64 / 98
第四章 森の精霊
第64話 翻弄される少女と赫夜の影
しおりを挟む
リーファが光の弓矢を引いて、アマトに狙いを定めて叫んだ。
「言え……お前はどうしてここにいる!」
緊張が走る。
アマトはリーファの方に顔を向けて、ただ静かにリーファを見つめ返した。
一瞬の沈黙ーーそこへ、グラントが
「待て待て、リーファ。いま、わしらはこの人に助けてもらったところじゃろ」
と割って入る。
「……確かにそうかもしれない」
そう言いながらも、リーファは弓矢を構え続ける。
「でも、さっき襲ってきたのも異世界人よ。裏でつるんでいることだって考えられるわ」
グラントが、やれやれ、と肩をすくめた。
すると、ルダルが一歩前へ出て、リーファが弓矢で狙い定めたアマトの前に立ちはだかった。
「あなた、魔物なのに……なぜ異世界人の肩を持つの?異世界人の見方をするなら魔物でも容赦しないわよ」
とリーファは引かない。
その剣幕にグラントが、
「リーファよ。残念ながらお前ではこの男には勝てんぞ。なにせ、セルヴァス10傑の男だからな」
と言ってほくそ笑んだ。
「なんですって?」
固唾を呑み、目を見開いたリーファの視線が、その10傑の男をとらえた。
「ルダルだ」
と男が短く答える。
かつて、異世界人を数十人同時に倒した伝説を持つ男がリーファの前に立っていたのだ。
(うそ……牙咆の……あのルダル……さん!?)
リーファは心の中で呟くと、少し尖った耳がピクつき、構えている弓の弦が少し緩んだ。
そこへーー
「ミィナ、気絶しちゃうしな……」
「まったくだぜ。おかげで出遅れちまったじゃねぇか」
「だって……そもそも、あなたたちがいけないんじゃない!」
「ルクーゥッ」
ミィナ、ルノア、エメルダそしてルクピーがガヤガヤ言いながら森から駆け込んできた。
「アマト様ぁーっ! ルダルぅーっ! 遅れてごめんなさ~い!」
大声でルノアが叫び、手を振る。
ミィナはアマトの姿を見つけると、顔を真っ赤にしてはにかみながら駆け寄ってきた。
「ん? なんか……取り込み中じゃねぇか?」
エメルダが目を凝らす。
「えっ?」
「あっ、本当だ」
と、ミィナは驚き、ルノアも同意した。
三人は顔を見合わせると、同時に魔物の姿へと変身し、一足飛びでアマトとルダルの前へと飛び込んだ。
「おい、そこのお前。何やってんだ?」
とルノアが露骨にリーファを威圧する。
そこへエメルダ。
「なんだ。ガキじゃねぇか」
突如割り込んできた二人の魔物を見て、呆気に取られたリーファ。
徐々に気を取り戻すと、
「ガ、ガキですって!?」
エメルダの発した言葉に反応する。
「あなた、私はこう見えても200歳近いのよ。多分、あなた達より上だわ!」
そう言うと、リーファは光の弓を解き、腰に手を当て胸を張った。
その姿を見たルノアとエメルダが
「ぷっ……はっ、はっはっはっ!」
と笑い出した。
「な、何がおかしいのよ!」
二人の思わぬ反応に狼狽えるリーファ。
「だって、なぁ。ルノア」
エメルダがリーファを指さしてルノアを見た。
「あぁ、お前。どう見ても子供だよな」
とルノアが無神経なことを言う。
「な、なんですって!」
リーファには、まだ何のことを言っているのかがわからない。
「よく見ろよ。大人ってのはオレたちみたいな体のことを言うんだぜ」
ルノアが腰に手を当て、誇らしげに胸を突き出す。
そして、エメルダも負けじと同じポーズをとった。
確かにリーファとエメルダのそれに比べれば、はるかに立派ではあった……が、その態度、どう見ても“大人”とは言えなかった。
リーファは、ルノアとエメルダが言わんとしていることをようやく理解して、自分の明らかに膨らみのない胸を見ると、頬がみるみる赤くなった。
この様子を見ていたミィナが慌てて、
「もう、あなたたち! 失礼よ!」
と二人の間に入り、たしなめるように言った。
そしてリーファの方へ向き直ると、静かに頭を下げた。
「ごめんなさい。この人たち、ちょっと無神経すぎるの」
その仕草は柔らかく、どこか温かい光を帯びていた。
ミィナの長い髪がふわりと揺れ、ルクピーが彼女の腕の中で「ルクゥッ」と鳴く。
リーファはその光景を見て、言葉を失った。
まるで美の女神の如く穏やかな気配。
(な、なんて綺麗な人なの……い、いや、別に仲良くなりたいとかじゃないけど!)
尖った耳がピクつく。
そして、腕の中で瞬きをする小さな生き物。
(か、かわいい……かわいすぎるっ……!で、でも、決して、抱っこしてみたいなんて思ってないわよ)
あまりに突然の出会いに、思考が完全にショートした。
リーファはその場で固まったまま動けなくなっていたが、なぜかエルフ特有の長い耳だけがぴくぴくと動いていた。
「ん……?」
ミィナが心配そうに首を傾げる。
そして……ルクピーも、キョトンとしつつも、そのつぶらな瞳でじっとリーファを見続けていた。
「グラント……こいつ、もしかしてミルファの妹か?」
ルダルが、リーファのピクついている耳を見ながら言った。
「あぁ、ミルファと同じで、筋金入りのツンデレじゃ」
「なるほどな。表と裏の気持ちの間で動けなくなったか」
ルダルが微笑む。
「しかし、そろそろこっちへ戻してやるかのぉ」
とグラントが、リーファの方を向くと、大きく息を吸い、慣れた感じに大声で一言。
「リーファッ!」
びくんっと肩を跳ねさせ、リーファが我に返る。
と同時に、彼女の周囲に漂っていたオーラらしきものが弱まり、長かった耳が短く縮んでエルフの姿が消え、本来の人間の姿に戻った。
その直後だったーーリーファの顔を見たアマトが息を呑む。
「――ッ!」
アマトの表情が俄かに強張り、視界のすべてが一瞬、白く弾けたーー
その白の中に、かつて見慣れた顔が重なる。
『赫夜ーーっ!?』
アマトの叫びが、精神空間にこだました。
一瞬の静寂ーー次の瞬間。
『な、なんだとぉぉぉぉっ!?』
『えっ? えぇぇぇぇ~っ!?』
ゼルヴァスとティアマトの叫びも、追いかけるように響き渡ったのだ。
「言え……お前はどうしてここにいる!」
緊張が走る。
アマトはリーファの方に顔を向けて、ただ静かにリーファを見つめ返した。
一瞬の沈黙ーーそこへ、グラントが
「待て待て、リーファ。いま、わしらはこの人に助けてもらったところじゃろ」
と割って入る。
「……確かにそうかもしれない」
そう言いながらも、リーファは弓矢を構え続ける。
「でも、さっき襲ってきたのも異世界人よ。裏でつるんでいることだって考えられるわ」
グラントが、やれやれ、と肩をすくめた。
すると、ルダルが一歩前へ出て、リーファが弓矢で狙い定めたアマトの前に立ちはだかった。
「あなた、魔物なのに……なぜ異世界人の肩を持つの?異世界人の見方をするなら魔物でも容赦しないわよ」
とリーファは引かない。
その剣幕にグラントが、
「リーファよ。残念ながらお前ではこの男には勝てんぞ。なにせ、セルヴァス10傑の男だからな」
と言ってほくそ笑んだ。
「なんですって?」
固唾を呑み、目を見開いたリーファの視線が、その10傑の男をとらえた。
「ルダルだ」
と男が短く答える。
かつて、異世界人を数十人同時に倒した伝説を持つ男がリーファの前に立っていたのだ。
(うそ……牙咆の……あのルダル……さん!?)
リーファは心の中で呟くと、少し尖った耳がピクつき、構えている弓の弦が少し緩んだ。
そこへーー
「ミィナ、気絶しちゃうしな……」
「まったくだぜ。おかげで出遅れちまったじゃねぇか」
「だって……そもそも、あなたたちがいけないんじゃない!」
「ルクーゥッ」
ミィナ、ルノア、エメルダそしてルクピーがガヤガヤ言いながら森から駆け込んできた。
「アマト様ぁーっ! ルダルぅーっ! 遅れてごめんなさ~い!」
大声でルノアが叫び、手を振る。
ミィナはアマトの姿を見つけると、顔を真っ赤にしてはにかみながら駆け寄ってきた。
「ん? なんか……取り込み中じゃねぇか?」
エメルダが目を凝らす。
「えっ?」
「あっ、本当だ」
と、ミィナは驚き、ルノアも同意した。
三人は顔を見合わせると、同時に魔物の姿へと変身し、一足飛びでアマトとルダルの前へと飛び込んだ。
「おい、そこのお前。何やってんだ?」
とルノアが露骨にリーファを威圧する。
そこへエメルダ。
「なんだ。ガキじゃねぇか」
突如割り込んできた二人の魔物を見て、呆気に取られたリーファ。
徐々に気を取り戻すと、
「ガ、ガキですって!?」
エメルダの発した言葉に反応する。
「あなた、私はこう見えても200歳近いのよ。多分、あなた達より上だわ!」
そう言うと、リーファは光の弓を解き、腰に手を当て胸を張った。
その姿を見たルノアとエメルダが
「ぷっ……はっ、はっはっはっ!」
と笑い出した。
「な、何がおかしいのよ!」
二人の思わぬ反応に狼狽えるリーファ。
「だって、なぁ。ルノア」
エメルダがリーファを指さしてルノアを見た。
「あぁ、お前。どう見ても子供だよな」
とルノアが無神経なことを言う。
「な、なんですって!」
リーファには、まだ何のことを言っているのかがわからない。
「よく見ろよ。大人ってのはオレたちみたいな体のことを言うんだぜ」
ルノアが腰に手を当て、誇らしげに胸を突き出す。
そして、エメルダも負けじと同じポーズをとった。
確かにリーファとエメルダのそれに比べれば、はるかに立派ではあった……が、その態度、どう見ても“大人”とは言えなかった。
リーファは、ルノアとエメルダが言わんとしていることをようやく理解して、自分の明らかに膨らみのない胸を見ると、頬がみるみる赤くなった。
この様子を見ていたミィナが慌てて、
「もう、あなたたち! 失礼よ!」
と二人の間に入り、たしなめるように言った。
そしてリーファの方へ向き直ると、静かに頭を下げた。
「ごめんなさい。この人たち、ちょっと無神経すぎるの」
その仕草は柔らかく、どこか温かい光を帯びていた。
ミィナの長い髪がふわりと揺れ、ルクピーが彼女の腕の中で「ルクゥッ」と鳴く。
リーファはその光景を見て、言葉を失った。
まるで美の女神の如く穏やかな気配。
(な、なんて綺麗な人なの……い、いや、別に仲良くなりたいとかじゃないけど!)
尖った耳がピクつく。
そして、腕の中で瞬きをする小さな生き物。
(か、かわいい……かわいすぎるっ……!で、でも、決して、抱っこしてみたいなんて思ってないわよ)
あまりに突然の出会いに、思考が完全にショートした。
リーファはその場で固まったまま動けなくなっていたが、なぜかエルフ特有の長い耳だけがぴくぴくと動いていた。
「ん……?」
ミィナが心配そうに首を傾げる。
そして……ルクピーも、キョトンとしつつも、そのつぶらな瞳でじっとリーファを見続けていた。
「グラント……こいつ、もしかしてミルファの妹か?」
ルダルが、リーファのピクついている耳を見ながら言った。
「あぁ、ミルファと同じで、筋金入りのツンデレじゃ」
「なるほどな。表と裏の気持ちの間で動けなくなったか」
ルダルが微笑む。
「しかし、そろそろこっちへ戻してやるかのぉ」
とグラントが、リーファの方を向くと、大きく息を吸い、慣れた感じに大声で一言。
「リーファッ!」
びくんっと肩を跳ねさせ、リーファが我に返る。
と同時に、彼女の周囲に漂っていたオーラらしきものが弱まり、長かった耳が短く縮んでエルフの姿が消え、本来の人間の姿に戻った。
その直後だったーーリーファの顔を見たアマトが息を呑む。
「――ッ!」
アマトの表情が俄かに強張り、視界のすべてが一瞬、白く弾けたーー
その白の中に、かつて見慣れた顔が重なる。
『赫夜ーーっ!?』
アマトの叫びが、精神空間にこだました。
一瞬の静寂ーー次の瞬間。
『な、なんだとぉぉぉぉっ!?』
『えっ? えぇぇぇぇ~っ!?』
ゼルヴァスとティアマトの叫びも、追いかけるように響き渡ったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!
tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。
ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。
「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」
いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。
魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル?
いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。
そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる