑みにする必要なんて…」
「そろそろ戻ります」
「極彩」
「先程の話ですが、三公子ならばすべて許されているのかも知れません…二公子に次いで」
三公子の手を振り解き、気圧されている蘇芳へ会釈すると来た道を思い返し、庭園を出た。まだ剣士は同じ場所に立っていた。
「二公子がお呼びです」
「今伺います」
同じ文言を繰り返す。不言通りに置かれた電動絡繰りを思わせる。日当たりの悪い広間へ案内された。扉の対面の壁に広い階段式の壇が設けられ、天藍が座していた。見慣れた後姿の青年がその前に跪き、頭を垂れている。入室と同時に極彩は揖礼した。腹部が引き攣れるような感覚があった。
「早く会いたかったよ、おいで」
絢爛豪華な座具に頬杖をつき、脚を組んでいたが姿勢を正して手招きした。
「ほら、群青も顔上げて」
青年の隣に膝を着くと彼は二公子の命の通りに面を上げた。
「彩ちゃんに会うのは久々でしょ?」
天藍は愉快なことこの上ないといった様子だった。群青は静かに肯定する。
「それでね、群青。帰ってきて早々悪いんだけどさ、一仕事頼むよ」
受け取って、と言って天藍は小さな瓶を放り投げた。群青は造作もなく片手に納める。まだ片腕は吊るされていた。
「器持ってきて」
扉の脇に控えている世話係に要求してから二公子は極彩と群青を親しげに見遣る。
「いやぁ、嬉しいよ。こうやって3人で顔を合せるのはいつぶりかな。みんなおっさんばっかりで嫌になっちゃうよ。同い年って楽でいいなぁ」
座具から立ち、徐ろに壇を下りると2人の間へやってきた。そして自らの手を差し伸べ立ち上がらせるとうろうろと周りを練り歩いた。
「群青、彩ちゃんね、結婚したんだって」
群青は謹厚な態度を崩さず、煌めいた座具を仰いでいた。
「もっと驚いてよ。まさか君と結婚したわけじゃないだろう?それオレが一番恥ずかしいやつじゃん」
趣味の悪い冗談を笑う者たちはこの室内にはいなかった。
「収まりがいいや。群青もそろそろ身を固めてもらいたいところでね」
どう?とばかりに有無を言わせない眼差しが群青を窺う。
「甚だ僭越ではございますが、拝辞させていただきます」
天藍は片眉を上げ、面白そうにほくそ笑んだ。美しい瞳は極彩へ移る。
「いつ死ぬかも分からない身だもんね?危ない仕事だし、妻子なんて持ったら、まぁ、足枷だね。人質にとられでもして、うっかりそっちを選んだりなんかしたら…」
群青は長い睫毛を伏せた。
「安心してよ、そんなことされたら裏切り者の妻子としてオレの手で処すからさ。ちゃんと仕事を優先してもらわないと困るよ。彩ちゃんの叔父上みたいに、さ?」
群青の顔を覗き込みながら極彩の周りを回った。それから群青の前を徘徊した。
「期待してるんだから、群青には。若手の誰よりも。どうしてその若さでこんな立場に居られると思うの?兄上も世話になったし、君は本当に自ら血飛沫を浴びてくれるからね」
それで君は積極的にオレの兄上を斬ったんだっけね。あの人が背負うはずだったものを背負うオレのこと、支えてくれるわけだ。君のその忠義を継いでくれる子供がいなくなるのは少し残念だな。でも君ならさっき言ったような拙い状況になっても仕事を選んでくれるってオレは思ってるんだけどなぁ、だって君はそんな人畜無害で綺麗な顔してたって案外野心家だもんね。おっとこれって仕事上の性的威圧になる?こういう訴状いっぱい来てるからね、気を付けなきゃ…それはそうと、君みたいに情け無用な男にも妻や子を愛しちゃう感情はあるんだなぁ。是非ともそういう側面を見てみたかっただけに本当に本当に残念でならないよ。それとも他に好きな子でもいるのかな。君が潜入してる娼館とか?まさかね。仕事なんだから娼妓に入れ込んでるなんてことはないと思うけど。それとも妻になる人への負い目かな?大丈夫だよ、金持ってる男なんて大体女のひとりふたり買ってるもんだし、群青みたいな真面目な男だって知らんカオしてやることやってるもんだよ。周りの女の子たちだって放っておかないでしょ…っと、これも職務中の性的威圧ってやつだな?気を付けないとね、本当に。まぁでも、そんなのは裏切りにならないってこと。オレから話しておいたっていい。自分はいつ死ぬか分からないから結婚しない、子も持たない。うん、それも素晴らしい主義・主張だよ。自由意志の付与ってやつだね。でもこれ、河教の教えじゃないんだよなぁ。それで?それはまだ自分の人生ってやつじゃないな。ただ可能性に賭けた存在するかも分からない誰かで何かの人生だね?衝動や本能すらも断ち切り克服した?それにしても忌々しいな、自由意志の付与って一体誰がそんなことをしたんだろう?少なくとも主上やオレじゃないな。まぁ好きに考えて言ったらいいさ、処断しないとは言ってないけどね。なにしろここは人間が統治してる世だからね。だってそれってオレらはただ与えられているだけの幻ってことだよ、いつでも奪えるということだ。ああ、つまり君はその存在するかも怪しいものに従って、自由意志に抗っているわけだな。せめて与えられた人生の自由をも拒否する、うん、道を耕し固めて均していくのは大変だからね。流されて崩れ去るなんてこともよくある。どうせどうせと向かう先は同じだけど意味があっても内容がないな。
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