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最終決戦編
第四十二話 【初期化】
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ユリエルは作戦会議を終え、瑞姫と一緒にサン・アンピール内の実験棟に来ていた。この実験棟はアンロックの実験室とはまた別で、かなり離れたところにあるため、アンロックに見つかる可能性はかなり低いのだ。
「ねぇ?本当にさっき言ってたような事出来るの?」
「えぇ。私が探しているものさえ見つかれば、多分出来ると思う。」
部屋に備え付けられている端末を操作しながら、瑞姫は答えた。二人がここに居るのは、ユリエルが凍りづけにしたクローンの思考回路を操作し、自分達の味方にする方法があると瑞姫が言ったからだ。ユリエルが部屋の外を警戒し、瑞姫が端末内から、クローンの思考回路を組み替えるプログラムを探し出す。
コツ…コツ……。
瑞姫が最後のファイルを開けようとしたその時、廊下を歩く一つの足音が聞こえてきた。
「マズイ…。誰かこっちに来る。」
ユリエルが呟く。しかし、瑞姫は端末の操作をやめなかった。
「何してるの…!早くしないと……。」
「…あった!」
瑞姫はユリエルの言葉を無視するかのように、手際よく端末と端末を繋ぎ合わせる。そして、緑色のゲージが動き出したことを確認すると、胸ポケットから四角いケースを取り出した。
「まだこっちに来てる?」
「…え?えぇ。」
とっさに部屋の外を確認して答えるユリエル。すると、瑞姫は取り出したケースを開け、中から小型の注射器を取り出した。
「それ…、どうするつもり?」
「あら、知らない?私はこれでも警務隊一の科学者って言われてるのよ?まぁ、いい噂は出回っていないみたいだけど…。」
ポリポリと頬を掻きながら苦笑いを浮かべた瑞姫は、そのまま注射器を片手に扉の裏へと隠れた。
「あなたもどこかに隠れて。」
瑞姫に言われ、すかさずユリエルも机の陰に身を隠す。しかし…。
ガタッ!
「……!!!」
机の影に隠れようとしたその時、ユリエルは謝って机の上にあったペン立てを倒してしまった。
「誰だ!」
当然、廊下を歩いていた者はその音に気づき、部屋に入ってきた。
「この部屋から聞こえたと思ったんだが……。」
辺りを警戒しながら寝屋の中を捜索する男。そして、倒れているペン立てを見つけると、机の裏を覗き込もうと身を乗り出した。
ピコンッ!
「…!?」
もう少しでユリエルが見つかるというところで、端末の作業が終わった音が鳴る。男は突然の音に驚き、端末へと視線を送った。
「一体…、誰がこんな。」
端末に気をとられている男の背後から、瑞姫はそっと近づき首に注射器を刺した。
「ごめんなさい。私達も急いでいるの。」
注射器の中身が男の体へと入っていく。それは瑞姫が独自で開発した毒薬だった。瑞姫に毒を打ち込まれた男は苦しむ素振りすら見せずに、白目を向いて一瞬で昏倒した。
「アンロックはもう自分以外ここに味方は残っていないって言っていたのに…。」
倒れた男を見てユリエルはふと考える。ユリエルの知る限りではアンロックはすぐにバレるようなくだらない冗談は言わない。しかし、現にこの男は生きてここに居た。ユリエルが考えていると、端末の接続を切った瑞姫が準備を整えて出口で待っていた。
「何してるの?さっさと戻るよ?」
「分かった。」
ユリエルはそう答えて瑞姫の方へと振り返った。その際、もう一度だけ倒れている男へと視線を向けた。すると、さっきまで普通だった男の体が、マネキンの様な人形へと姿を変えていた。
「これは…、クローン?」
ユリエルはとっさに理解した。アンロックの目的は自分以外の者をクローンと入れ換える事だ。クローンには魂はなく、体も作り物。すなわち人間でも吸血鬼でもないただの人形なのだ。
「だから、残るは俺だけって…。クローンは生き物とは考えていないのね。」
廊下を走り、皆の元へと急ぐユリエルの頭の中には、アンロックに対しての更なる怒りが込み上げていた。
建物を出てしばらく走ると、すぐに蓮達の元へ着いた。そして、クローンの頭の部分だけ氷を割ると、瑞姫は端末のコードをクローンの耳の中にある端子と繋げた。
「これで、思考回路を初期化出来るはず…。」
ゴクリと唾を飲み込みながら見守る彩夜達。静まり返った空間にピコン!と作業終了の音が鳴り響いた。
「柚枝さん、氷を解いて。」
瑞姫の言葉にユリエルが念じると、クローンを覆っていた巨大な氷が一瞬で砕け散った。そして、目覚めるように目を開けたクローンは…。
「おはようございます。私を起動させたマスターはどなたですか?」
見事、初期化することに成功していた。
「ねぇ?本当にさっき言ってたような事出来るの?」
「えぇ。私が探しているものさえ見つかれば、多分出来ると思う。」
部屋に備え付けられている端末を操作しながら、瑞姫は答えた。二人がここに居るのは、ユリエルが凍りづけにしたクローンの思考回路を操作し、自分達の味方にする方法があると瑞姫が言ったからだ。ユリエルが部屋の外を警戒し、瑞姫が端末内から、クローンの思考回路を組み替えるプログラムを探し出す。
コツ…コツ……。
瑞姫が最後のファイルを開けようとしたその時、廊下を歩く一つの足音が聞こえてきた。
「マズイ…。誰かこっちに来る。」
ユリエルが呟く。しかし、瑞姫は端末の操作をやめなかった。
「何してるの…!早くしないと……。」
「…あった!」
瑞姫はユリエルの言葉を無視するかのように、手際よく端末と端末を繋ぎ合わせる。そして、緑色のゲージが動き出したことを確認すると、胸ポケットから四角いケースを取り出した。
「まだこっちに来てる?」
「…え?えぇ。」
とっさに部屋の外を確認して答えるユリエル。すると、瑞姫は取り出したケースを開け、中から小型の注射器を取り出した。
「それ…、どうするつもり?」
「あら、知らない?私はこれでも警務隊一の科学者って言われてるのよ?まぁ、いい噂は出回っていないみたいだけど…。」
ポリポリと頬を掻きながら苦笑いを浮かべた瑞姫は、そのまま注射器を片手に扉の裏へと隠れた。
「あなたもどこかに隠れて。」
瑞姫に言われ、すかさずユリエルも机の陰に身を隠す。しかし…。
ガタッ!
「……!!!」
机の影に隠れようとしたその時、ユリエルは謝って机の上にあったペン立てを倒してしまった。
「誰だ!」
当然、廊下を歩いていた者はその音に気づき、部屋に入ってきた。
「この部屋から聞こえたと思ったんだが……。」
辺りを警戒しながら寝屋の中を捜索する男。そして、倒れているペン立てを見つけると、机の裏を覗き込もうと身を乗り出した。
ピコンッ!
「…!?」
もう少しでユリエルが見つかるというところで、端末の作業が終わった音が鳴る。男は突然の音に驚き、端末へと視線を送った。
「一体…、誰がこんな。」
端末に気をとられている男の背後から、瑞姫はそっと近づき首に注射器を刺した。
「ごめんなさい。私達も急いでいるの。」
注射器の中身が男の体へと入っていく。それは瑞姫が独自で開発した毒薬だった。瑞姫に毒を打ち込まれた男は苦しむ素振りすら見せずに、白目を向いて一瞬で昏倒した。
「アンロックはもう自分以外ここに味方は残っていないって言っていたのに…。」
倒れた男を見てユリエルはふと考える。ユリエルの知る限りではアンロックはすぐにバレるようなくだらない冗談は言わない。しかし、現にこの男は生きてここに居た。ユリエルが考えていると、端末の接続を切った瑞姫が準備を整えて出口で待っていた。
「何してるの?さっさと戻るよ?」
「分かった。」
ユリエルはそう答えて瑞姫の方へと振り返った。その際、もう一度だけ倒れている男へと視線を向けた。すると、さっきまで普通だった男の体が、マネキンの様な人形へと姿を変えていた。
「これは…、クローン?」
ユリエルはとっさに理解した。アンロックの目的は自分以外の者をクローンと入れ換える事だ。クローンには魂はなく、体も作り物。すなわち人間でも吸血鬼でもないただの人形なのだ。
「だから、残るは俺だけって…。クローンは生き物とは考えていないのね。」
廊下を走り、皆の元へと急ぐユリエルの頭の中には、アンロックに対しての更なる怒りが込み上げていた。
建物を出てしばらく走ると、すぐに蓮達の元へ着いた。そして、クローンの頭の部分だけ氷を割ると、瑞姫は端末のコードをクローンの耳の中にある端子と繋げた。
「これで、思考回路を初期化出来るはず…。」
ゴクリと唾を飲み込みながら見守る彩夜達。静まり返った空間にピコン!と作業終了の音が鳴り響いた。
「柚枝さん、氷を解いて。」
瑞姫の言葉にユリエルが念じると、クローンを覆っていた巨大な氷が一瞬で砕け散った。そして、目覚めるように目を開けたクローンは…。
「おはようございます。私を起動させたマスターはどなたですか?」
見事、初期化することに成功していた。
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