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ノワール
しおりを挟む「そういうことだったら黙っておこう?」
「そうよ…先生としても今はこの世界に慣れていくことが大切だと思うわ」
「そうだ、合流するのは絶対だがそう長くなければいいだろう」
「俺だってもう少しはこの世界を楽しみたいっていうのが本音だな!」
皆の意見を聞いた結果、今は広めないでおこうと決まった。
しかし、先程待合室に居る人や、これからクエストを受ける際にはバレてしまうのも必然的だが、少し配慮はしていこう。
「そうなると今のうちにギルドを作り上げたそうが良さそうだけど?」
「ソラさんの言う通り!ここはギルドを新設して外部から出来るだけ干渉されないようにするのが最善かと思います!」
受付嬢が提案してくるが、この考えは皆と全く同じだったようだ。
「まぁそうなるよね」
「と、いうことで新しいギルドを新設する手続きとかは?」
基本こういうのは書類を書いて…とめんどくさいものだろう。
「ランクが銀以上の方が新設することが可能ですが最低5名は必要になり、最大は200名。そして金貨が10枚必要となります」
シルバーでも作ることは可能なのか…。
だが金貨10枚!?俺はお金があり余ってるとはいえ相当な実力がいるのは確かか。
それか大きな団体ならば金銭の事はすぐに解決するだろう。
「分かりました。ギルドを新設しようと思います」
「大丈夫ですか?結構な金額だと思いますが」
「はい」
これは仕方の無い出費だ。
「黒である方が金欠だとしてもすぐに稼げるじゃろうて。まぁ流石と言った感じじゃな」
「では早速、ギルドメンバーに入る方々のバッジとギルド名を決めていただきたいんですが… 」
さっきから俺の話から何も進んでないので他の5人のバッジは当然作られてはいない。
ギルドは後回しだな。
「そうでしたね!すっかり忘れていました…」
「神水晶を持って来るんじゃ」
「神水晶?」
俺も聞いたことのない単語が飛び出した。
この世界のオリジナルの物だろう。
「はい、只今お持ちしました!」
ゴトンとずっしりとした感じの神水晶は綺麗に光輝いている。
名前が変わっているだけかとも思ったが、本当に見たことのない物だった。
「神水晶はバッジと同じ色に区別されて光ります。ランクは神水晶の色を元にして分けられていますからね」
「ということは俺が手を翳すと黒色に光るということですか?」
「お、俺…?…まぁそういうことですね」
おっと…自分の中身は男だが今は女の体だったか。
確かにこの格好で一人称が俺だと違和感があると感じられるのも頷けるか。
ここは男女共に使える「私」にしておくべきかもな。
「えっと…私が一応翳してみますね」
「わかりました!」
ちょっとウキウキとした態度で神水晶を見つめる皆。
ギルドマスターまで神水晶に釘付けだ。
「では」
手を翳した時、すぐに黒色が浮き上がると思っていたがそうじゃなかったらしい。
まずは黄、そして紫と色が変色している。
……白…金、最後には黒になった。
「おぉ!これで黒であることは間違いない!」
ーーーーパキンッ!
黒だと皆で顔を会わせていた時、神水晶から嫌な音が鳴る。
これは見なくてもわかる、割れてるわ。
「なっ、なんじゃと!神水晶が割れとる!」
「ここでもあるあるな事してくるの?」
ジト目でこちらを見つめてくるが割れたものは仕方がない。
修理費が出せるなら出すが…。
「予備が1つあるから何とかなるわい。伝説の黒に弁償してもらおうなんて思ってないから安心せい」
良かった…。
ホッとしていたその時。
「因みにじゃが、この神水晶は白金貨1枚なんじゃよ?」
1億円…危ない危ない。
だから大きな冒険者ギルドⅡしか置いてないのか、それなら納得もできるな。
「よし、新しいのを持ってこさせた。好きな順に手を翳んじゃ」
「あ、出来たら割らないで下さいねぇ?」
「ちょっとワクワクするよね、こういうの」
我こそがと翔が神水晶の前へと出る。
一番ワクワクしてるのが翔ということもあってか誰も順番を決めようなどとは言わない。
「一番乗りだ~!」
ワクワク感を抑えられない翔は大声をあげながら神水晶へと手を翳す。
「黄!紫!……こい!銅こいよ!」
「これは紫で決定みたい」
「えぇ!まだあるかも!」
「諦めなさい、まだ紫のままよ」
翔は自分はまだ上がると信じてずっと神水晶に手を翳しているが一向に変わりそうにはない。
「すごいですっ!普通は黄色からですよ?黄色から紫になるのも結構な努力が必要なんですからね?」
受付嬢がフォローしてくれるがその通りらしく大抵が黄色スタート100人に1人位は紫スタートだという。
「まだまだ俺たちが残ってるんだ、早く終わらせようぜ」
祐希は想像よりもワクワクしているようだ。
祐希の言う通り、翔がずっと翳していてもこれ以上は意味がない。
それからの順番は予め翔がしている間にジャンケンをして決まっていたようだ。
「じゃ、私から!黄…紫!よかった!」
美紅も翔と同じく紫であった。
「次は…先生の番ね」
先生は黄色。
「うぅ、どうせお荷物ですよーだ…」
先生の中の何かが崩れ落ちた。
あれはもう先生の立ち位置を捨てていると言っても過言ではない。
分かりやすく拗ねて、悲しんでいる。
それからは全員紫。
結果としては先生以外 は紫だということだ。
これにより更に先生は萎えていった件については誰も触れなかった。
「先生!こういうときもありますよ!」
犬耳がシュンとしている先生は上目遣いでこちらを見てくる。
「羽柴君に言われてももっと萎えちゃうよ!」
はっ!俺が一番上の黒だった。
そりゃ一番恵まれてる奴に慰められるのは嫌か。
「あっ、羽柴君、そんなこと言うつもりじゃなかったんだけど…」
「いいですよ、これから強くなっていったらいいんですから!」
最初先生はすぐに帰るから強くなる必要なんてない、静かにして暮らしておこうと立案したが誰も乗らず仕舞いであった。
しかし、帰れる見込みが殆ど無いと分かると弱いままではいられないと冒険、トレーニングすると朝食では言っていたがすぐにこんな事態になるんだから。
「まぁ!逆にいえば俺…私が!一緒に初級クエストを受けて後は皆がこの世界に慣れて強くなっていく事ができるってことですよ?」
VRMMORPGでは初めての筈のディメリメントが先程から何故か急に馴染み、何年もここでプレーをしていた様に感じられた。
「結構役に立てると思いますよ。まずは慣れから、です!」
「そうね、言ったからには寄生プレーでもさせてもらおうかしら…」
「それじゃ先生が倒した意味が無いじゃないですか」
「うぐ…」
◇
全員の情報が集まったわけで、まずは初級クエストから始めていきたいと思う。
俺も技を使えるのは確かだが、どこくらいの力が必要なのか、どの程度で倒すことができるのか、というのを理解できていない。
体は知ってるのにーというやつだ。
「よし、となるとここにあるスライム退治だな!な?蒼?」
祐希はスライムが雑魚いと思っているだろうがアイツは結構手強い。
核以外の部分は物理攻撃95%カット、魔法攻撃50%カットと聞くだけで「え?強くね?」となるレベルだ。
それに魔法も使ってくるわ、物理攻撃でアタックして謎の気持ち悪い粘液吐くわで最悪のオンパレードだ。
因みに俺はデコピンで倒そうと思えば出来ちゃったりする。
「良く見ろ、これは銅バッジ推奨のクエストだ。お前達素人が初めての冒険におすすめの相手じゃない。それにスライムはお前が想像している以上に強いんだ」
「お、おう。んじゃ…推奨バッジ紫のゴブリン退治はどうだ?」
「うーん…巣を襲撃する以外の奴を倒すなら悪くないか。よし、これでいこう」
皆の初めてのクエストはゴブリン退治だ。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
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