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「銀灰さんはここにはいないようですね」
「…そうですか。ありがとうございます」
時間になるまで弟を探すか否か考え、そこで菖蒲と別れた。化粧室や控室の並ぶ暗い廊下を進む。通り越したばかりの扉が蹴破ったように乱暴な開き方をして極彩は息を詰まらせた。扉の対面の壁に飛び出してきた者は背中を打って床に崩れ落ちる。喧嘩の色が強く滲み踵を返して近付いた。視界の端に白い衣類が入り、喧嘩の相手が止めを刺しに来たのかと警戒した。するとその者も警戒を示したが、構えた腕を下ろした。深い溜息を吐いて彼は軸を失ったようにふらつき、極彩は転倒する前にその燕尾服に包まれた身体を支えた。
「群青殿?」
彼は無言のまま極彩の腕に縋り、体重を任せたまま流れるように室内に引き摺り入れた。簡易的な間仕切りの奥の寝椅子に腰掛ける。それは微妙な白の差異で模様の浮かんだ生地で作られ、上質な感じがあった。群青は沈黙したきり膝に肘をつき両手を宙に放り、項垂れていた。
「すみません…びっくりしてしまって」
疲れているらしく喉から絞り出すように呟いた。
「先程は言えませんでしたが…素敵でした、婚礼衣装姿…」
世辞なのか本心なのか分からないほどに投げやりで、彼は髪や服が崩れることも構わず背凭れに身を預けた。
「最後の最後にお会いできてよかった。そろそろ行きます。さようなら」
求められ、応えられなかった別れの挨拶を彼は何の頓着もなく口にした。目の前にある硝子卓に置かれた小瓶を呷って部屋を出て行く。遅れて知った匂いが鼻に届いた。そこには香子蘭も薄荷の残り香もない。暫くの間極彩は止まっていた。我に返って部屋の外に出れば、部屋の外に投げ出された者の姿はすでになかった。会場に向かうところでがっくりと肩を落とした銀灰を見つけた。彼も姉に気付くと笑みを貼り付けた。しかし可愛らしい八重歯は見えない。
「胡桃ちゃんに会ってきたっす。さっきのところでオレっちのこと、見つけたらしくて」
聞くまでもなく彼の姿が全てを物語っていた。
「混乱するから、帰ってほしいって、言われたっす」
帰るっすよ。銀灰は日焼けしなくなった手を姉へ差し伸べた。
「いいの?」
「きっと、オレっちと行くより幸せになるはずっすよ。それを壊そうとしてたってことっす。巻き込んでごめん。遠かったのに」
彼は笑っている。天を仰ぐ掌を見つめた。
「お店の人、どんな人?」
銀灰は笑みを固め、猫目を丸くする。
「どんなご立派な方なんだろうと思って、目に焼き付けておこうと思って」
「ああ…そういうことなら。髪が黒くて、眼鏡で、背が高い人っす。綺麗な人っすから見たらすぐ分かるはず」
極彩の想像では、そこに陰険な笑みと侮蔑的な態度が加えられていた。
「オレっちは花畑でも散歩してるっすね」
「うん、気を付けて」
弟は頷き、姉の前を去る。彼の背中は力が抜け、暗い廊下に呑まれていく。式場まで続く硝子張りの窓から入る日光は暑かった。弦楽器の演奏が聞こえる。荘厳な扉を少し離れて見つめ、その奥に自身は行く資格がないように極彩は思った。何より招待されていない。礼服ですらない。婿について考えた様子をみせた保護者のことが思い起こされる。使用人の愚直さに感心し、柵さえなければ推してさえいた。胡桃の勤め先の人というのも箸の持ち方に彼女を嫁がせるうえで譲れないひとつの大きな価値を見出しただけなのかも知れない。一撃込められるだろうか。拳を握る。脇にある扉から屋外へ出て、緩やかな階段のある式場裏口へ出た。参加者が階段の中心を空け、両端に別れた小道を作る。建物の反対にある骨組の四阿に通じるよう並んでいた。鐘の音が空に響き渡った。拍手が聞こえ、鋼琴の演奏が雰囲気を作り、重なる弦楽器の合奏が盛り上げる。知った形式ではなかったが、保護者が永い眠りに就くまで切望していたものが過る。式を挙げられないことを謝っていた。途切れ途切れで掠れた言葉でさえ病人には大きな負担だったというのに、あの者は懸命に喉を壊すみたいに喋っていた。重い肩凝りが身体全域に広がるような感覚に襲われ、極彩は固く握っていた拳を開いた。
人の列の中から真っ白な婚礼衣装に身を包んだ胡桃と、彼女の真っ白な衣装と並ぶといくらか柔らかく黄みがかった白の燕尾服の青年が徐に歩いてくるのが見えた。黒い髪のその青年は先程部屋で別れたばかりの者だった。心臓が胸の位置から落ちていくような感じがあった。同時に初めて胡桃を見た日のことが蘇った。娼妓と勘違いされ自邸に連れて行かれたではないか。山に向かう中、熱に浮かれ恋心を吐露されたではないか。驚きはあったが彼は節々で匂わせていた。そうすると深夜帯の彼の来訪が別の意味に変わっていった。寝惚けていたのだ。でなければ、日常生活が変わることへの不安症だ。亡き保護者も婚約憂鬱症という言葉を使っていた。それを解消するために浮気に走る人も少ないはずだ。不誠実な男への何か息苦しいものが渦巻く。銀が溶けたみたいな薬液の甘苦くえぐみのある味が舌の上にある。あの男のその肉体が、あの男の精神でなくても何度も囁き伝えた言葉は悪い気はしなかった。利用されていたことを知ってもなお彼はその役を十分過ぎるほど全うした。人々の拍手に合わせ極彩も遠目に手を打ち合わせる。祝福の声が飛び交う。しかし群青の名ではなかった。また名を変え、偽るのか。群青という名がそもそも偽名の可能性すらある。胡桃は大きく袖の開いた衣装で、幾重にもなって膨らんだ飾襞が軽やかで、夫になる青年と腕を組み飾刺繍の捩織の中で笑っていた。可愛らしい少女だった。女豹倶楽部の若い店長が語る好みの女性像とは正反対の、柔和で明るく、誰にでも笑みを持って接することができる娘だった。やっと眠そうな目付きの琵琶弾きが胸の打ちから消えていきそうだった。円満な夫婦生活には浮気の証拠は消さねばならない。深夜にまで来訪し求めたのは隠滅だった。そしてその確認だったのかもしれない。
『さようなら』
花畑に通じる煉瓦の道へ戻った。あちことに鉢植えが飾られ、手入れが行き届いていた。造花のように大きく開き、鮮やかだった。
ちょおおっと待った!こんな結婚あるか!不自由恋愛反対!クソ喰らえ!
聞き覚えのある質の叫びが和やかな空気を破壊した。極彩は驚き、沁みていた目頭は乾ききる。一瞬の静寂を乗り越え現場が騒然とし、人集りができはじめた。菖蒲の手が押競饅頭状態になっている中から伸び、宙を掻いた。極彩は場違いな服装のまま菖蒲の元へ駆ける。
「菖蒲殿!」
人々を押し退け青々とした芝生の上に引き倒されている目的の中年男を発掘する。人の動きが乱れ、すぐさま見失いそうだった。相手も極彩を認めると彼女の伸ばした手を掴む。菖蒲は掴みかかる様々な手を振り切って立ち上がると極彩の手を放さず走った。骨組四阿の内部に立つ新郎新婦の前を横切らねばならなかった。顔を背けて走る。
「極彩様!」
「白梅さん?」
射抜かれた心地がした。輝かしい新郎新婦は互いの顔を見合わせ、足が止まる前に菖蒲によって引っ張られる。煉瓦造りの建物が並び小さな街に似た土地を走り抜け、門代わりの壁の階段を下り、花畑へ急いだ。銀灰は石畳に座り、ぼぅっと一面の花を眺めている。その指から白の紋様が入った黒いアゲハチョウが飛び去っていった。
「…そうですか。ありがとうございます」
時間になるまで弟を探すか否か考え、そこで菖蒲と別れた。化粧室や控室の並ぶ暗い廊下を進む。通り越したばかりの扉が蹴破ったように乱暴な開き方をして極彩は息を詰まらせた。扉の対面の壁に飛び出してきた者は背中を打って床に崩れ落ちる。喧嘩の色が強く滲み踵を返して近付いた。視界の端に白い衣類が入り、喧嘩の相手が止めを刺しに来たのかと警戒した。するとその者も警戒を示したが、構えた腕を下ろした。深い溜息を吐いて彼は軸を失ったようにふらつき、極彩は転倒する前にその燕尾服に包まれた身体を支えた。
「群青殿?」
彼は無言のまま極彩の腕に縋り、体重を任せたまま流れるように室内に引き摺り入れた。簡易的な間仕切りの奥の寝椅子に腰掛ける。それは微妙な白の差異で模様の浮かんだ生地で作られ、上質な感じがあった。群青は沈黙したきり膝に肘をつき両手を宙に放り、項垂れていた。
「すみません…びっくりしてしまって」
疲れているらしく喉から絞り出すように呟いた。
「先程は言えませんでしたが…素敵でした、婚礼衣装姿…」
世辞なのか本心なのか分からないほどに投げやりで、彼は髪や服が崩れることも構わず背凭れに身を預けた。
「最後の最後にお会いできてよかった。そろそろ行きます。さようなら」
求められ、応えられなかった別れの挨拶を彼は何の頓着もなく口にした。目の前にある硝子卓に置かれた小瓶を呷って部屋を出て行く。遅れて知った匂いが鼻に届いた。そこには香子蘭も薄荷の残り香もない。暫くの間極彩は止まっていた。我に返って部屋の外に出れば、部屋の外に投げ出された者の姿はすでになかった。会場に向かうところでがっくりと肩を落とした銀灰を見つけた。彼も姉に気付くと笑みを貼り付けた。しかし可愛らしい八重歯は見えない。
「胡桃ちゃんに会ってきたっす。さっきのところでオレっちのこと、見つけたらしくて」
聞くまでもなく彼の姿が全てを物語っていた。
「混乱するから、帰ってほしいって、言われたっす」
帰るっすよ。銀灰は日焼けしなくなった手を姉へ差し伸べた。
「いいの?」
「きっと、オレっちと行くより幸せになるはずっすよ。それを壊そうとしてたってことっす。巻き込んでごめん。遠かったのに」
彼は笑っている。天を仰ぐ掌を見つめた。
「お店の人、どんな人?」
銀灰は笑みを固め、猫目を丸くする。
「どんなご立派な方なんだろうと思って、目に焼き付けておこうと思って」
「ああ…そういうことなら。髪が黒くて、眼鏡で、背が高い人っす。綺麗な人っすから見たらすぐ分かるはず」
極彩の想像では、そこに陰険な笑みと侮蔑的な態度が加えられていた。
「オレっちは花畑でも散歩してるっすね」
「うん、気を付けて」
弟は頷き、姉の前を去る。彼の背中は力が抜け、暗い廊下に呑まれていく。式場まで続く硝子張りの窓から入る日光は暑かった。弦楽器の演奏が聞こえる。荘厳な扉を少し離れて見つめ、その奥に自身は行く資格がないように極彩は思った。何より招待されていない。礼服ですらない。婿について考えた様子をみせた保護者のことが思い起こされる。使用人の愚直さに感心し、柵さえなければ推してさえいた。胡桃の勤め先の人というのも箸の持ち方に彼女を嫁がせるうえで譲れないひとつの大きな価値を見出しただけなのかも知れない。一撃込められるだろうか。拳を握る。脇にある扉から屋外へ出て、緩やかな階段のある式場裏口へ出た。参加者が階段の中心を空け、両端に別れた小道を作る。建物の反対にある骨組の四阿に通じるよう並んでいた。鐘の音が空に響き渡った。拍手が聞こえ、鋼琴の演奏が雰囲気を作り、重なる弦楽器の合奏が盛り上げる。知った形式ではなかったが、保護者が永い眠りに就くまで切望していたものが過る。式を挙げられないことを謝っていた。途切れ途切れで掠れた言葉でさえ病人には大きな負担だったというのに、あの者は懸命に喉を壊すみたいに喋っていた。重い肩凝りが身体全域に広がるような感覚に襲われ、極彩は固く握っていた拳を開いた。
人の列の中から真っ白な婚礼衣装に身を包んだ胡桃と、彼女の真っ白な衣装と並ぶといくらか柔らかく黄みがかった白の燕尾服の青年が徐に歩いてくるのが見えた。黒い髪のその青年は先程部屋で別れたばかりの者だった。心臓が胸の位置から落ちていくような感じがあった。同時に初めて胡桃を見た日のことが蘇った。娼妓と勘違いされ自邸に連れて行かれたではないか。山に向かう中、熱に浮かれ恋心を吐露されたではないか。驚きはあったが彼は節々で匂わせていた。そうすると深夜帯の彼の来訪が別の意味に変わっていった。寝惚けていたのだ。でなければ、日常生活が変わることへの不安症だ。亡き保護者も婚約憂鬱症という言葉を使っていた。それを解消するために浮気に走る人も少ないはずだ。不誠実な男への何か息苦しいものが渦巻く。銀が溶けたみたいな薬液の甘苦くえぐみのある味が舌の上にある。あの男のその肉体が、あの男の精神でなくても何度も囁き伝えた言葉は悪い気はしなかった。利用されていたことを知ってもなお彼はその役を十分過ぎるほど全うした。人々の拍手に合わせ極彩も遠目に手を打ち合わせる。祝福の声が飛び交う。しかし群青の名ではなかった。また名を変え、偽るのか。群青という名がそもそも偽名の可能性すらある。胡桃は大きく袖の開いた衣装で、幾重にもなって膨らんだ飾襞が軽やかで、夫になる青年と腕を組み飾刺繍の捩織の中で笑っていた。可愛らしい少女だった。女豹倶楽部の若い店長が語る好みの女性像とは正反対の、柔和で明るく、誰にでも笑みを持って接することができる娘だった。やっと眠そうな目付きの琵琶弾きが胸の打ちから消えていきそうだった。円満な夫婦生活には浮気の証拠は消さねばならない。深夜にまで来訪し求めたのは隠滅だった。そしてその確認だったのかもしれない。
『さようなら』
花畑に通じる煉瓦の道へ戻った。あちことに鉢植えが飾られ、手入れが行き届いていた。造花のように大きく開き、鮮やかだった。
ちょおおっと待った!こんな結婚あるか!不自由恋愛反対!クソ喰らえ!
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「菖蒲殿!」
人々を押し退け青々とした芝生の上に引き倒されている目的の中年男を発掘する。人の動きが乱れ、すぐさま見失いそうだった。相手も極彩を認めると彼女の伸ばした手を掴む。菖蒲は掴みかかる様々な手を振り切って立ち上がると極彩の手を放さず走った。骨組四阿の内部に立つ新郎新婦の前を横切らねばならなかった。顔を背けて走る。
「極彩様!」
「白梅さん?」
射抜かれた心地がした。輝かしい新郎新婦は互いの顔を見合わせ、足が止まる前に菖蒲によって引っ張られる。煉瓦造りの建物が並び小さな街に似た土地を走り抜け、門代わりの壁の階段を下り、花畑へ急いだ。銀灰は石畳に座り、ぼぅっと一面の花を眺めている。その指から白の紋様が入った黒いアゲハチョウが飛び去っていった。
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