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「申し訳ありません、どうかお許しを!」

リリーを馬鹿にした男の頭を掴み、無理やり下げ、腰を90度に折り曲げて頭が地面に激突せんばかりの勢いで頭を下げた。

「それで、主都はどうなっている?」

たとえ民が戻ってきて欲しいと願っていても、王族を引きずり下ろした者たちが私を受け入れてくれるかどうか。戻る戻らないのを決めるのは私ではない、民意だ。・・・・・・そして何よりも、リリーの意思だ。

リリーが私の妻でいてくれるなら、私は何にだってなる。

王族として戻るのが嫌だと、慎ましく暮らしていたいと願うならば、私は民意であろうと戻らない。私にとっては、リリーが存在意義そのものなのだ。

「現在、政治のトップが消えたことで混乱が起きております。それで、シデルミ様を探そうと・・・・・・」

「リリー、お前はどうしたい?」

唐突に話を振られたリリーは、首都の人間達の視線を一斉に浴びてビクリと肩を揺らした。

「私のことも、周りのことも一旦置いて、自分の素直な気持ちが聞きたい」

なぜなら、私にとってリリーは全てだからだ。私の意見はリリーの意見となる。同時に、リリーの意見は私の意見だ。

悪いことも良いことも、共に背負っていこう。

「私、シデルミといたい。だけど、困ってる人たちは見逃したくない」

「じゃあ、戻ろうか。主都に」

そして、戻ったあかつきにはリリーを王妃にしよう。

「リリー、準備しよう。一刻も早く混乱を収めないといけないからな」

「シデルミ」

不安そうに耳を伏せ、私の袖を掴み、尻尾がだらんと下がっている。オマケに私に抱きついて来る時は、極度の不安状態になったり、酷く怖がったりする時にするリリーの昔ながらの癖だ。

しかも、こういう時はリリーにとってだいぶストレスがかかっている証拠でもある。この子のためにも、早く終わらせてしまおう。

「大丈夫、君は私が守るから。何も不安がることは無い」

「⋯⋯うん」
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