異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第63話 お前達は何者だっ!

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「お前達は何者だっ!」

女の声は少し遠くの方から聞こえたものの、その声で我に帰ったルノアとエメルダ。

二人は、アイコンタクトをすると、エメルダがミィナがいるあたりへ飛びあがり、ミィナを抱えて茂みに入り込む。

ルノアは、自分たちの服が脱いである方へ飛んでいき、三人の服を持って、エメルダが飛んで行った方へ向かう。

一方、アマトは、声がした方角へ走り出していた。

深い霧と樹木の中を駆け抜けるアマトーーその傍からルダルも駆けつけてくる。

「アマト様、申し訳ございません。この魔素の乱れの中で完全に方角を間違ったようです」

ルダルがアマトの横で言った。

「問題ない」

そうアマトが答えた時ーー前方から複数の閃光と爆音が起こった。

「まずは私が……」

ルダルが地を蹴り、前方へ飛んで行った。

そして、ルダルの視界に入ってきたのは、二人の魔物と異世界人らしきパーティが交戦している光景であった。

魔物の一人は女で、空中を舞って光の矢を放っている。

もう一人の魔物は男で、地上で戦斧を振り回していた。

「あの男は……」

とルダルが呟いたその時、戦斧を持った魔物が蹴つまずいて倒れた。

そこへ三人の異世界人が襲いかかる。

「いかん!」

ルダルは、その魔物と異世界人の間に飛び込み、三人の攻撃を跳ね返した。

突如現れた新たな魔物に、後ろへ飛び下がる三人の異世界人達。

三人から目を離さずルダルが、倒れ込んだ魔物に声をかける。

「立てるか。グラント」

その声に、グラントがハッとした顔をして声の主を見上げる。

「ルダル……か」

「あぁ、久しぶりだな。ただ、挨拶をしている暇はなさそうだ」

グラントが後退した三人の方を見ると、

「そのようじゃの」

と言って、肩で息をしながら立ち上がった。

次の瞬間ーー三人の異世界人がルダルめがけて攻撃を仕掛けてきた。

ルダルは、その攻撃を難なくかわすと同時に相手に攻撃を放つ。

異世界人三人は、それぞれ吹き飛び、樹木や岩に激突をして苦痛を漏らした。

その様子を後方から見ていた隊長らしき人物が呟いた。

「あいつは……牙咆のルダルか?」

バナムであった。

先の大戦で、ルダルと戦闘を交えたことはなかったが、その風貌、戦闘スタイルは聞き及んでいたのだ。

一方、空中ではリーファが五名の異世界人と交戦していた。

リーファが複数の矢を同時に放つと、異世界人たちはそれを交わしながらリーファへ剣を振るう。

そして、それを弓と矢で受け止めては、空中を移動し、再び矢を放つ。

この攻防が何度も続いていた。

「埒があかないわ……せめて魔素をこめる時間があれば」

とリーファが呟くと、グラントを確認する。そこには、見知らぬ魔物が立っていた。

「誰?」

その一瞬を異世界人たちは見逃さなかった。

五人が一斉にリーファへ襲いかかる。

(しまった!)

リーファが防御の構えをした刹那ーー

五人の姿が、突如、目の前から掻き消えた。

代わりに現れたのは、一人の若い男。

「えっ!?」

リーファには何が起こったのかがわからない。

そして、複数の呻き声が下から聞こえる。

リーファが視線を落とすと、さっきまで目の前にいた五人が地上に叩き落とされていた。

(私、助かったの?)

と思うと、再び、目の前の男に無言のまま目を向ける。

(異世界人っぽいけど……こいつが助けてくれたの?)

あまりのことで混乱するリーファ。

(いえ、そもそもさっきの奴らもそうだけど、なんで結界内に異世界人がいるの?それに、私には何が起きたかもわからなかった。こいつのスピード……異常すぎよ)

リーファが思考を巡らし、異世界人であるこの男に警戒心を解くことはなかった。

一方、地上でルダルの存在を確認していたバナムは、突如、空から降ってきた部下たちに驚く。

「何が起きた!?」

上空を見ると、エルフの他にもう一人。

「きさまは何者だ!」

と声を発すると、それに気づいた男が下へ降り立ってきた。

そう、アマトである。

そして、バナムの方へゆっくりと歩いてきた。

「お前、異世界人か?なぜ、魔物の見方をする」

バナムがやや後退りしながら声を発すると、

「さぁな……成り行きだ」

と言ってアマトが笑う。そして、

「お前たちがこいつらに何をしたいかはわからんが、俺は今、異世界人同士で戦いたい気分じゃない。退いてくれると助かるんだがな」

アマトが軽く言った。

「なに!?」

バナムの顔が歪む。そして、右手に持っている装置を見る。

ーー精霊発見装置だった。

(ぬぅ。近くに精霊がいそうではあるのだが……)

次に、右の胸ポケットあたりに左手を持っていくと、ポケットの上から何かを掴む動作をした。

(マナインジェクターを使うか?いや、使うには将軍の許可が必要だ)

と思い、左手をゆっくりと下ろす。

そんなことを考えて、部下たちの様子に目をやる。

部下たちは、なんとか立ち上がってきていたが、戦闘を続けるほどの力はなさそうである。

(牙咆のルダルに、この謎の異世界人……武が悪いか)

「……わかった。その提案に乗ろう。だが、次はこうはいかんぞ。お前たち、いくぞ!」

と、部下に命じて、バナムたちはこの場を去って行った。

この場に残った四人ーー。

ルダルとグラントは、戦闘モードの魔物の姿から人間の姿へ戻り、アマトの元へやってきた。

そして、ルダルが

「アマト様、この男はグラントと言って、ゼルヴァス10傑の一人です」

と言って、アマトにグラントを紹介した。すると、

「いやはや、危ないところを命拾いをしたわい。アマト殿か……ありがとう。助かりましたわい」

と、グラントもアマトに礼を言った。

ーーー

アマトの精神空間

『おぉ、グラントではないか!元気そうで何よりだ』

ゼルヴァスが喜びの声をあげた。

『この子も10傑なの?あまり強そうじゃないけど……』

とティアマトがアマトの目を通して映し出される映像を見ながら、目をパチクリして呟いた。

『グラントは戦闘ではなく、技術開発担当だった。もちろん、それなりに強かったがな』

『ふーん』

とティアマトが反応した。

ーーー

「無事でよかった」

現実空間でアマトがグラントへ微笑んで言った。

グラントも笑顔で応えるも

「ところで、ルダル……お主、なぜここにいる?」

とルダルの方へ向いた。

「いろいろあってな……それよりお前たちも、なぜ異世界人と戦っていた?」

と言って、ルダルが逆にグラントへ返す。

「うーん、それがわからん。突如、現れて攻撃されたのじゃ」

とグラントが首を傾げた。

「……ここでも不可解なことが起こっているようだな」

ルダルが、呟くように言った。

「ん?ここでも?」

グラントがルダルを見て問いかけたが、ルダルは

「後で話そう」

と言うと、少し離れたところに降り立って、こちらの様子を伺っているリーファを見た。

リーファは、まだ人間の姿には戻らず、戦闘態勢を解かぬまま、長い耳と鋭い眼差しを湛えたエルフの姿で立っていた。

その表情には決して歓迎の色はなく、その眼差しには、助けられた安堵と戸惑い、そして確かな敵意も入り混じっている。

次の瞬間ーー

「お前達は何者だっ!」

彼女の声が霧に埋もれた森に再び響き渡ったのだ。
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