314 / 339
314
しおりを挟む
早々に河教風に言うと“穢捨喜洗”を求められた。金を渡せ、それは己の身を清める喜びでもあるのだぞ、ということである。銀灰のためになるならと彼女はいくらか握らせた。
俗名・銀灰を申す者は確かにこちらで身柄を引き取っております―そこの者、明鏡を呼びなさい…彼の者は浪号を明鏡ともうしまして、まずは断食の段に入っております。
金属製の杖を持ったそれなりに位の高そうな笠をかぶった僧が極彩を案内した。寺院の敷地には粗末な身形の若者たちが列を成し、玉砂利に座している。同じ体勢、同じ服装がずらりと並び圧倒された。
「……断食ですか」
眉を顰めずにはいられない。ここがこういった場所でなかったら今すぐにでも銀灰を連れ戻すところだった。しかし今後のことが決まっていない以上、弁えねばならない。
断食に経験があるようで、脱落者が続出したにもかかわらず、弱音も吐かないなかなかの忍耐を持った有望な若者ですな。
「脱落するとどうなるんですか」
こういう立場にありますと、誤解を受けることも多く、危機感を持って内情を喋らねばなりませぬ。先に申し上げておきますと、ここは虐待施設や更生施設、慈善団体ではございませぬ。やはり何かしらの代償もなく、お話いたすのは、どうにも我々には分が悪く……
極彩はまたいくらか握らせた。
理性で従えねば、次は肉体に訴えかけているわけです。肉の痛みは飢えを忘れます。
「わたしの弟は無事ですね?」
彼女は念を押した。
「会わせてください」
次は求められる前から倍額を握らせる。弟に会うための手続きに通される。内部は女人禁制であるが、特例として白い布を被せられて入場を許可される。面会もまた透過性の低い布を垂らすため、肝心の銀灰の顔が見られない。垂幕の奥に気配がある。
「銀灰くん……?」
「そうですよ」
食い気味に返ってきた声を聞いて極彩は布を隔てた相手が義弟とは思えなかった。急激に声質が変わるということがあるのだろうか。
「本当に、銀灰くん?」
「そうですよ。疑ってるんですか、姉上」
ぞわりと寒気がした。その理由が自分でも分からない。
「今日は大切な話があって来たのだけれど……何も食べてないんですってね。そういう状態で考えられるかなって少し心配なんだ」
「大丈夫ですよ、ちゃんと食べてますし」
「さっきは断食していると聞いたのだけれど……」
垂幕の奥の義弟は黙った。
「その修業はもう終わってるんです」
「そう。急に来てごめんなさい。大切な話っていうのは後見人のことで。とっても大切なことなのだけれど、驚かないで聞いてくれる?」
「もちろん、もちろん」
布の向こうにいるのは果たして本当に弟か。声や喋り方に疑いは強まるが、しかし断定に迷う。そういう己に彼女は腹が立った。
「縹さんが後見人に据えた人は、」
腹を決めて口を開くと、面会終了の声が外から掛った。
「え……?」
極彩は義弟を呼ぶ。何度も、面会終了を伝えられる。
「銀灰くん……食べられているならよかった。また来るから。身体には気を付けて」
彼らしくない声が返事をして、極彩も外に出なければならなくなる。彼は今この施設に身を預けているのだ。無理を言うわけにはいかない。次に来るときは端的に話さねばならない。しくじってしまった。
繊維からわずか透けた布を被せられた極彩は寺院の内部のごくわずかしか分からなかったが不穏な気配が四方八方から向けられている感じがあった。笠と杖が特徴的な僧に迎えられ、出口まで案内される。
ここは女人に対する欲、血を繋ぎ栄える願いを捨て去る場所でございます。貴方のような女人が現れたなら、欲と穢れを自ら身に纏わんと内なる獣が騒ぎ立てるわけでございます。そしてそれを封じ込める輩がどれくらいいるのか……恥ずかしながら分かりませぬ。とすれば、内なる獣を排除せんと修行の日は延びます。修行が延びるということは、食い扶持が要るわけでございます。繕わねばならぬ道具もまた増えるというわけですな。
極彩は銭を握らせた。虚しさが募る。銀灰とろくに話せないことも、銀灰がこのような場所に逃げ込まなければならなくなるまで追い詰めてしまったことも。
彼女は寺を出て林道を戻った。長い階段の前で桃花褐とうぐいすが待っている。大男の膝に腰を下ろしていた男児が極彩と認めると駆けつけて飛びついた。適当に受け止める。桃花褐のほうはまだ座ったままで、彼女が近付くと腰を上げた。
「どうだったい」
極彩は首を横に振ってからあったことを報告した。施設の存続には俗世の商売が必要だ。当然金が要る。そこまでは彼女も理解しているつもりだ。しかしどこか拝金的な匂いがしてならなかった。桃花褐は頑丈そうな顎を頻りに撫でている。
「ああいうところは、男に認められてェ男どもの集まりだからな。女に敬意のねェ奴が多い。敬意なんぞ払えば、胡麻擂り、俗物、不覚悟の軟派野郎と見做されるわけでさ。……当然、そうじゃねェところもあるけどよ、閉鎖的な社会だろ?残念だが、そういうところもある」
極彩は俯いてしまった。銀灰の飯に回れば良いと考えたが、今になってみると、彼に回ることは無さそうだった。
「明日、俺が行く。どうでェ。話は、何か覚書でもあれば、それを読んで聞かしてくる……それじゃダメけ?」
「……恥ずかしい話なのだけれど、」
彼女は面会が垂幕を介さねばならなかったこと、銀灰に対する不信感を覚えたことも付け足して説明する。姉として弟を見抜けなかった。その不甲斐なさを認め、他者に打ち明ける。これは彼女にとって苦しいものだった。
「そりゃ仕方ねェさ。その疑心も、一応頭の中に入れときまさ。以上を踏まえてどうするお嬢ちゃん。俺に任せるかい」
極彩は急かされている気がして垂れた目から顔を背けた。弟のことを部外者に頼っていいものか。しかし弟にきっちり話を通すには、女の身では侮られ、金をせびられるばかりである。
「お姉ちゃん、この階段また登るのムリです!」
うぐいすが手を引っ張った。桃花褐も宥めるように厚みのある唇で微笑を浮かべる。
「俺に任せてくれや。弟クンには悪ィことしちまったからな。役に立たせてくれ」
すぐに返事ができなかった。拗ねたように彼等から目を逸らす。
「やれる人に頼むことも、それが今わたしにできることというのは分かっているけれど……まだ、意地があって…………」
ぶつける矛先の見つからない怒りと悔しさを努めて抑えた彼女は、口調こそ棘を持っていたが、その態度は素直だった。
「真っ先に考えるのは銀灰くんのこと……桃花褐さん。よろしくお願いして、いい……?」
震える拳を握り締め、彼女は垂れ目の大男を真正面に捉えるとゆっくり頭を下げた。固く目を閉じる。人の信仰心利用して金儲けか。頭上で彼の呟きが聞こえる。
「それは、俺から任せてくれって頼むところだわな。顔上げてくれや。帰ろうぜ。足は行けそうかい」
徐ろに顔を上げて頷いた。桃花褐はそれを見てとると、懐から丁寧に折り畳まれた大判の手巾を取り出した。薄い生地であるのが広げられたときに分かった。
「嬢ちゃんはこの山との相性が悪ィ。被っとけ」
布を頭から被せられる。香の匂いがふわりと漂った。小さな手が視界の制限された女の腕を誘導する。
長い階段を降りていく。霊はもう現れなかった。それがどこか寂しくもある。
俗名・銀灰を申す者は確かにこちらで身柄を引き取っております―そこの者、明鏡を呼びなさい…彼の者は浪号を明鏡ともうしまして、まずは断食の段に入っております。
金属製の杖を持ったそれなりに位の高そうな笠をかぶった僧が極彩を案内した。寺院の敷地には粗末な身形の若者たちが列を成し、玉砂利に座している。同じ体勢、同じ服装がずらりと並び圧倒された。
「……断食ですか」
眉を顰めずにはいられない。ここがこういった場所でなかったら今すぐにでも銀灰を連れ戻すところだった。しかし今後のことが決まっていない以上、弁えねばならない。
断食に経験があるようで、脱落者が続出したにもかかわらず、弱音も吐かないなかなかの忍耐を持った有望な若者ですな。
「脱落するとどうなるんですか」
こういう立場にありますと、誤解を受けることも多く、危機感を持って内情を喋らねばなりませぬ。先に申し上げておきますと、ここは虐待施設や更生施設、慈善団体ではございませぬ。やはり何かしらの代償もなく、お話いたすのは、どうにも我々には分が悪く……
極彩はまたいくらか握らせた。
理性で従えねば、次は肉体に訴えかけているわけです。肉の痛みは飢えを忘れます。
「わたしの弟は無事ですね?」
彼女は念を押した。
「会わせてください」
次は求められる前から倍額を握らせる。弟に会うための手続きに通される。内部は女人禁制であるが、特例として白い布を被せられて入場を許可される。面会もまた透過性の低い布を垂らすため、肝心の銀灰の顔が見られない。垂幕の奥に気配がある。
「銀灰くん……?」
「そうですよ」
食い気味に返ってきた声を聞いて極彩は布を隔てた相手が義弟とは思えなかった。急激に声質が変わるということがあるのだろうか。
「本当に、銀灰くん?」
「そうですよ。疑ってるんですか、姉上」
ぞわりと寒気がした。その理由が自分でも分からない。
「今日は大切な話があって来たのだけれど……何も食べてないんですってね。そういう状態で考えられるかなって少し心配なんだ」
「大丈夫ですよ、ちゃんと食べてますし」
「さっきは断食していると聞いたのだけれど……」
垂幕の奥の義弟は黙った。
「その修業はもう終わってるんです」
「そう。急に来てごめんなさい。大切な話っていうのは後見人のことで。とっても大切なことなのだけれど、驚かないで聞いてくれる?」
「もちろん、もちろん」
布の向こうにいるのは果たして本当に弟か。声や喋り方に疑いは強まるが、しかし断定に迷う。そういう己に彼女は腹が立った。
「縹さんが後見人に据えた人は、」
腹を決めて口を開くと、面会終了の声が外から掛った。
「え……?」
極彩は義弟を呼ぶ。何度も、面会終了を伝えられる。
「銀灰くん……食べられているならよかった。また来るから。身体には気を付けて」
彼らしくない声が返事をして、極彩も外に出なければならなくなる。彼は今この施設に身を預けているのだ。無理を言うわけにはいかない。次に来るときは端的に話さねばならない。しくじってしまった。
繊維からわずか透けた布を被せられた極彩は寺院の内部のごくわずかしか分からなかったが不穏な気配が四方八方から向けられている感じがあった。笠と杖が特徴的な僧に迎えられ、出口まで案内される。
ここは女人に対する欲、血を繋ぎ栄える願いを捨て去る場所でございます。貴方のような女人が現れたなら、欲と穢れを自ら身に纏わんと内なる獣が騒ぎ立てるわけでございます。そしてそれを封じ込める輩がどれくらいいるのか……恥ずかしながら分かりませぬ。とすれば、内なる獣を排除せんと修行の日は延びます。修行が延びるということは、食い扶持が要るわけでございます。繕わねばならぬ道具もまた増えるというわけですな。
極彩は銭を握らせた。虚しさが募る。銀灰とろくに話せないことも、銀灰がこのような場所に逃げ込まなければならなくなるまで追い詰めてしまったことも。
彼女は寺を出て林道を戻った。長い階段の前で桃花褐とうぐいすが待っている。大男の膝に腰を下ろしていた男児が極彩と認めると駆けつけて飛びついた。適当に受け止める。桃花褐のほうはまだ座ったままで、彼女が近付くと腰を上げた。
「どうだったい」
極彩は首を横に振ってからあったことを報告した。施設の存続には俗世の商売が必要だ。当然金が要る。そこまでは彼女も理解しているつもりだ。しかしどこか拝金的な匂いがしてならなかった。桃花褐は頑丈そうな顎を頻りに撫でている。
「ああいうところは、男に認められてェ男どもの集まりだからな。女に敬意のねェ奴が多い。敬意なんぞ払えば、胡麻擂り、俗物、不覚悟の軟派野郎と見做されるわけでさ。……当然、そうじゃねェところもあるけどよ、閉鎖的な社会だろ?残念だが、そういうところもある」
極彩は俯いてしまった。銀灰の飯に回れば良いと考えたが、今になってみると、彼に回ることは無さそうだった。
「明日、俺が行く。どうでェ。話は、何か覚書でもあれば、それを読んで聞かしてくる……それじゃダメけ?」
「……恥ずかしい話なのだけれど、」
彼女は面会が垂幕を介さねばならなかったこと、銀灰に対する不信感を覚えたことも付け足して説明する。姉として弟を見抜けなかった。その不甲斐なさを認め、他者に打ち明ける。これは彼女にとって苦しいものだった。
「そりゃ仕方ねェさ。その疑心も、一応頭の中に入れときまさ。以上を踏まえてどうするお嬢ちゃん。俺に任せるかい」
極彩は急かされている気がして垂れた目から顔を背けた。弟のことを部外者に頼っていいものか。しかし弟にきっちり話を通すには、女の身では侮られ、金をせびられるばかりである。
「お姉ちゃん、この階段また登るのムリです!」
うぐいすが手を引っ張った。桃花褐も宥めるように厚みのある唇で微笑を浮かべる。
「俺に任せてくれや。弟クンには悪ィことしちまったからな。役に立たせてくれ」
すぐに返事ができなかった。拗ねたように彼等から目を逸らす。
「やれる人に頼むことも、それが今わたしにできることというのは分かっているけれど……まだ、意地があって…………」
ぶつける矛先の見つからない怒りと悔しさを努めて抑えた彼女は、口調こそ棘を持っていたが、その態度は素直だった。
「真っ先に考えるのは銀灰くんのこと……桃花褐さん。よろしくお願いして、いい……?」
震える拳を握り締め、彼女は垂れ目の大男を真正面に捉えるとゆっくり頭を下げた。固く目を閉じる。人の信仰心利用して金儲けか。頭上で彼の呟きが聞こえる。
「それは、俺から任せてくれって頼むところだわな。顔上げてくれや。帰ろうぜ。足は行けそうかい」
徐ろに顔を上げて頷いた。桃花褐はそれを見てとると、懐から丁寧に折り畳まれた大判の手巾を取り出した。薄い生地であるのが広げられたときに分かった。
「嬢ちゃんはこの山との相性が悪ィ。被っとけ」
布を頭から被せられる。香の匂いがふわりと漂った。小さな手が視界の制限された女の腕を誘導する。
長い階段を降りていく。霊はもう現れなかった。それがどこか寂しくもある。
0
あなたにおすすめの小説
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる