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発見
しおりを挟む「この前は楽しかったねー」
「私はもう心配で心配で!」
「鈴ちゃんはもっと訓練しなきゃだよ!」
未来は応援してるつもりだろうが先生に棘が刺さっているように見えた。
最近では「先生」では無く「鈴ちゃん」と呼ばれ始めている。
「ブルト王国もいいけどさ、別の国にも行ってみない?」
「俺も賛成」
「私も~」
「私も見てみたいかな」
もう少しこの国に居ても良いと思っていたが皆がそう言うなら問題はない。
転移やら翼を使えば直ぐに行けるだろう。
直ぐに支度をして皆で庭にでる。
「よし、じゃあ早速行くか」
「よーし!隣国のギルメット王国に!」
「「出発だー!」」
「テンション高いな…はい」
俺はそういうと翼を展開して腕を広げる。
「あ、悪いけど今回はゴメンだからね」
「俺も同感」
「早いのはいいけどそんなに急いでないし、滅茶苦茶早すぎるし、酔うしさ」
良かれと思ってたけど実は不評でしたとさ。
「馬車とか歩いてゆっくり行くのもロマンの1つだと私は思うけどな~」
「わかったよ…別に急いでる訳じゃないしね」
準備はバッチリ。
俺たちは1人1本焼き鳥の串を片手にギルメット王国を目指して歩き始めた。
◇
「あの黒の冒険者の人どっか行っちゃったみたいですよ。ギルマス」
「何っ!?もうじゃと!?」
「少しの間は何が来ても平気だと確信しておったのに…。余りに早かったのぉ」
数日後にやっとギルマスの爺さんは俺達がブルト王国を出たと気付いた。
◇
「ふーんふんふーん…」
「なに鼻歌歌ってるんだよ美紅」
「いいでしょ?ここに来てから毎日が楽しいもの」
「まぁ…それは否定できないけどさ」
「もう一生帰れないと言っても?」
「またその話~?」
「何度でも言うが俺は一生この世界でも悪くないな!」
翔が声を大にして言う。
変わらずだがあっちの世界に未練はないのか…。
「今はこっちにいるんだから!」
「そうさ、それより魔物は居ないのか?」
「今はいないみたいだな」
ブルト王国からギルメット王国へと行くには果てしない平地を歩き続けなければならない。
両国の丁度中間にある小さな町には商人達が交通量も多いことから“商人の町”と呼ばれてるらしい。
大いに賑わっている所だ。
定住している人は少ないが旅の者や商人が多いことから宿等が多いのがポイントだ。
「商人の町には後どれくらい?」
「まだまだだな」
「今まで歩いて来た分の2倍位かな?」
「そ、そんなにあるの!?」
「しかもそれがまだ中間って言うの?」
「あー…、2倍は言い過ぎた!ここまで来た分を歩いたらってくらいかな」
皆が想像している以上にギルメット王国への道のりは長く、身体共に疲労していた。
「結構飛ばして歩いてるからちょっとは休憩しようか」
「そうね、もう疲れたぁぁ」
美紅は道端に固まってあった草に腰を下ろした。
「案外ふかふかなのね」
「でもすごい服に草ついてるよ?」
「え?あっ、最悪だ…」
座り心地は上々だがデメリットが大きすぎる自然の草溜まりの椅子に座ることはもう誰もないだろう。
「ちょっと試したいことあるから席をはずすな、皆はここから動かずに休憩しててくれ」
「ほーい」
「羽柴くん、爆発とかさせないでね」
「それは鈴ちゃんに同感」
「分かってるよ、一体何だと思ってるんだ。祐希も一緒になって煽るなよ…」
「ははは、ついつい」
一言告げて俺は近くの森へと走って森の中へと入っていった。
森に入った途端、更にスピードを上げる。
少しして走るのを止めて立ち止まる。
皆の事を考え、もしもの為にも6人の状況把握は忘れない。
「よーし、色々と試すか」
魔法とか色々と試して確認だけはしてみたかったが良い機会が無かったからちょっと遅くなってしまった。
ここなら相当やらかさないとバレることはないだろう。
そもそも大きな魔法とか試すつもりは無い。
「んー、まずは【機能制御】」
おぉ、自分の中で限界を決めれる感覚。
気持ち悪い感じだがこれで意図せずして物をぶっ壊す等と考えなくてもいいって訳か。
俺は皆に知られてはいないがドアノブを壊してしまった事がある。
ささっと修復しておいたが。
「取り敢えず物理的な力を抑えておくか」
その他に制限をかけてメリットになる事は多分無いだろうし防御等に関してはいじらなくても良さそうだ。
「後、これは成功する保証は無いが…試す価値位はあるだろっ!成功してくれよ!」
「【反転】!」
魔法を自分にかけてみる。
この魔法はあらゆるモノを反転させる、矢が飛んできたら逆に打ち返すって感じだ。
まぁ発動するまでのタイムラグが酷いから素早い攻撃とかには使えそうにないかな。
これを利用してやると女の俺は……って考えた。
体が謎の物体に覆われる。
そして体全体が覆われたと思った瞬間、一瞬にして謎の物体が消えた。
顔を確認しなくとも分かるこの感覚。
どこか懐かしい感じだ。
「お、おぉ!男だ、戻ってる!」
股に何やら感覚があるのといい、髪も短く、声も低くなっている事もあり成功だと確信した。
適当に魔法で鏡の様なものを即興で作り上げる。
一応男には戻ったが顔も一応確認しておかないとな。
「なんてこった…」
「自分でも驚くくらいにイケメンに成りやがって…」
髪色はそのままにして、勿論女の時と顔つきは違うが似ている。
体格はどれだけトレーニングしたんだと言いたくなるような筋肉質。
身長も先程よりも10㎝以上も伸びている気がする。
元の世界の俺が見てたら嫉妬するくらいだな。
「よっし!これで一安心っと。あとは軽い魔法の確認としよう」
「【重力操作】」
一定の範囲の重力を軽くしたり重たくすることができる事が出来る魔法だが周りに悪影響があまり無い魔法だったから使ってみた。
誤作動なく発動したな。
身体の確認に数分使ったしな…。
早く帰らないと心配されるか。
「最後にこいつを確認してみよ【電磁砲】」
大空に向けて放った【極電磁砲】はバチバチと音を立てながら雲を突き抜けて数秒経って消えていった。
「あー、これダメなやつだ…」
これを実験だとか言って岩に向けて打っていたらこの森の一部が吹き飛ぶところだった。
力の加減さえ覚えればそんなことにはならないがな。
次回からは加減を覚えたからこんな馬鹿げたことにはならない筈。
「心配されるかもな、帰るか」
遠くからあんな空を突き抜けるものみたらビビるだろうし、急ぎ目か。
俺は翼を展開して森の上へと移動して眺める。
案外景色いいもんだな。
急ぎ目と言ったがものの数十秒で皆が見えてきた。
直ぐ手前のところで翼を消して走って戻る。
直す意味は特にないけど。
「ただいま」
「おかえりぃぃぃっ!?」
「おまっ!蒼か!?」
「えっ…羽柴君!?」
「そんな驚かなくてもさ」
「いや、逆に無理だろ」
冷静に祐希にツッコミを入れられてしまった。
どういう訳かを説明して落ち着いたが美紅含め、数人がそわそわしている気がする。
「何そわそわしてるんだよ」
「ええ、急にそんな変身みたいなことされたらねぇ?しかも前の世界の蒼もカッコいいし好きだったけど…もっとカッコ良くなってるしさ」
「ちょっとカッコよさ分けろよ」
翔が肩を軽く殴り言ってきた。
お前も十分イケてるけどな?
「よし、休憩は十分にしたし。先に進もう」
「そうだな、先生の体力も戻ってるらしいしな」
というわけで出していた荷物を片付けた後、直ぐにギルメット王国、まずは商人の町に向かって歩き始めた。
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