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「一時的なものかも知れませんね。しかし酷い場合は診療所に通うことです。幻というものは決まって毒なんですから。気の所為で済ませたいのは分かりますが…というか気の所為から始まるんです。鼓膜が破れているとかではありませんよね。耳掻きは頻繁にやらないことですよ」
菖蒲は捲し立てた。冷静ではない感じがある。
「どうしたんですか」
「…いいえ。どうということも特にはないですよ」
「もしかしてこの神経症はかなり重いんですか」
菖蒲の涼しげな目元が渋く細められる。
「なんです?」
「副組長さんですよ、新しい組長さん。またやらかしたそうですね、この邸で。極彩さんの在宅時に?」
「そうですね」
彼は悩ましげに唸った。花畑の脇で目にした呆れたような、怒っているような。複雑な色を持っている。
「それが何か」
不仲であることは淡藤本人から聞いていたが相手である菖蒲はこの仲をどう評するのか好奇心が湧いた。彼はまだちらちらと極彩を見るばかりだった。
「何もないですよ、城で会うくらいしか接点ありませんからね。若サマのお守り外されてからそれこそ城でも会いませんよ。ただ彼がヤラカシテ、極彩さんが衝撃を受けているだろうから注意するよう言われたくらいです」
菖蒲はぼそぼそと苦情っぽく喋った。それが彼らしくなかった。明らかに、そこには淡藤に対しての好意は窺えなかった。
「見たときは驚きましたが…その後の天晴組の対応もしっかりしていましたし…」
自傷行為を常習している、ということは伏せた。傷は深く、水の量に混ざり把握しきれなかったが出血量も水の染まり具合からいえば少なくはなかった。やり方は確実でないにせよ本気だったのかも知れない。
「ボクが言いたいのは…」
彼は言葉を続けるのをやめてしまった。
「言ってください」
「そういうのって、伝染るんですよ。何気なく弱った時にふわりふわり厄介な花粉みたいに舞い込んでくるんです。選択肢として。恐ろしい話ですよ。風邪ならば予防しようと思いますが…そういうのは健全さを失した折に突然くるわけです。衝動として」
「わたしが自決してしまうと思ったんですか」
「正直に申し上げればそうです」
肯定は潔かった。だが開き直っているようでもあった。
「わたしは死にません。これから紅と暮らすんですから」
「紅さんと?それは喜ばしいことです」
菖蒲は立ち上がって縁側に移り、煙草を吸い始めた。
「群青さんの弟…なんて噂がありますね」
「何方とですか」
「天晴組が返り咲きの組長さんですよ」
極彩は知らない振りをした。しかし菖蒲は知っているくせにとばかりの嫌味を帯びた笑みで鼻を鳴らした。目が合ってしまい、瞬時に逸らす。
「極彩さんから見てどうですか」
「外見だけでは似ていない同胞もありますから…ひとつひとつの所作でいえば、重なるところはあります。ただこれは決まりきった作法の問題かもしれません」
「そうですか。ボクから言わせてもらえばまったく似ていませんよ!一体誰がそんな噂を広めたんでしょうね。何でもかんでも背鰭尾鰭を付けていればそのうち勝手に泳ぎだすってもんです」
菖蒲は怒りだし、声を荒げた。
「どうしてそんな噂が持ち上がったんですか」
「分かりません。群青さん、人嫌いのクセにあの若造のことは随分と構いたがりなんですよ。だからじゃないですか。ほら、極彩さんが連れていった、山桃とかなんとかっていった子のほうがまだ信じられますね」
極彩は首を傾げた。山桃という名の知り合いはいない。菖蒲は茶毛で真面目そうな極彩より年下の若者だと説明した。
「桜ですか」
「そうです!そうです、そうです、桜さん」
夜空に輪状の紫煙が燻る。
「どうして今になって…」
菖蒲は呟いた。
「何か証拠でもあったんじゃないですか」
中年男は悲愴を帯びた表情で極彩を肩越しに振り返る。しかし唇から漏れる煙はそれを半減させる。
「この国にはありませんが…血液…いや、髪や皮膚片でも十分なのですけど、体組織の鑑定で或いは…」
彼はぼそぼそと専門的な話をし始めた。一度聞いてもすぐに覚えられない単語や作業方法に極彩は途中から耳を貸すのをやめてしまった。暫く放置していると菖蒲は煙草を潰し、また煙草を咥える。
「淡藤殿が群青殿と兄弟だと、何か不都合があるんですか」
「ありません、何も。何もありませんよ!まったく、これっぱかりもありません。皆無です」
「しかし、何かが…気に入らない?」
「そうです!」
菖蒲は首を背面まで回しかねない勢いで曲げた。
「兄弟がいると知れたら、誰でも気になると思いますよ。片割れですからね。たとえ血が繋がっていなくても、共有した親や柵があるわけで…」
彼は小さく「すみませんね」と言った。
「何故謝るんですか」
「極彩さんに兄弟の話は酷かと思いまして」
「いいえ。どうして?」
無精髭のある口元が媚びたようにへらへらと笑った。
「どうしてと訊かれると困ってしまいますね。銀灰さんのことです。もう整理は付いているんですか」
「ああ、そうでした。菖蒲殿にお渡ししたかったのです。生活費とそれから…」
極彩は女豹倶楽部の給金と城からの謝礼金の入っている袋を布に包んだ。
「今、ボクの所にはいません。母親の元に帰りたがったので、帰しました」
「母親のところへ…大丈夫なんですか。だって…」
実の母から疎外された日々のことは断片的に聞かされていた。檻に押し込められたり、食事を与えられないなど時折話していた。
「銀灰さん本人が帰りたいと言っている以上、ボクの元にもいるのもおそらく苦痛だったのかも知れません」
「仕事も一区切りついたところで、会いに行きますか」
極彩は目を見開いた。会う、ということはまったく考えてもいなかった。激しい動揺に襲われる。弟は失恋した。思いもよらない相手が新郎として弟の想い人を掻っ攫っていった。弟の好きな娘を娶ったその男が憎いくらいだった。雄の闘争に負けた羞恥から弟は姉と保護者の元を去った。しかし作り上げた話だった。実際はそうではない。逃げて目を逸らし顔を背けた事柄が直撃し、打ち砕かれてしまう。
「一目見るだけでも…様子を看て…」
菖蒲は宥めるように言った。金を入れた封が戦慄きながら布を開けさせていく。弟が餓死させられてしまうかもしれない。凍死させられてしまう。軽い風邪でさえ痩せた肉体を蝕む。母親を檻に入れねば弟が死んでしまう。静かな焦燥は、何故弟ともう一緒に住んでいないのか、そこに至る重苦しく冷えた事実に沈められ、それが処理しきれない。
「落ち着いてください」
縁側からいつの間にか目の前にやってきた菖蒲は煙草臭かった。
「銀灰くんは、あの新婦さんが好きだったんですよね」
極彩さん。菖蒲は叱るように語気を強めて彼女の名を呼んだ。求めていたのは肯定だった。
「そうでないなら、わたしは何も知りません」
「彼の一度曝した感情を無いものとして扱うのは非常に危険です。貴方はそれでどうにかやり過ごせるかも知れません。ですが銀灰さんはどうなります?彼は貴方をひとりの女性として―」
「やめてください!」
極彩は叫んだ。小刻みに震えながら菖蒲を恐る恐る確認する。中年男の涼やかな目元が彼女を射抜いている。
「会えそうに…ありません」
「会えませんか」
「会えません」
冷涼な雰囲気のある目の奥で瞳はゆっくり極彩から降りていった。
菖蒲は捲し立てた。冷静ではない感じがある。
「どうしたんですか」
「…いいえ。どうということも特にはないですよ」
「もしかしてこの神経症はかなり重いんですか」
菖蒲の涼しげな目元が渋く細められる。
「なんです?」
「副組長さんですよ、新しい組長さん。またやらかしたそうですね、この邸で。極彩さんの在宅時に?」
「そうですね」
彼は悩ましげに唸った。花畑の脇で目にした呆れたような、怒っているような。複雑な色を持っている。
「それが何か」
不仲であることは淡藤本人から聞いていたが相手である菖蒲はこの仲をどう評するのか好奇心が湧いた。彼はまだちらちらと極彩を見るばかりだった。
「何もないですよ、城で会うくらいしか接点ありませんからね。若サマのお守り外されてからそれこそ城でも会いませんよ。ただ彼がヤラカシテ、極彩さんが衝撃を受けているだろうから注意するよう言われたくらいです」
菖蒲はぼそぼそと苦情っぽく喋った。それが彼らしくなかった。明らかに、そこには淡藤に対しての好意は窺えなかった。
「見たときは驚きましたが…その後の天晴組の対応もしっかりしていましたし…」
自傷行為を常習している、ということは伏せた。傷は深く、水の量に混ざり把握しきれなかったが出血量も水の染まり具合からいえば少なくはなかった。やり方は確実でないにせよ本気だったのかも知れない。
「ボクが言いたいのは…」
彼は言葉を続けるのをやめてしまった。
「言ってください」
「そういうのって、伝染るんですよ。何気なく弱った時にふわりふわり厄介な花粉みたいに舞い込んでくるんです。選択肢として。恐ろしい話ですよ。風邪ならば予防しようと思いますが…そういうのは健全さを失した折に突然くるわけです。衝動として」
「わたしが自決してしまうと思ったんですか」
「正直に申し上げればそうです」
肯定は潔かった。だが開き直っているようでもあった。
「わたしは死にません。これから紅と暮らすんですから」
「紅さんと?それは喜ばしいことです」
菖蒲は立ち上がって縁側に移り、煙草を吸い始めた。
「群青さんの弟…なんて噂がありますね」
「何方とですか」
「天晴組が返り咲きの組長さんですよ」
極彩は知らない振りをした。しかし菖蒲は知っているくせにとばかりの嫌味を帯びた笑みで鼻を鳴らした。目が合ってしまい、瞬時に逸らす。
「極彩さんから見てどうですか」
「外見だけでは似ていない同胞もありますから…ひとつひとつの所作でいえば、重なるところはあります。ただこれは決まりきった作法の問題かもしれません」
「そうですか。ボクから言わせてもらえばまったく似ていませんよ!一体誰がそんな噂を広めたんでしょうね。何でもかんでも背鰭尾鰭を付けていればそのうち勝手に泳ぎだすってもんです」
菖蒲は怒りだし、声を荒げた。
「どうしてそんな噂が持ち上がったんですか」
「分かりません。群青さん、人嫌いのクセにあの若造のことは随分と構いたがりなんですよ。だからじゃないですか。ほら、極彩さんが連れていった、山桃とかなんとかっていった子のほうがまだ信じられますね」
極彩は首を傾げた。山桃という名の知り合いはいない。菖蒲は茶毛で真面目そうな極彩より年下の若者だと説明した。
「桜ですか」
「そうです!そうです、そうです、桜さん」
夜空に輪状の紫煙が燻る。
「どうして今になって…」
菖蒲は呟いた。
「何か証拠でもあったんじゃないですか」
中年男は悲愴を帯びた表情で極彩を肩越しに振り返る。しかし唇から漏れる煙はそれを半減させる。
「この国にはありませんが…血液…いや、髪や皮膚片でも十分なのですけど、体組織の鑑定で或いは…」
彼はぼそぼそと専門的な話をし始めた。一度聞いてもすぐに覚えられない単語や作業方法に極彩は途中から耳を貸すのをやめてしまった。暫く放置していると菖蒲は煙草を潰し、また煙草を咥える。
「淡藤殿が群青殿と兄弟だと、何か不都合があるんですか」
「ありません、何も。何もありませんよ!まったく、これっぱかりもありません。皆無です」
「しかし、何かが…気に入らない?」
「そうです!」
菖蒲は首を背面まで回しかねない勢いで曲げた。
「兄弟がいると知れたら、誰でも気になると思いますよ。片割れですからね。たとえ血が繋がっていなくても、共有した親や柵があるわけで…」
彼は小さく「すみませんね」と言った。
「何故謝るんですか」
「極彩さんに兄弟の話は酷かと思いまして」
「いいえ。どうして?」
無精髭のある口元が媚びたようにへらへらと笑った。
「どうしてと訊かれると困ってしまいますね。銀灰さんのことです。もう整理は付いているんですか」
「ああ、そうでした。菖蒲殿にお渡ししたかったのです。生活費とそれから…」
極彩は女豹倶楽部の給金と城からの謝礼金の入っている袋を布に包んだ。
「今、ボクの所にはいません。母親の元に帰りたがったので、帰しました」
「母親のところへ…大丈夫なんですか。だって…」
実の母から疎外された日々のことは断片的に聞かされていた。檻に押し込められたり、食事を与えられないなど時折話していた。
「銀灰さん本人が帰りたいと言っている以上、ボクの元にもいるのもおそらく苦痛だったのかも知れません」
「仕事も一区切りついたところで、会いに行きますか」
極彩は目を見開いた。会う、ということはまったく考えてもいなかった。激しい動揺に襲われる。弟は失恋した。思いもよらない相手が新郎として弟の想い人を掻っ攫っていった。弟の好きな娘を娶ったその男が憎いくらいだった。雄の闘争に負けた羞恥から弟は姉と保護者の元を去った。しかし作り上げた話だった。実際はそうではない。逃げて目を逸らし顔を背けた事柄が直撃し、打ち砕かれてしまう。
「一目見るだけでも…様子を看て…」
菖蒲は宥めるように言った。金を入れた封が戦慄きながら布を開けさせていく。弟が餓死させられてしまうかもしれない。凍死させられてしまう。軽い風邪でさえ痩せた肉体を蝕む。母親を檻に入れねば弟が死んでしまう。静かな焦燥は、何故弟ともう一緒に住んでいないのか、そこに至る重苦しく冷えた事実に沈められ、それが処理しきれない。
「落ち着いてください」
縁側からいつの間にか目の前にやってきた菖蒲は煙草臭かった。
「銀灰くんは、あの新婦さんが好きだったんですよね」
極彩さん。菖蒲は叱るように語気を強めて彼女の名を呼んだ。求めていたのは肯定だった。
「そうでないなら、わたしは何も知りません」
「彼の一度曝した感情を無いものとして扱うのは非常に危険です。貴方はそれでどうにかやり過ごせるかも知れません。ですが銀灰さんはどうなります?彼は貴方をひとりの女性として―」
「やめてください!」
極彩は叫んだ。小刻みに震えながら菖蒲を恐る恐る確認する。中年男の涼やかな目元が彼女を射抜いている。
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