異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第78話 閉ざされた二百年の謎――真実と嘘の狭間で

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きゃーっ、ミィナさんの膝枕に寝てたのかしら?あんな、優しそうなお姉ちゃんだったらうれしいなぁ)

泉のほとり、リーファはひとり夢心地だった。

(そ、それに……アマトまで一緒にいるなんて……! 乙女の寝顔を盗み見るなんて、ほんと失礼なやつっ!)

そう思うリーファの耳はぴくつく。

――かなりあわただしい性格だ。

「でも……あの時、どうしてお母さんが急に現れたのかしら?」

思わず口に出すリーファが、ふと洞窟の入り口へ目をやる。

「あれ?アマトとミィナさんは?」

先ほどまで入り口に座っていた二人の姿がない。

「……洞窟の奥に行ったの?」

と小さく首をかしげて、リーファが洞窟の方へ歩き出した。

洞窟の入り口近くまで来ると、誰かが騒いでいる声が響いてきた。

(きっと……みんな、中に入っていったのね)

そう思うと、リーファはエルフの姿に変身し、洞窟の中を駆け出した。

暗闇であるにもかかわらず、足音を立てず、そのスピードは風のごとく。



そのころ洞窟の奥では――



「あ、あんた。本当にエアデラン長老か?」

グラントが、目の前の年寄りに問いかけた。

「ふっ。若造が。聞こえんかったのか?さっき、エアデランと言ったであろう」

明らかに老人であるグラントに対して、あきれ返るように言うエアデラン。

その言葉に、グラントが黙り込む。



『なるほど。確かにエアデランだな』

そう声を発したのは、アマトの精神空間内で、カオスへの入り口に大の字に捕らわれているゼルヴァスだった。

『知っているのか?』

アマトが問いかけた。

『こいつは、エルフの長老で1000年以上は生きている奴だ。魔族界には3人の1000歳を超える長寿がいて、その内の一人だ』

『へぇ、長生きなのね?でも、私はもっと長いわよ!エッヘン』

ティアマトが得意げに割り込んできた。

『なにせ私は原初の神様ですからね!」

いつも以上に鼻が高い。

『何言ってやがる。つまりはババァってことだろ』

ゼルヴァスが容赦なく突っ込むと、ティアマトが負けずに口元がつり上がる。

『まぁ、ゼルヴァスちゃん。そんなことを言っていいの?いつも通り、”カオスに代わってお仕置きよッ”』

(お前、そのセリフ……どっから引っ張り出してきた)

アマトが心で突っ込みを入れる。

『よ、よせ。もうくすぐるのはワンパターンだ(読者も飽きているぞ!)』

『ふふふ。そう言うと思ったわ』

と言って、どこからか一升瓶を取り出してきたティアマト。

そして、

ポンッ、

とふたを開ける。

『ま、まさか、お前……』

ゼルヴァスの顔が青ざめる。

ティアマトは、冷たいまなざしをゼルヴァスに向けると次の瞬間――

ジャバジャバ、

と、ゼルヴァスの顔の”横に”酒をこぼし始めたのだった。

『や、やめろ!もったいない!俺様に飲ませろ!』

ゼルヴァスは顔を横に向けて、カオス空間へ流れ込んでいく酒を一生懸命吸い込もうとしていた。

『ふっ。これぞ、酒流しの刑』

ティアマトの眼差しがゼルヴァスを刺す。

(お前ら、これ、面白いのか?)

アマトが心の中で絶句する。



現実空間では、ルノアが疑問をぶつける。

「なんで、そんな人がここにいるの?」

「わからん……行方不明になった時、方々探したが、手掛かりはまったく掴めなんだ……」

グラントが唸りながら答える。

すると、ミィナが一歩前に出て、震える声を出した。

「ミオルネさんも……一緒だったんですよね」

その顔は、緊張と戸惑いが入り混じっていた。

グラントがハッとしたように目を見開く。

「まさか……あの白骨は!」

と言って、先ほどエルフの骨の方へ顔を向ける。

つられるように、一同も息を呑み、目を向けた。

その白骨は、言葉を発しない。

「白骨じゃと」

エアデランが前へ歩み出てきてまじまじとその声なき遺骨を見た。

「わしの目の前にあったのに気づかんかった……」

眉を寄せて唸るエアデラン。

「長老?あんた、何も知らんのか!?」

グラントが思わず声を荒げた。

「うーん、すまんが思い出せん。なにせ長いこと閉じ込められておったからのぉ」

グラントが力無くその場に座り込んだ。

その周りを取り囲むように一同が座り込むと、ミィナが声を静かに発した。

「先ほどの泉での話は、ミオルネさんは病気だったとおっしゃっておられましたが……」

グラントは、力なくミィナを見つめると、

「嘘なんじゃ……」

ミィナの顔が少し驚く。

しばしの静寂――

グラントは、片手を顔の上から下へと撫でるようにおろした。

「……あれは、リーファがまだ幼少の頃じゃった」

そう言って、語り始めた。

「ある夜を境に、二人の姿がぱったり消えたのじゃ。はじめは、森の者も里の者もそれほど気に留めておらんかった。二人とも、何も言わず外界へ行くことはかなりの頻度であったからのぉ。ただ、二か月過ぎたころにはさすがにおかしいとなって捜索を開始したのじゃが……」

グラントの目が宙を仰ぐ――。

「なしのつぶてじゃった……結局、今日の今日までわからずじまいだったんじゃが……」

エアデランの顔をじっと見つめたグラント。

「でも、なんでミオルネは病気で亡くなったことになってんだ?」

再び、ルノアが素朴な疑問を投げかける。

「考えてもみぃ……エアデランは長老と言っても男じゃ。一方、ミオルネさんは超がつく美人。どんなデマが飛び交うかわからん。そんな話が、大きくなったリーファの耳にでも入ったら、あまりにもかわいそうじゃろ?」

グラントは顎をさする。

「……であれば、いっそのこと二人とも”病死した”ということにしてしまえば良い……我々のような長寿の種族では、ようある話じゃ。長い時を生きるうちに、そう思い込むことによって、真っ赤な嘘もいつの間にか真実へと変貌するんじゃ」

誰も声を発しない。

その静寂を破ったのは、今度はエメルダであった。

「じゃぁ、この状況は何なんだよ」

ごく自然の疑問である。

エアデランは格子の中に幽閉され、ミオルネはその外側で200年の間で白骨化しているのだ。

しばらくしてグラントが話し始めた。

「とにかく、この状況からしてこの白骨はミオルネさんで間違いないじゃろ。しかも何かしらの事件に巻き込まれているはずじゃ」

そしてエアデランを見るグラント。

「エアデランが記憶を取り戻してくれればいいのじゃが……」

エアデランがキョトンとする。

「ミオルネ?はて、聞いたことがあるような無いような……」

一同が落胆する。

「もう一度ぶん殴ったら思い出すとか」
「アリだな。じゃぁ、いっちょ俺がやってみるか?」

ルノアとエメルダの発想である。

しかし、

「ダメに決まってるでしょ!」

ミィナの鬼の形相に二人とも身を縮み込ませた。



リーファが洞窟内を進み続けていた――



(少し、明るくなってるわね。みんな、あのあたりにいるのかしら?)

そう思って、走るのをやめて歩き出した。

(でも、どうやって顔出そうかな……?)

ふと止まる。

泉のほとりでは、ひとりムスッとしてその場を去ってしまったからバツが悪い。

(”ヤッホーッ”とか……)

洞窟での極限の静けさが、心に突き刺さる。

(バカバカ、私のバカ。それじゃ、馬鹿丸出しじゃない……じゃぁ……”皆さん、ご機嫌、うるわしゅう?”)

そう思うも、力が抜けてその場にしゃがみ込む。

「うーん、思い浮かばない……仕方ない。なるようになれね」

そうぼやきながら立ち上がり、再び光の差す方へ歩き出す。

しばらくすると、くぐもった声が流れてきた。

(グラントの声かしら?)

リーファは小走りになり、声の方へ駆け出していった。


***


「それにしても、状況があまりに不自然だ」

ルダルが呟くように言った。

洞窟の空気が、じわりと重くなる。

誰も口を挟まない。

エアデランは格子の中。

ミオルネの白骨はその外。

二百年もの間、この隠れた洞窟の中で放置されていた。

理由が見当たらない。

沈黙の中、グラントがゆっくりと口を開いた。

「考えたくないが、ミオルネさんは誰かに殺されたのかもしれん」

重い言葉が洞窟に響いた瞬間――

コトッ。

小石が転がる音が響いた。

全員が一斉にそちらへ顔を向ける。

そこには――

呆然と立ち尽くすリーファの姿。

「殺されたって……どういうこと……?」

表情は蒼白。

震える声が、零れ落ちた。
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